くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「濡れ髪牡丹」「花の兄弟」「ロングレッグス」

「濡れ髪牡丹」

痛快娯楽時代劇という一本で、特に秀でた脚本でもなく、たわいない物語がのらりくらりと展開していく。導入部はなかなか面白かったが、どんどん間延びしていく展開もまた映画黄金時代のおかしみで面白い。今や見つからない日本の原風景をロケーションし、大部屋役者もふんだんに使って、男と女の恋の物語をコミカルに描いていく。量産時代の一本ですが、こういう映画は今の映画にない楽しさがあります。監督は田中徳三

 

清見潟で三千人の子分を従える大親分おもんは、自分の結婚相手を選ぶために、さまざまな試験をパスする人物を物色していた。一人の旅鴉が茶屋でその噂を聞き、さっそく挑戦するが、あっという間にこてんぱんにやられてしまう。おもんの弟岩吉は、自分が跡目を継いでもいいと考えていたが、おもんは弟をヤクザにする気はなかった。そんな岩松が恋人といちゃついていると、口笛を吹きながら、馬喰の馬に乗ってヤクザ者の瓢太郎がやってくるのを見つける。

 

瓢太郎はおもんのところへ上がり込んで、さっそく試験を受け始めるが、どれをとっても免許皆伝で、次々とパスしていく。そして最後、おもんとの勝負になるが、おもんの色気にやりこめられたかに見えて負けてしまい追い出されてしまう。しかし、おもんはすっかり瓢太郎に惹かれてしまい、手下のにょろ松に後をつけさせる。そして一年が経つ。

 

一年後、役者になって瓢太郎が戻ってくる。そんな瓢太郎に強気で接するおもんだったが、気持ちは嬉しくてたまらなかった。再度瓢太郎はおもんと戦うも今回も負けてしまい、しかもおもんに鞭打たれて瀕死の状態になってしまう。その頃、極悪非道の浪人集団三つ星が清見潟に流れてくる。おもんの後釜に伊三郎が名乗りをあげておもんを力づくで手に入れようとしていくる。さらに伊三郎は三つ星と手を組んでおもんの入浴中に襲ってくる。そこへ、瓢太郎が現れ、伊三郎も三つ星も退治し、おもんを助ける。おもんは瓢太郎に抱きつき、やがて数年が過ぎた。おもんと瓢太郎の間に子供も生まれ、この日夫婦で料理教室をする瓢太郎とおもんの姿があって映画は終わる。

 

なんともたわいない映画で、安直に作った感満載の一本だったが、映画全盛期の映画というのは全体に余裕が溢れていて楽しめる。

 

 

「花の兄弟」

こちらもなんともお気楽な娯楽時代劇で、クオリティがどうのこうのという余計なことは考えずに、橋幸夫の歌声と市川雷蔵のスター二人を楽しむだけの作品。監督は池広一夫

 

神社の祭りで歌声を披露する新次郎の姿から映画は幕を開ける。父の仇を追う市之進は、仇がこの地のヤクザ者の用心棒だったことを聞いてこの地にやってきた。ところが、宿で持ち金を盗まれて一文無しになってしまう。市之進は、大津の親分大津勘右衛門のところに仇がいたのではないかとやってくるが、そこで、新次郎と出会う。なんと新次郎は市之進の弟だった。

 

市之進はヤクザになって仇探しを始める。そんな時、新次郎が大津と競うヤクザ者横木組の子分をこらしめたことから、出入り騒ぎが起こる。大津に縄張りを狙う横木の親分は、藪の下の親分と手を組んで大津に迫ってくる。そしてことを穏便にするには大津の娘お玉を横木に嫁がせるのがいいと言ってくるが、大津はその場を逃れるために、子分の1人と結婚が決まっていると言ってしまう。そしてお玉と市之進は嘘の結婚式をあげるが、お玉は本気だった。

 

ことが進まない横木の親分らは大津組に殴り込みをかけようとしてくるが、そんな時市之進は、狙う仇は今は名を変えた大津勘右衛門だと言われる。市之進が大津勘右衛門を問い詰めると、白状し、出入りの場で自分を斬っても構わないがお玉のことは頼むと答える。やがて横木組らが殴り込んでくるが、大津勘右衛門は市之進にとっても義父同様だからと斬ることはせず、横木らを迎え撃って返り討ちにし、全てが終わる。平和になった村で市之進や新次郎が踊る姿で映画は終わる。

 

物語はその場その場で取ってつけたように展開する雑さだが、橋幸夫市川雷蔵のスター映画だと割り切れば、これはこれで楽しかった。

 

 

「ロングレッグス」

宗教色を絡めたミステリーホラーという感じの作品で、全編左右対称のシンメトリーな構図を多用し、不気味な音や映像の演出、過去をスタンダードで現代をワイドスクリーンにした構成で展開するB級ながら楽しめる映画だった。監督はオズグッド・パーキンス。

 

雪景色の中、白い家に向かって一台の車がやってくる。家の中にいた1人の少女が家の外に出て車の方に近づくと背後に鳥の真似をした人の声が聞こえ振り返ると真っ白な服と化粧をした男が声をかけて映画は始まる。猟奇殺人事件が連続し、そのどれもが殺人を犯した後自殺していて、ロングレックスという人物からの手紙が残されていた。捜査をするFBI捜査官のリー・ハーカーはフィスク捜査官と犯人が潜伏しているらしい住宅街にやって来る。フィスクが目星のある家に入っていくがリーは別の家に犯人がいると考える。フィスクがその家の玄関に立つと突然フィスクは銃で撃たれる。

 

何やら心理テストをしているリーの姿、上司のカーターは、リーが並外れた能力があることを認める。猟奇殺人事件で唯一の生き残ったキャリー・アンが病院に入院していたが、1人の男が面会に来て以来、言葉を話すようになったと連絡がはいる。リーとカーターが病院へ行くと、面会に来たのはリー・ハーカーという名前で面会に来ていた。カーターはリーの事を調べるうちに、リーが9歳の時、母親から、不審者の侵入があったと警察に連絡があった事を知る。そして母に会って、その時の出来事が今回の事件に関係があるのではないかと詰め寄る。

 

リーは長らく会っていなかった母に会いに行くが、どこか謎めいたものを感じる。キャリー・アンの家には謎めいた人形が残されていた。人形の頭にはボールのようなものが埋められていたが、何も詰まっていなかった。リーは自宅の屋根裏から一枚の写真を見つける。そこにはコベル(ロングレックス)が写っていた。リーはカーターにコベルを逮捕するように依頼する。コベルは人形師で、悪魔の呪いを込めた人形を作って誕生日を迎える少女に送り、家族を洗脳して殺戮をさせていた。リーが9歳に誕生日の前日にリーの家にやってきたが、ルースがリーの命乞いをし。その代わり殺人の手伝いをすることになったらしい。

 

逮捕されたコベルにリーが対峙するが、突然コベルが額を机に打ち付けて死んでしまう。リーは共犯者の存在を確信し、ブラウニング捜査官と実家へやってくるが、リーが家に入った隙に母が猟銃でブラウニング捜査官を撃ち殺してしまう。さらに、怪しい人形を撃つと、中から黒い煙が上がりリーは気を失ってしまう。

 

リーが気がつくと、幻覚の中に、カーターの娘ルビーが危険になっているのが現れる。慌ててカーターの家に行ったが、すでにルースが人形を届けていた。リーが家に入るとすでにカーターの様子は変わっていて、台所へ妻と消えたかと思うと妻を殺す音が聞こえる。現れたカーターをリーが撃ち、さらに母にも銃を放つ。ルースが届けた人形に寄り添うルビーを助けるために人形を撃とうとしたがすでに弾はなかった。リーはルビーを連れて脱出し映画は終わる。

 

振り返って考えると、かなり無理のあるストーリーなのですが、そんな理屈や矛盾を吹っ飛ばすと、それなりに面白いホラー映画だった気もします。