十年ぶりの再見でしたが、やっぱりこれは唯一無二の名作やなと思います。オールディーズが流れる中、クラシックカーが縦横無尽に夜の街を走り回り、高校生最後の一夜を様々なドラマを交錯させながら描いていくタッチが見事。それに、車の色彩、光を効果的に使った絵作りもキラキラして美しい。それでいて、どこか甘酸っぱい切なさを醸し出すストーリーも良い。何度見ても良いです。そんな一本だと思う。監督はジョージ・ルーカス。
夜のドライブイン、高校を卒業して明日大学へ旅立つカートは奨学金の小切手をもらい同じく大学へ行くスティーブと話している。そこへ、ベスパに乗ってテリーが現れ、止め損ねてゴミ箱に突っ込んで映画は始まる。スティーブはこの地を離れるから車はしばらくいらないとテリーにキーを渡す。テリーは車を手に入れて有頂天になって夜の街へ繰り出し、デビーという女性と知り合う。スティーブはローリーという恋人がいたが、この地を去るにあたって、お互い自由に恋愛しようと提案するが、ローリーは寂しげな表情をする。しかし、ローリーの思いにスティーブは気が付かない。
二人はダンスパーティに行き、ダンスを始めるが、ローリーの目には涙が浮かんでしまう。ジョンは、自慢の車でストリートを流していたが、女友達にまだ未成年のキャロラインという生意気な少女を押し付けられ、辟易としてしまう。カートは、通りに停めてあった車に乗っていたが、そこへ地元の不良が現れ、ボスの車を傷つけたといちゃもんをつけられて不良の車に乗せられて、悪さに付き合わされる。
テリーはデビーと車でデートをし、川のそばに車を停めてデビーといちゃついていたが、その間に車が盗まれてしまう。一方、スティーブはローリーと最後のデートをしていたが、結局、ローリーはスティーブを置いてきぼりにして車で去ってしまう。車を無くしたテリーはデビーと街に戻る途中、盗まれた車を発見し、盗み返そうとするが、そこへ泥棒たちが現れ、殴られる。それを見たジョンが駆けつけて加勢しテリーを助ける。
カートは不良たちとゲームセンターに盗みに入るが、オーナーに見つかってしまう。しかしオーナーがカートの知人だったこともあり、うまく誤魔化して不良たちを助けたため、不良のリーダーに一目置かれ、さらにパトカーにもイタズラを仕掛けたのもカートが首尾よくこなしたので、すっかり気に入られ、自分たちのグループに入れてやると約束される。
ローリーは一人寂しく過ごしていたが、レストランでスティーブが、店員の女性と話しているのを見てショックを受け、通りがかりのカウボーイの車に乗せてもらう。ジョンはなんとかキャロラインを家まで送って別れるが、いつのまにかキャロラインの無邪気な姿に惹かれ始めていた。
カートは、不良から解放され、自分の車で、不良が言っていたウルフマンジャックがDJしている郊外のスタジオに行き、本物のウルフマンジャックに会い、伝言メモを渡す。自分はウルフマンジャックじゃないとカートに言ったが、カートは帰り際、その男がウルフマンジャックとして喋っている姿をみる。間も無くして、カートが渡したメモが読まれ、白い車に乗ったブロンドの女性から電話が入るが、約束を翌日の夜と言われ、カートは諦める。
ジョンはカウボーイの男とチキンレースをすることになる。カウボーイの男の横にはローリーが乗っていた。ジョンはテリーを乗せてレースの場所へ向かう。ローリーがカウボーイの男といると聞いたスティーブもレースの場所へ向かう。やがてレースがスタートするが、カウボーイの車は道を逸れて横転してしまう。中からローリーが無事出てきたので、スティーブは彼女を抱きすくめ、この地を離れないと約束する。
やがて夜が明け、空港でカートはスティーブたちに見送られて飛行機に乗る。飛行機の窓から下を見下ろすと、白い車が道を走っているのを見つける。こうして映画は終わる。
たった一夜の青春の一ページがとにかく切なくて瑞々しい。トップスターになった面々の若き日の姿も楽しめるが、改めて映画の素晴らしさを実感できるひとときだった。やはり名作。
「デビルズ・ゲーム」
面白くなりそうなのに、ごちゃごちゃと詰め込みすぎた設定と展開で、ただの目先の面白さを追いかけただけのサスペンスに成り下がった感じの映画だった。かなり無理のある理由づけを吹き飛ばすほどの鮮やかな演出ができれば良かったが、演出の力不足ゆえの失敗作という仕上がりの映画でした。監督はキム・ジェフン。
サイケデリックな色彩の部屋でボディペイントを施した女性を切り刻むこれまたボディペイントだらけの殺人鬼の姿から映画は幕を開ける。謎の猟奇殺人事件を追うジェファンと相棒の刑事は、犯人の居場所を特定して現地へ向かう。先に相棒が踏み込んだが、ジェファンが着く前に犯人に殺されてしまう。悔しい思いをするジェファンだが、犯人の居場所を密告する連絡が入り、新たな相棒になったミンソンとジェファンは現地へ向かう。そして主犯らしいジニョクを追い詰めるが、ミンソンは犯人に襲われ重傷を負いジェファンが単独で後を追って崖下に二人とも転がり落ちて行方不明になる。
そして一ヶ月、捜索も中止になってミンソンは悔やまれるが、ある日、一台の車が警察署に突っ込んでくる。中からジェファンとジニョクが現れる。病院で目を覚ましたジェファンだが、自分の顔がジニョクの姿になっていることに気がつく。どうやらジニョクとジェファンは入れ替わったらしい。ジニョクの顔のジェファンはミンソンに、二人しか知り得ないことを話して、ことの次第を理解させる。
ジェファンの顔の犯人はジェファンの家族と共に家に帰ってしまい、ジニョクの顔の刑事は刑務所へ搬送されることになる。ジニョクの顔の刑事は、刑務所で額に怪我を作って病院へ搬送される際に脱走する。そしてジェファンの家に行くが、そこでジェファンの顔の犯人から、仲間の三人に裏切られたから見つけ出して連れてくれば元に戻すと命令されてしまう。
ジニョクの顔のジェファンは、ミンソンと共に、最初の犯人の仲間の浮浪者を見つけ出し逮捕に成功するが、面会に来たジェファンの顔のジニョクに殺されてしまう。ジニョクの顔のジェファンは、次の共犯者を指示し、ジニョクの顔のジェファンに追いつめさせる。しかし、共犯者が逆襲し、ミンソンが駆けつける前にジニョクの顔のジェファンを拉致してしまう。そして、いつも殺人をするときにかける音楽を流すが、それがきっかけで、ジニョクの顔のジェファンは正気に戻る。そこへ駆けつけたミンソンは正気になったジニョクに殺されてしまう。駆けつけたジェファンはジニョクに最後の共犯者を見つけるように指示する。
実は、ジェファンがジニョクと崖に落ちた後、気がついたジェファンはジニョクを近くの廃校に連れて行って共犯者を見つけるために拷問をしていたが一向に拉致が開かなかった。困ったジェファンは科学捜査研究所の先輩に相談し、CIAがロシアのスパイに使ったとされる、相手を洗脳して自白させる薬を調合してもらう。ジェファンはその薬をジニョクに注射して洗脳し、ジニョクが自分のことをジェファンだと信じ込ませることに成功する。
最後の共犯者は、ジェファンを呼んでいたが、先にジニョクが現れる。そして共犯者を廃校に拉致する。それを知ったジェファンは、廃校に駆けつける。ジェファンの行動に疑問を持った室長が後をつける。廃校のコンテナにやってきたジェファンは、ジニョクに詰め寄るが、すでに自分を取り戻していたジニョクはジェファンに向かってくる。実は、ジニョクの洗脳を解くには首筋に埋めたチップに、犯人らが殺人を起こす時に流す曲を流すことにしていたが、二人目の共犯者にジニョクが拉致された際、その曲が流されて、洗脳から覚めていた。
ジェファンとジニョクは大乱闘を繰り返すが、そこへチーム長ら刑事が駆けつける。刑事に取り囲まれた前に、ジェファンのふりをしたジニョクが現れる。チーム長はミンソンから、二人の入れ替わりのことを話されていたので、一瞬躊躇う。そこへジェファンが現れたが、ジニョクとの乱闘の際、洗脳する薬を注射されていて、自分のことをジニョクと叫んでしまう。それでもジェファンはジニョクに襲いかかり、ナイフを突き立てるがチーム長はジェファンを銃で撃つ。二人は覆い被さって崩れ、まだ息があるという刑事の叫び声と共に映画は終わる。
二転三転というより、ごちゃごちゃに入り乱れて、落とし所が見えなくなった苦肉の展開という仕上がりになった感じで、その場その場で考えたネタを繋いでいったような、目先の面白さを狙っただけの映画だった。