「眠狂四郎勝負」
さすがにこの時代の時代劇は景色といいセットといい、エキストラといい、余裕があって見ていて本当に面白い。市川雷蔵の透明感のあるヒーローはやっぱり心地よい。監督は三隅研次。流石に構図は美しかった。
正月、神社の祭り、一人の女が逃げている姿、それを追う眠狂四郎の姿、人混みの中で女の着物が剥がされる。どうやらスリだったというところから映画は幕を開ける。石段を尻を押してもらいながら上がる老武士朝比奈は、茶屋で休んでいて狂四郎と知り合う。尻を押して仕事をしている少年の父は道場を営んでいたが、道場破りに来た浪人に殺されたという。狂四郎はその経緯を聞き道場へ行って浪人を斬り殺し少年を助ける。
ところが、朝比奈老人に斬りかかってくる赤座という侍がいて、狂四郎が助太刀をして追い払う。朝比奈老人は、幕府の勘定奉行で、厳しい手腕で私服を肥やす武士たちを戒めていて嫌われているようだった。朝比奈を亡き者にしようとしているのは白鳥という武士で、五人の腕達者な浪人を雇い、朝比奈を狙うとともに、眠狂四郎も亡きものにしようとしていた。
将軍の妾の高姫は、好き放題に金を使い、幕府の財政を苦しめていて白鳥とともに朝比奈を疎ましく思っていた。朝比奈と関わった狂四郎にさまざまなことが見え始め、興味を持って朝比奈と行動をともにする。五人の浪人を取りまとめた占い女采女は狂四郎に靡くようになり白鳥らから狙われてとうとう捕縛される。采女を助けるべく向かった狂四郎は白鳥らの一味に襲われるが窮地を脱出。
追ってくる赤座や白鳥らを撃退した所へ、老中から朝比奈の計画を受け入れる旨の知らせが届く。全てが終わった狂四郎に朝比奈は、落ち着いて暮らしてはどうかと勧めるも狂四郎は采女を残し立ち去っていく。こうして映画は終わる。
次々と物語が展開し、中心になる勧善懲悪のストーリーの中に枝葉がついてくるので、ある意味てんこ盛りだが、退屈しない作りで流れるのは流石に職人芸という感じの仕上がり。やはり古い時代劇は面白い。
「眠狂四郎炎情剣」
劇場鑑賞一万本目の記念作品になりました。しっかりと組み立てられた勧善懲悪のストーリーですが、眠狂四郎の色香をふんだんに盛り込んで、単調な悪人退治映画に仕上がっていないのがとにかくとっても良い。やたら裸を出すのではなく、色気を演出するとはこういう事だと改めて感心してしまいました。監督は三隅研次。
眠狂四郎が街道を歩いていると、一人の女が駆け寄ってくる。敵討をするのだが助太刀して欲しいという。続いて一人の浪人がやってくる。分けもわからないままに眠狂四郎は助太刀をして仇討ちを遂げさせてやるが、殺された浪人は死の間際、「助太刀すればおぬしの恥」と呟く。女の名は檜垣ぬいと言って、夫を闇討ちにした男を仇討ちしたのだという。そして仇討ち成功を家老跡部に報告、狂四郎はぬいが礼になんでも与えるというので言葉通りぬいを一夜抱く。
狂四郎が居酒屋で酒を飲んでいると伝吉という男が駆け込んできて助けを求める。しかし狂四郎が相手にしなかったので、役人に連れて行かれる。後日、鳴海屋が訪ねてくる。一人の女小笹に色の道を教えて欲しいという。裏があるように思ったが狂四郎はそれを受ける。しかし、着物を解いた小笹の体には刺青が施されていた。狂四郎はことの次第を鳴海屋に問い詰めると、鳴海屋は、藤堂家の家老跡部は、鳥羽水軍という海賊の財宝を手にして、海賊の生き残りを探し出しているという事で、跡部と手を切りたいから協力して欲しいというものだった。
狂四郎は海賊の頭領おりょうの居所を探し出して南の島へ逃してやる。跡部は海賊の生き残り守田も殺して、守田の娘で鳴海屋で働くかよも狙っているらしいと判断する。狂四郎は跡部が参列するぬいの夫の法要の場に乗り込んで跡部らを斬り殺す。実はぬいは自身の私欲のために色香を使って次々と男を味方にしていた。そこへ藤堂家の老中が乗り込み、跡部の悪行について、城主とは関係のないこととして処理する旨を伝える。そんな侍社会に嫌味を言って眠狂四郎は去っていく。街道で、ぬいがまたも狂四郎に言い寄ってきたが、狂四郎はぬいを切り捨て彼方へ去っていって映画は終わる。
女を犯すことを平然と言ってのける眠狂四郎のキャラクターの潔さと、市川雷蔵という俳優の持つ男の色気の凄さに映画が引き立っていく様を目の当たりにします。大人の映画という感じを見せつけられる一本でした。