「死に損なった男」
思いの外いいお話でした。展開の緩急がよくできているので面白いし、いけすかない悪人も出てこないし、見ていてストレスがなく、しかもじんわりと胸が熱くなって泣かせてくれるし笑わせてくれるし、楽しかった。監督は田中征爾。
夜の駅のホーム、一人の老人が息を切らせてやってきてベンチに座る。隣にいた女性は不審に思って立ち上がる。カットが変わると、お笑い芸人の事務所から漫才作家の一平が出てくる。スマホを見ていて自転車とぶつかり、通行人につまづかれ、駅のホームにやってくるが、自殺しようとホームの端に足を踏み出した途端アナウンスが流れ、人身事故で列車が来ないという。一平はそのまま駅を出て事務所に戻り、一夜を明かす。
翌朝、近々開催される漫才コンクールに向けて一平が提供した台本で言い合うピラティスのコンビがいた。一平はコンクールまでの一週間で新しい本を書き直すと宣言する。そしてネタを考える中、先日の人身事故の犠牲者が気になり、その葬儀に行く。そこで亡くなった老人の娘綾と出会う。家に帰って仕事を始めた一平は、突然目の前に、死んだはずの森口が現れて驚く。森口は、綾の元夫若松を殺してほしい。そして殺すまで取り憑くと言う。一平が葬儀に行った際、綾に執拗に絡んでいた男は普通ではないと一平も思っていた。実は森口は自殺したのではなく、靴の紐を踏んで列車に轢かれたのだ。
一平は森口と一緒に綾の実家にやってくると、案の定、若松が来ていて綾に絡んでいた。一平は、とりあえず声をかけ、若松が一平を突き飛ばしたので、なんとか若松を退散させることに成功する。腰を打った一平を綾がしばらく介抱し、帰り際、一平が漫才作家だと知って、お笑いが好きな綾は、一平から、近日行われるコンクールに誘うことを約束される。
一平はピラティスの台本を書き始めるも進まない。そこへ森口がこんな話はどうかと提案して来る。しかもそれがめっぽう面白いのでそれを台本に仕上げ、後日ピラティスと擦り合わせて完成させる。コンクールの日、客席には綾も来てくれた。ピラティスのネタを興味津々に楽しむ綾は、帰りに一平を飲みに誘うが、一平は森口と若松を見張らないといけなかった。綾は先ほどのピラティスのネタは父が母の葬儀で行った情景に似ているのだという。一平は、コンクールが終わったら若松を殺すからという約束を森口としていたので、この日が決行日だった。一平は綾がヨガのインストラクターだと知り、綾の名刺をもらう。
若松を待ち伏せていた一平は、包丁を持って若松の部屋の外に行くが、そこへ若松がバットを持って現れる。最近自分がつけられているのを知って反撃してきたのだ。乱闘の末、結局一平はその場を逃げ出す。翌日、全てを綾に話そうとヨガスタジオに一平はやって来る。そして森口が傍に取り憑いていることを話すが信じてもらえなかった。その日の深夜、綾から一平に電話が入る。今から家に来て欲しいというので、一平は森口と綾の家に行くと若松がいた。一平は包丁を取り出し若松に襲いかかるが、すんでのところで包丁を自分に突き刺す。それを見た若松はその場を逃げ出してしまう。
入院した一平に事務所の希がパソコンなどを届けに来る。後輩の台本作家沢本もやってくるが、沢本は傍にいる森口がみえていた。実は沢本も駅で自殺しようとして、森口の事故で命が助かっていたのだ。ピラティスは、一平から離れ沢本の番組に出るようになってテレビ出演も増えて、前途有望になっていて、そんなピラティスを一平も応援していた。
二ヶ月ほどして、一平は退院し、若松から連絡をもらう。フードトラックでやり直すのだという。そして、森口に土下座して謝る。コンクールも終わった打ち上げで、以前事務所にやってきた漫才作家志望の高校生を一平は招き入れ、乾杯をする。帰りの駅のホームで希がトラブルの電話をこなしていた。その姿を見ている一平に森口が、声をかけろと促し、一平は希に声をかけ、親しくなる。元の生活に戻り、この日ラーメン屋に入った一平は次の台本のネタを探していた。そこへ森口が現れ、こんな話はどうかと提案して映画は終わっていく。
なんか微笑ましくなる物語で、粗はあるものの、面倒な悪者が出てこないし、時折挿入するスローモーションもストーリーに緩急をつけていて面白い。小品ながら、ちょっと心に残る一本でした。
「SKINAMARINK スキナマリンク」
こういう作品を作るのも才能なのだろうか、それとも自分が才能があると信じて作っているのだろうか、終始粗い画面で深夜の家の部屋の中、ホラー映画のショックシーンにつながる伏線のようなシーンを延々と繰り返して最後まで走るというミステリアスな作品だった。正直退屈だったが、見終わって、あれはなんだったのかと思い返して盛り上がるのかもしれない。監督はカイル・エドワード・ボール。
粗い画面、暗い場面、おもちゃのブロックが散乱していたり、ルーニートゥーンが延々と流れるテレビ画面、ベッドの下、廊下、後ろ姿の少女のカット、不気味な声、音が繰り返される。進展があるようでなくて、どうやらケヴィンとケイリーという二人の子供が目覚めると扉や窓、出口もなくなっているらしい。そして、何やら声が聞こえてくる。それが延々と続く。時折、口や目がない女の子が映ったりするが、ショックシーンなどほとんどというか皆無に近い。911に電話をするやりとりもあるものの、結局わからず。シュールな映像が絡んできて、唐突にENDの文字が出る。
見た後、あそこはどうだったこうだったと話し合う映画という感じでした。

