くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「満ち足りた家族」「かなさんどー」

「満ち足りた家族」

もっとシュールで個性的な映画かと思っていたら、物語は至って平凡な家族と親子の物語だった。悪く言えばテレビドラマのようだった。しかし、観客の神経を逆撫でするような分厚い作劇と演出は流石に韓国映画の本領発揮という見応えのある仕上がりだった。余計な甘さや正義感はそっちのけで、悪こそが栄えるという構図は、正直好みではないが、これが韓国映画だろう。監督はホ・ジノ

 

交差点で猛スピードで飛び込んでくるスーパーカーに迫る一台の車。この車には家族が乗っている風である。車の運転手が飛び出してきてスーパーカーの若者に罵声を浴びせるも若者は笑って誤魔化し窓を占めてしまう。切れた男はバットを持ち出してスーパーカーのボンネットを殴る。スーパーカーの若者がいったんバックするが、再度スピードを上げ、その前に立ちはだかった男を跳ね飛ばす。さらに家族の車に突っ込んで中にいた幼い少女が挟まれる。

 

この事件の若者が裕福な家庭の息子らしく、弁護士のジェワンのところへ話が来る。ジェワンは、示談にするべく動き出す。ジェワンの弟ジェギュは正義感に満ち良心的な医師だった。ジェギュは挟まれた少女の手術を行い成功するがまだまだ予断を許さない状況だった。ジェワンは二人目の妻ジスが最近赤ん坊サラを産んだばかりだったが、先妻の娘で高三のへウォンとうまくいっていなかった。

 

ジェギュと妻ユンギョンは認知症の母を引き取って面倒を見ていたが、その母は最近手がかかるようになっていた。息子のシホは勉強が今ひとつで、へウォンに教えてもらったりしていた。

 

ジェワンらは、母の今後のことなども含め家族で食事をしようとお互いの子供たちは残してジェギュ夫婦をレストランに招待する。そこで、金銭的な面を優先するジェワンにジェギュは反感を持ち、若いジスにユンギョンも敵意で接する。その頃シホはへウォンに誘われて、へウォンの友達らと酒を飲んで騒いでいた。しかし、シホは、バカらしくなりへウォンを誘って先に帰る。途中、シホはトンネルに放置されたゴミを蹴って八つ当たりをし、それにへウォンも参加する。

 

ユンギョンは深夜に戻ってきたシホを問い詰めるも返事はなく、一方へウォンも父のジェワンは金蔓としか思っていない態度を取り、さらにジスにも冷たい態度をとる。ユンギョンは、シホが着ていたスウェットが妙に汚れているので、不審に思い、洗濯をする。そんな時、ジェワンはニュースで、路上生活者が二人の若者にリンチされて病院へ担ぎ込まれた動画がアップされたことを知る。その動画を見たジェワンは、へウォンが自分たちが食事した日に着ていた服を確認して、その二人がへウォンとシホではないかと考える。

 

ユンギョンはシホに、動画の件を追求するが自分ではないと言う。一方へウォンはジェワンの事務所に行き、友人の話として路上生活者をリンチしたらどうなるかと聞きに来たので、ジェワンは動画に映っていたのはへウォンだと確信する。リンチされた男は病院で意識不明で、意識が戻れば犯人の似顔絵を描く段取りで捜査が進められていた。

 

ジェワンもジェギュも、子供達を自首させるか相談するが、ジェワンは反対し、ジェギュは自首させるべきだと主張する。ユンギョンはジェギュと意見が食い違い、あくまでシホを守りたかった。ジェワン夫婦、ジェギュ夫婦が苦悩する中、路上生活者は亡くなってしまう。その頃、へウォンは受験していた学校に合格する。ジェワンの依頼人の金持ちの若者は反省する様子もなく金で解決しようとしてくる。シホにジェギュが再度問いただし、反省しているという言葉を聞いて、このまま守ることを決心する。

 

シホがへウォンの家に遊びにきて、サラを遊んでやっていたが、その時の会話がジェワンのアプリに録音された。後日、ジェワン夫婦とジェギュ夫婦が再度レストランで食事をする。その場で、ジェワンは、へウォンを自首させることにしたと宣言する。しかし、ジェギュは今は反対の立場で、反省しているシホはこのままにしておきたいと態度を翻す。そんな彼らの前に、ジェワンが、先日シホとへウォンがサラと遊んでいる時の会話を聞かせる。そこには、路上生活者の平均寿命は一般人の半分くらいだから、今回の死は自然死だとしゃあしゃあと語り、さらに、リンチした時の快感を自慢げに話していた。ジェワンは彼らが未成年であることを利用しようとしていると言うが、シホを守ると決めてジェギュは、ユンギョンと共に自首に反対してその場を出ていく。

 

ジェワンらは、レストランを出るが、ジスが携帯を忘れたと店に戻る。煙草を吸いながらジェワンは待っていたが、そこへ猛スピードの車が突っ込み跳ね飛ばしてしまう。車にはジェギュ夫婦が乗っていた。こうして映画は終わる。

 

正義が悪に変わり、悪が正義に変わるが、結局正義は抹殺されるという、ある意味辛辣すぎる現実を突きつけられるような作品で、これが韓国映画の怖さなのかもしれないと思える一本だった。

 

 

「かなさんどー」

小さな小ネタギャグを散りばめながら、時間を前後させて描く心に染みる物語がとっても心地よい一本。決して一級品ではないのですが、素直な演出がシンプルに胸に迫ってくるから良い。こういう肩の凝らない、純粋な感動物語は見ていて本当に幸せになれます。これも映画の一つの魅力かもしれません。監督は照屋年之

 

青いワンピースを着た若い女性が、颯爽と病院の廊下を進んでいく。その先に車椅子に乗った男が待ち構えている。女が車椅子の男を伴って外に出る。車に乗り、海に行き、デートをした末、どこかの工場の前で結婚式を挙げて映画は始まる。

 

東京で仕事をしている美花に、沖縄に住む父悟が危ないという連絡をもらい渋々戻ってくる。父親とは7年前に縁を切っていた。かつて母町子が亡くなる際、町子が助けを求めてかけた電話に全く出なかった父を今も許せなかったのだ。伊江島に戻ってきた美花は、父の工場の元従業員だった男に連れられ病室を訪れるが、悟は「町子」と母の名を言うだけだった。

 

映画はこの後、まだ町子が元気だった頃、毎晩のように飲み歩く悟の姿、女の影を感じながらも、健気に尽くす町子の姿を美花が回想しながら物語は進んでいく。仕事を辞めてきた美花はしばらく元従業員と話すうちに、自分が知らなかった何かを感じ始める。そして町子が書いた日記を見つける。そこには、町子が悟と出会い結婚するまでの物語が書かれていた。

 

悟がスナックにいる町子と出会って一目惚れした時、気を引くために毎晩町子の歌を聴くため鉄砲百合を持って行ったこと。町子が病気になって後、亡くなるまで、丘の上に鉄砲百合を植えて花畑にしたことなどを美花は知ることになる。

 

美花は、自分の知らなかった悟と町子の物語を最後に再現するべく、町子が初デートで着た青いワンピースを着て病室の悟を訪ね、町子が日記に記していたことを再現していく。やがて、悟に最後の痛み止めを投与することになる。美花は最後に、悟が町子が好きだったと言う鉄砲百合の咲き乱れる丘に連れて行き、悟が町子と出会った時に聞いた「かなさんどー」を歌う。いつのまにか町子が歌っている姿に悟が手を差し伸べていた。こうして映画は終わる。

 

とってもたわいない映画です。でも、映画になっている。小品ですが、こういう優しくて心に響く映画を大切にしないといけないと思います。いい作品だった。