くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「Flow」「お嬢と番犬くん」「劇場版モノノ怪 第二章 火鼠」

「Flow」

アカデミー賞長編アニメーション賞受賞作。前作同様に一切セリフなしで展開するシンプルな物語ですが、映像が目が覚めるほどに美しいし、流麗なカメラワークでスクリーンに引き込まれてしまいます。一匹の孤独な猫が苦難の末に友達を見つけて新たに旅立っていく希望の物語、とっても素敵で良かった。監督はギンツ・ジルバロディス。

 

森の中、一匹の黒猫が水面に映る自分の姿を映している場面から映画は幕を開ける。近くの建物の周りに動物のオブジェがたくさん置かれている。どうやら彫刻家が住んでいたらしく、黒猫はその家の飼い猫だったが飼い主が亡くなってひとりぼっちになったようである。黒猫はその家で一夜を過ごして、翌朝、森へやってくる。犬たちがやってきて、黒猫は追いかけられて逃げる。なんとか犬たちをまいて隠れていると、向こうから犬たちが戻って来るが、黒猫に見向きもせずに通り過ぎていく。続いて鹿の大群がやってきて走り抜けていくと、巨大な洪水が襲ってくる。あっという間に水に飲み込まれる森。黒猫は必死で高台へ高台へ向かう。

 

船に乗ったさっきの犬たちが流れてくる。その中の一匹ラブラドールが猫のところへ来るが猫は近づかない。巨大な猫のオブジェの上に黒猫は避難するが、間も無く水が覆ってきて、とうとう黒猫は水の中に落ちてしまう。そこへ、壊れかけた帆船が流れ着いてきたので、それに乗ると中にカビバラがいた。黒猫は警戒しながらカビバラと一緒に船で進む。

 

間も無くして、さっきのラブラドールがやってきて船に乗る。しばらく進むと廃墟の建物の一角にメガネザルがいた。水に囲まれてどこへも行けないメガネザルを助けるために黒猫は船を近づける。そしてメガネザルも乗る。メガネザルは、光るものをカゴに集めていた。さらに森を進むと、巨大な鳥たちがいた。黒猫は鳥たちのところへ行くが、一羽の鳥が猫に向かってきた。しかし別の一羽が黒猫を庇って喧嘩になり羽を痛めてしまう。その鳥を放ってほかの鳥たちは飛び去ってしまった。

 

一羽になった鳥は、黒猫の乗る帆船に一緒に乗ることになる。船のそばを鯨が泳いでいる。黒猫は魚の取り方を覚え、たくさん取って犬達に与える。メガネザルが持ち込んだガラスに浮きは、鳥と遊んでいるうちに船から落ちてしまう。さらに進んでいくと、さっきの犬たちが船が壊れたのか、取り残されていた。黒猫は犬たちを助けるために、舵をとって横付けしてやる。しかし乗ってきた犬たちは、黒猫が苦心して取った魚を食べたり、メガネザルの大事にしている鏡を壊したりしてしまう。

 

嵐を括り抜け、塔のように聳え立つ岩の入江に入ってきた帆船。鳥は船を離れて飛び立っていく。黒猫も陸に登り、聳え立つ岩を登っていき頂上に着くと、鳥がいた。間も無くして、水玉が浮かび上がり、猫も鳥も空中へ吸い上げられていく。光の渦が空から彼らを飲み込もうとしていた。猫はなんとか地上に戻るが、鳥はそのまま光の中へ吸い込まれてしまった。

 

岩を降りてきた黒猫は、帆船が見当たらないことに気がつき、途中で鳥に捨てられたガラスの浮きを見つけてそれに乗る。ところがしばらくすると、突然水が引いて周りが陸地になる。そして森の中に戻った黒猫が奥へ進むとメガネザルたちの集団がいた。その中の一匹に誘われるようについていくと、帆船が崖の上に倒れた木にぶら下がって今にも落ちようとしている場所に出くわす。黒猫は帆船を引き寄せ、犬たちは黒猫の方に飛び移ったが、カビバラは飛び移れない。黒猫は帆船の先のロープを引っ張り、犬たちとハンセンを引き寄せようとするが、ラブラドール以外の犬は途中でウサギを追いかけてどこかへいってしまう。あわやハンセンは崖の下に落ちるかと思われたが、すんでのところでカビバラは陸地へ飛び移る。

 

黒猫が森の奥へ行くと、そこに、水の中を泳いでいたグジらが身動きできなくなって横たわっていた。黒猫はどうしようもなく頬ずりする。やがてカビバラらもやってくる。そばの水たまりに、黒猫、メガネザル、ラブラドール、カビバラが映っている。それを見つめて映画は終わる。エンドクレジットの後、海の彼方に鯨が泳いでいる場面でエンディング。

 

孤独な黒猫が友達を得て、未来へ生きていくシンプルな物語がとにかく胸を打ちます。動物の質感はかなり荒いにですが、作品全体の仕上がりは素晴らしかった。いいアニメだった。

 

「お嬢と番犬くん」

原作が悪いのか脚本が酷いのか、役者が力不足だったのか、脇役の配置ミスか、演出が甘いのか、どれもこれもがチグハグで噛み合っておらずダラダラと流れるストーリーが退屈の極みだった。監督が小林啓一なので、それだけを頼りに見に来たのだが、久しぶりに駄作の極みを見た気がしました。

 

音羽高校の入試の合否発表の封筒を開く一咲の姿から映画は幕を開ける。無事合格し、自宅に戻ってきた一咲は、若衆に出迎えられる。一咲は、瀬名垣組組長の孫だった。「セーラー服と機関銃」の今時パロディという出だしである。一咲を祝ったのは若頭で、一咲がここへきて十年ほど一緒に暮らしてきた宇藤啓弥だった。普通の高校生活を送りたと願う一咲だったが、啓弥は、裏口入学で一咲のクラスメートに転入してくる。全くメチャクチャな原作である。

 

全然自由が効かなくなった一咲だったが、密かに啓弥を慕っている自分に気がつき始める。しかし、普通の高校生活を目指す一咲は、何かにつけて啓弥を遠ざけようとする。テストの成績が散々な啓弥に、一咲は、普通の高校生になるように頼み、啓弥は、ご褒美をもらえるなら頑張ると答える。そして、それなりのテストの点をとり、啓弥は一咲に口づけを求めるが、一咲は拒否、啓弥は代わりに動物園デートを求める。その帰り、啓弥がヒットマンに襲われる事件が起こる。

 

ヒットマンの件で労いに来た田貫組組長は孫の幹男を連れてきたが、幹男は一咲に一目惚れしてしまう。そして裏口入学で一咲のクラスに幹男も転入してくる。もう寓話を超えた子供のお遊び状態のストーリー展開である。しかも幹男は札付きの悪で、喧嘩ばかりして過ごし、一咲となんとか仲良くなろうと手段を選ばなかった。

 

その頃、文化祭のクラス行事を決めることになり、演劇を行うことで決定、演目はロミオとジュリエットと決まる。しかもジュリエットは一咲に決まるが、幹男がロミオ役に立候補し、事態は複雑な方向へ。そんな二人に啓弥は危機感を持つ。どうしても自分に向いてこない一咲に我慢しきれず、幹男は不良仲間と一咲を拉致監禁してしまう。しかし、GPSで一咲を追ってきた啓弥が駆けつけ、一咲を救出する。

 

文化祭本番、幹男は現れず、ロミオのセリフを覚えている啓弥が代役に入って見事ロミオとジュリエットは終演する。文化祭の後、屋上で一咲は、啓弥にキスを許して二人は口づけをして映画は終わる。

 

原作のエピソードを全て盛り込もうとした脚本が、非常に緩急もキレもない仕上がりになった感じです。しかも脇役が弱いので、主役が光ってこない上に、主役にそれなりのカリスマ性も、演技感もないので、どのシーンも噛み合ってこない。おそらく小林啓一監督も手の施しようがなかったのだろうという仕上がりに映画だった。

 

 

「劇場版モノノ怪 第二章 火鼠」

シリーズ三部作の第二部。前作よりもストーリー展開がシャープでものすごく面白かった。しかも、豪華絢爛な色彩と、目眩く映像展開はさらにパワーアップし、常人では思いつかないオリジナリティで画面に釘付けにされます。日本アニメの底の深さをあ今回も実感しました。監督は中村健治

 

大奥では歌山の後総取締役となったのは名家大友家出身のボタンだった。間も無くして天子の寵愛を一身に受けた町民出身のお中臈時田フキが身籠ったことが明らかになる。正室幸子が産んだ赤子の後見人選定が進められる中、大奥の采配を陰で牛耳る老中大友は、町人出身の中臈が産んだ子供を後継にするわけにいかず、密かに堕胎を画策し始め、フキの父は、家を守るため老中に従わざるを得ないと考えていた。

 

そんな頃、人が燃え上がり消し炭と化してしまう人体発火事件が発生する。モノノ怪の仕業と判断した薬売りは、早速大奥内に踏み込むが、ボタンによって阻まれる。しかし、前回唐傘の際も助けられたことを知る坂下は、薬売りを庇い、大奥の平穏のために力を借りることを提案、薬売りは「形」「真」「理」を突き止めるべく大奥にうごめく闇へ踏み込んでいく。

 

そして、過去に行われた中臈の堕胎と自殺事件を端緒とすると判断し、火鼠となって現れたモノノ怪に対峙、ついにモノノ怪を退治することに成功する。フキは産んだ子を自ら育てることを約束させ、大奥は再び平和が訪れる。

 

とにかく、豪華絢爛たる絵巻が圧巻で、それを見るだけでも値打ちがあるが、さらに今回物語の展開が緩急が効いていて面白いから、すっかりハマってしまいました。第三話も楽しみです。