「ドマーニ!愛のことづて」
ちょっと面白い映画だった。初の婦人参政権を謳った映画なのだが、ミスリードが面白く、しかもミュージカル仕立てでその上コミカルな演出が施されているので、最後まで一体どうなるのかと思ってしまう。今の時代の視点で見れば、明らかにDV映画であって、なんでまた普通に展開していくのかと思うのですが、元カレや、謎めいたへそくり、いかにもな封建的男たち、助けてくれそうな黒人のアメリカ兵だが言葉が通じない、そんなこんなが溶け合って絡み合ってラストになんとも言えない感動へ続く様が最高だった。監督はパオラ・コルテッレージ。
1946年5月、ベッドで目を覚ますデリア、傍に夫のイヴァーノがいて、デリアが起きるのが遅れたというと、イヴァーノが間髪入れずにビンタをする。そして陽気な曲が流れ、デリアは次々と様々な仕事をこなしていく場面の後タイトル。このオープニングに呆気に取られて映画は始まる。1946年イタリア、デリアは男尊女卑の古臭い封建的な夫イヴァーノにいつも暴力を振るわれているが、我慢しながら日々を送っている。そんな母に苛立ちを覚える長女マルチェッラは、母のような人生は嫌だと常に思っていた。彼女には裕福な家庭の息子ジュリオがいて、ジュリオはマルチェッラと結婚を考えていた。息子二人はまだ幼く、いつも喧嘩ばかりしている。義父は寝たきりでデリアが世話をするが、デリアをいいようにこき使っていた。
デリアは市場で働くマリーザと親しくて、何かにつけ相談に乗ってもらっていた。帰り道の途中に元恋人なのかニーノという男性もいて、デリアは束の間の会話を楽しんでいた。デリアはわずかな稼ぎから一部をいつもへそくりしていた。イヴァーノはデリアとマルチェッラの稼ぎを全部取り上げ、自分は二度の戦争に行って苛立っているからと夜は友達とカードををしたり女を買いに行ったりしていた。そんなある日、一通の手紙がデリアに届く。デリアはその手紙を大事にしまう。
マルチェッラはジュリオから、両親を引き合わせたいと言われる。それはつまり婚約ということだった。デリアは大歓迎するが、貧しい家庭を見られることをマルチェッラは嫌がり、祖父にも会わせたくなかった、しかしデリアは大丈夫だからと引き受ける。そしてジュリオの両親がやってくる。ジュリオの両親は小さなレストランを経営していたが、元は農民出身の成金だった。しかし、何かにつけマルチェッラの家族を見下げるような態度を見せる。しかしジュリオは両親の前でマルチェッラに婚約指輪を渡す。
そこへ、戦前以来歩いたことがない義父が現れて、ジュリオの両親の前で横柄な態度をとる。デリアが準備した料理を落としてしまったので場がしらけて、ジュリオの父の提案で自分の店にマルチェッラらを招待する。しかし、イヴァーノはデリアを殴るつもりで二人で残る。イヴァーノの父は、イヴァーノに、あまりデリアを殴らない方が良いと忠告し、イヴァーノはデリアに謝罪の言葉をする。
ニーノは、北部へ行ってもっと稼ぐつもりだとデリアに告白する。デリアが帰宅途中、駐留米軍の黒人兵士が落とした家族写真をデリアが見つけたので、兵士は何かにつけデリアに親しげに話しかけるが、言葉は通じていなかった。いつものようにジュリオがマルチェッラの家に遊びに来た。デリアも居て、自身の新しい服を縫っていた。マルチェッラらのいちゃつく声が聞こえて来たが、ジュリオはマルチェッラに威嚇的な言葉を投げているのを聞いてしまう。デリアは、マルチェッラに自分と同じ道を歩んでほしくないと忠告するがマルチェッラはジュリオに盲目的に恋心を持っていた。
ある夜、ジュリオの父の店が突然爆弾で破壊される。傍にデリアと黒人兵士がいた。店が破壊されて、ジュリオの両親は無一文になり田舎に帰ってしまい、ジュリオとマルチェッラの婚約も白紙になってしまう。マルチェッラは毎日泣き続ける。デリアは、マリーザに、次のミサの後注射の仕事に行くことにして欲しいとアリバイを頼む。全てを察知したかのようにマリーザは引き受ける。デリアは新調した服と貯めたへそくりなどをカバンに入れる。元カレニーノとこの家を出ていくかの段取りである。
そしてミサの日、最後に義父の様子を確認して欲しいとイヴァーノに言われ、デリアは義父の部屋に行くと義父は亡くなっていた。デリアは、とりあえず知らないふりをしてミサに行くが、近所の男が義父の様子を見に行って死んでいるのを発見、教会へ知らせに来たので、状況が変わってしまう。デリアは何とかこの場を抜け出したいと思うができず、悔やみに来る人たちをもてなさざるを得なくなる。心配したマリーザもやってくるが、これで良かったのではないかとデリアに言う。デリアは、まだ明日があると決心し、翌日早朝、貯めた金をマルチェッラの枕元に置き、新しい服を着て口紅をつけ、手紙を手にして出て行こうとするが、そこにイヴァーノが起きてくる。デリアは慌てて手紙をポケットに入れ、注射しに行かないといけないと説明、その場を離れるが手紙を落としたことに気が付かなかった。
デリアは、いそいそと大勢の女性が集まっている場所にやって来た。イヴァーノはデリアが落とした手紙を見つけて、それを丸めてデリアを追う。マルチェッラは枕元の封筒を見つけ、中を開けるとこのお金で学校へ行きなさいとデリアからの手紙が入っていた。マルチェッラが玄関へ行くと、イヴァーノが丸めた手紙が落ちていた。マルチェッラはその手紙を持ってデリアを追う。
大勢の女性たちの中にデリアも居たが、追って来たイヴァーノはデリアを見つけられなかった。デリアは、受付の男性の声に、手元の手紙を探すが見つからない。そこへマルチェッラが現れ手紙をわたす。それは初の女性参政権の投票通知だった。デリアは会場へ入って投票を終えて出てくるとイヴァーノがいた。しかし、デリアは毅然とイヴァーノを睨み返す。マルチェッラの誇らしげに母を見つめる笑顔があって映画は終わる。
イヴァーノがデリアを殴ろうという状況になるとミュージカルのようにダンスと曲が始まり、ステレオタイプ化された如何にも古臭い男性像の姿や、貧富の差をコミカルに描く演出がとにかく楽しい。そして結局、婦人参政権が実施されたと言うメッセージで締めくくる作りは見事なものです。ちょっと個性的な作りの作品で面白かった。
