くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「知らないカノジョ」「ANORAアノーラ」

「知らないカノジョ」

「ラブ・セカンド・サイトはじまりは初恋のおわりから」のリメイク。オリジナル版がなかなか良かったのでちょっと期待の一本でしたが、オリジナルが音楽センスが抜群だったので、どうしても見比べてしまう。基本的なストーリー展開はほぼ同じですが、もうちょっと映像に強さが欲しかった気がします。役者さんが弱かったか、演出が抑えられすぎていたのか、いいお話のはずが胸に迫るものが物足りなかった。監督は三木孝浩。

 

SF映画のワンシーン、主人公が追っ手を逃れてバトル戦を繰り広げる場面から映画は幕を開ける。しかし、それはリクが大学の教室で講義を聞かずに書いている小説だった。それを見つけた教授がリクのノートを取り上げる。深夜、リクはノートを取り返すために教授の部屋に忍び込みノートを手に入れるが、講堂から歌が聞こえてくる。講堂へ行くと一人の女性ミナミがギターを弾いていた。リクがつい近づき驚いたミナミが大きな音を出したので警備員がやってくる。二人は逃げ、ミナミがフェンスの穴にリクを逃し、その場は別れる。

 

翌日、リクは8年浪人の友人梶原と昨夜の話をしていたが、そこへ、リクのノートを持ったミナミが現れる。それをきっかけに二人は急速に接近し、卒業後、リクは小説家で成功、ミナミは歌手になる夢を捨ててリクと結婚する。この流れをリズミカルに描いてタイトルのあと本編となる。この流れはオリジナルと全く同じである。

 

今や売れっ子作家となったリクは、次の著作に追い詰められていた。ミナミの言葉に耳も傾けなくなり、リクが人気作家となってからミナミは寂しい思いをしていた。その夜もリクは深夜まで執筆を続け、ミナミは一人ベッドへ行く。作品を仕上げたリクは編集社へ、映画化の打ち合わせに行くと連絡するが、明日で良いと言われ、一人夜の街に出る。この日、50年に一度のスーパームーンだった。疲れたリクは家に戻りミナミの隣で眠りにつく。

 

翌朝、電話で起こされたリクは、呼び出されるままに編集社へ行くと、編集長らがリクを呼び捨てにする。何かわからないまま、同僚となった梶原に宥められて、とりあえず外に出る。リクはタクシーの中から、トップミュージシャンとなっているミナミのディスプレイを見つける。リクはミナミのラジオ番組の収録現場へ押しかけ声をかけるが、ミナミはリクのことを知らなかった。リクはミナミの母和江が入っている施設に押しかけてことの次第を聞こうとするが、ミナミのマネージャ田所がやって来て追い返される。それをフォローした梶原は田所の名刺から事務所を知り、正式にミナミの自伝を描きたいという仕事を持ちかける。

 

田所は断ろうとしたが、ミナミはリクの申し出を受け、リクとミナミは接近できるようになる。リクはミナミの学生時代からの様々を取材していくが、その中で田所とミナミが関係があるのを知ってしまう。しかも、それが編集社に漏れて週刊誌に書かれてしまい、ミナミらはリクを遠ざけてしまう。

 

リクは、今の世界でしっかり仕事をすることを決めて、新しい作家金子を見出し、売れっ子作家に育てる。そしてその原作の映画化にあたって、曲をミナミに持ち込む。しかし、リクの気持ちがミナミに向かっていることに嫉妬した金子が強硬にリクに迫り、それを拒否したリクを逆恨みして、セクハラされたと訴えてくる。結果、ミナミの歌の話も没になる。

 

リクが和江から、思い出の指輪を託される。それは、リクがミナミと結婚していた世界で、和江から結婚指輪に貰ったものだった。リクはミナミにその指輪を渡す。その後、ミナミはミュージシャンとして一歩踏み出した思い出のところにリクに連れて行ってもらい、そのままリクの部屋に行く。二人はいつの間にか惹かれあっていた。ところがそこへ田所から電話が入り、海外のプロモーターと契約ができたからロスへ移ると連絡が入る。

 

ツアーの最後に、ミナミは兼ねてからの夢だった大学の講堂で最後のステージを企画する。一方、リクは小説のラストでヒロインを殺してしまったことでミナミが去ったと気づき、小説のラストを書き直しミナミの楽屋へ届ける。ミナミはそに原作を途中まで読んで最後のステージへ向かう。そしてステージの後楽屋へ戻ったが、リクは元の世界へ戻せばミナミは音楽で成功できないと思い、小説をゴミ箱に捨てる。

 

ミナミは田所の静止も聞かず慌ててリクを探し、リクに駆け寄って二人は改めて愛を交わす。空にはスーパームーンが照っていた。こうして映画は終わる。

 

オリジナル版の人物設定を変えたのみで展開は全く同じに近い。ストーリー展開に目新しさはないのもあるが、ちょっとテンポが緩くなっているのは日本という舞台設定になったせいかもしれない。リメイク作品としては普通の出来栄えだったように思います。

 

 

「ANORAアノーラ」

カンヌ映画祭パルムドール賞受賞作品で、アカデミー賞にも現時点で6部門ノミネートという、かなりの期待作でしたが、期待通り拍手したくなるほどキレのいい映画だった。冒頭の濃厚なストリップシーンに続いて、ロシアをコケにするようなコミカルな展開。そのコミカルさにも関わらず、主人公の心は終始張り詰めたままにラストシーンまで引き込んでいく機関銃のような罵声の応酬。そしてふっと気持ちがほぐれるラストシーンに思わず胸が熱くなる。全体を思い返せば、とっても切ないピュアな人間讃歌だった。監督はショーン・ベイカー

 

ニューヨークでストリップダンサーをしているロシア系のアメリカ人アノーラ、通称アニーの濃厚なサービスシーンから映画は幕を開ける。このクラブではセクシーな接客をしながら、希望者は個室に誘い、そこでさらに濃厚なサービスを提供していた。店長が、ロシアの金持ちの客が来たので、ロシア語を話せるアニーに相手をするように言ってくる。

 

アニーは、軽い気持ちでその客の前に出て、商売気丸出しでカタコトのロシア語を交えながら接客を始める。その客は、イヴァンという若者で、父がロシアの大富豪だという。父の名前を検索したアニーは目を見張る。イヴァンはすっかりアニーを気に入り、自宅に呼ぶ。アニーがその家に出かけると、邸内にエレベーターもある大豪邸だった。イヴァンはアニーにロシアに帰るまでの一週間1万5千ドルで契約彼女になるよう提案、アニーも夢見心地でそれを受ける。

 

アニーは職場友達のルルなども呼んで贅沢三昧に遊んだ末、イヴァンの提案でラスベガスへ行くことにする。プライベートジェットでラスベガスに乗り込み、イヴァンたちはここでも贅沢三昧に過ごすが、ロシアに帰る日が近づいたイヴァンはベッドで、帰りたくないと言い、アメリカ人と結婚すれば帰らなくてもいいんじゃないかと冗談半分に持ち出す。しかし、アニーが問い詰めると、イヴァンは本気だと告白し、4カラットの結婚指輪を買い、二人はラスベガスで正式に結婚してしまう。

 

二人はニューヨークに戻り、新婚生活を始める。ところが、その事を知ったロシアの両親は、イヴァンを連れ戻すべく、ロシア国教会のトロスに指示し、用心棒のイゴールとガルニクを伴ってイヴァンの家へ向かうように命令する。セキュリティを開けて突入したトロスたちとイヴァンやアニーは大乱闘するが、父が翌日やってくると聞いたイヴァンはアニーをおいて脱走してしまう。

 

アニーはイゴールたちと大立ち回りを行うが、暴力は振るうなという命令を受けているイゴールたちはアニーにされるままだった。それでもアニーをなんとか押さえつける。そして、トロス達は結婚の無効の手続きをするためにイヴァンを探すことになる。アニーは隙あらば暴れてやろうとし、それを冷や冷やしながら押さえつけるイゴールたち。この捜索戦がとにかくコミカルで、と言って笑いをとるわけでもなく、しかも、相手はロシア人たちという設定も笑えるのである。

 

イヴァンがアニーが勤めていたクラブにいることが判明、クラブに乗り込むが、イヴァンは泥酔い状態だった。そんなイヴァンを無理やり車に乗せ、無効手続きに裁判所へ行くが、ラスベガスで結婚したので、ニューヨークでは手続きができないと断られる。そこへ、プライベートジェットで両親がやってくる。そこで、全員ラスベガスへ飛び、そこでとうとう結婚の無効手続きを行う。アニーはことあるごとに抵抗し、さらにイヴァンに本心を確認するが、イヴァンも離婚は仕方ないという態度を取る。

 

ラスベガスで、ついに無効手続きが済み、あと一日だけイヴァンの家で過ごす事を許されたアニーはイゴールに伴われてイヴァンの家に行く。イヴァン達はプライベートジェットでロシアに帰っていく。ジェットの中でイヴァンは楽しい二週間を過ごしたとしゃあしゃあと話す。イヴァンの家で、イゴールは、アニーよりアノーラの本名の方が良いと言い、あの一族に入らなくて良かったと言う。翌日は大雪だった。まるでアノーラの気持ちを映し出すようだった。

 

イゴールは車でアノーラを家まで送り届けるが、トロスからくすねて来た4カラットの指輪をアノーラにプレゼントする。アノーラは降りる前にイゴールに跨って体を与える。イゴールはついキスしようとするがアノーラは拒否、次の瞬間、初めて泣き崩れたアノーラはイゴールに抱きしめられ映画は終わる。

 

勝気を装って必死で抵抗を続けるアノーラが、最後の最後、素直になって泣き崩れる瞬間に涙してしまいます。最初からアノーラは夢なんか見ていなかったのかもしれない。実は全て知っていながら、もしかしたら、もしかしたらを必死で信じようとしていたのかもしれない。でもやはり彼女は現実に連れ戻され、それでも強がりを通そうとしたが、イゴールの気持ちについに素直になってしまう。二時間以上ある長尺作品ですが、終始、人生って不思議なほどに楽しくてでも残酷なものかと噛み締めてしまいました。