くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「白夜」(4K)「スイート・イースト 不思議の国のリリアン」

「白夜」

2012年にニュープリント版を見て以来の再見。クライマックス、赤、青、の美しい映像に月の黄色がかぶる映像演出が秀美な文芸作品で、クオリティの高さ、めくるめくような幻想的なタッチはさすがに名編の味わいがあります。淡々と流れる物語に、主人公ジャックの想いが募っていく切なさの描写が美しく、一方のマルトの心がジャックへ移らんとする終盤から一気にラストへ流れる演出も見事。やはり良い映画です。監督はロベール・ブレッソン

 

画家の青年ジャックがヒッチハイクでパリに戻ってくる場面から映画は幕を開ける。第一夜ポン・ヌフ、一人の女性マルトが橋から飛び降りようとしている。ジャックは一旦は通り過ぎたが、通りがかりの車が停まり、パトカーも停車したので、面倒が起こるからとジャックはマルトを思いとどまらせる。マルトの恋人は一年まえにアメリカ留学に発ち、結婚できる身分になったら一年後に会おうと約束したのだという。しかし、今宵彼は現れなかった。

 

ジャックはマルトに理想の女性の姿を見て、彼女のために約束の相手に会えるように力を尽くし始める。手紙を届けたりするも返事はなく、第二夜、第三夜と時が流れる。ジャックはマルトへの思いをテープレコーダーに録音し、その思いを募らせていく。そして第四夜、ジャックはマルトに告白する。空に美しい月がかかっていた。二人は抱き合い、マルトはジャックに、アトリエはそのままに自分の下宿人になって欲しいと言う。マルトもまたジャックに惹かれ始めていた。二人が通りを歩いていると、突然マルトを呼ぶ声が聞こえる。それはマルトのかつての恋人だった。一時の気の迷いだったのか、マルトはジャックに別れを告げて恋人の元へ行ってしまう。ジャックはアトリエに戻り、粛々と絵を描き始めて暗転エンディング。

 

四夜の物語が、ファンタジックに描かれていく様に酔いしれてしまう作品で、夜の闇の押さえた光の展開が、クライマックス、一気に色鮮やかに変わっていく演出が秀逸。映画を映像作品として作り出す才能が垣間見られる一本だった。

 

 

「スイート・イースト 不思議の国のリリアン

主人公がアメリカの暗部を巡っていく物語をドキュメンタリータッチで描いていく、ちょっと個性的な作品ですが、長編デビュー作らしいギラギラ感があるようで、素人臭いとってつけたような映像も見られ、この手のタイプよろしく、やたら下品なシーンやセンスのない音楽が散りばめられた作品でした。監督はショーン・ブライス・ウィリアムズ。

 

リリアンが恋人トロイとベッドにいる場面から映画は幕を開ける。いかにもチャラい恋人に辟易としているリリアン。そんなリリアンは親友テッサらとワシントンD.C.へ行く話になり、大騒ぎしながらワシントンD.C.にやってきたリリアンは友人たちとカラオケで騒いでいた。そこへ銃を持った意味不明な男が乱入、リリアンは洗面所へ避難する。洗面所へやってきたのはケイレブという青年で、ここにいても仕方ないと脱出しようとするが、洗面所の一角の壁が穴が開いて出口が見つかる。

 

その穴から外に出たリリアンはケイレブに誘われるままに車に乗り夜の街へ向かう。そこで、何やら集会らしいところへやってきたリリアンは一人も中年の男性ローレンスと知り合う。泊まるところもないというリリアンをその男は自宅の一部屋に泊まらせる。ローレンスが仕事でニューヨークに出張すると言い出し、リリアンも無理についていく。ローレンスが仕事で留守の間に、リリアンがローレンスの持っていた赤いバッグを開いてみると大金が入っていた。

 

リリアンはそのバッグを持って街に出ると、突然黒人のアフロの男女に映画に出て欲しいとスカウトされる。そしてリリアンはハリウッドで、場末の映画の撮影に女優として参加することになる。ところが、夜間撮影をしていると、突然トラックに乗った男たちが現れ、リリアンを探していると言い、機関銃を撃ちまくって大混乱となる。トラックにはローレンスの姿もあった。

 

その場を逃れたリリアンは、スタッフ参加していた黒人のモーに助けられ、モーの兄が所有する郊外の小屋に匿われる。リリアンは小屋の外で怪しげに踊りまくる男たちの姿を見る。リリアンは監禁されたように外出できない事に耐えられなくなり、小屋の奥に納屋につながる出口を発見して、外に出る。そこへモーの兄貴たちが帰ってくる。モーの兄はリリアンを怪しむが、リリアンは持ち前の適当な話でその場を誤魔化し窮地を抜け出すが、道を歩いていて、寒さで気を失ってしまう。そこへ牧師の車が通りかかり、リリアンは助けられ、警察に通報してもらって自宅に戻ってくる。自宅ではテッサら友達に歓迎され、食事をして平和な日常に戻る。リリアンはそっとその場を抜け出し、何処かへ消えて映画は終わる。

 

個性的と言えばそれまでですが、もうちょっと、抑えるところは押さえればもっと面白い作品になった気もします。でも、変わった映画だった。