「シンシン/SING SING」
最も厳重なセキュリティを施されたニューヨークシンシン刑務所での収監者更生プログラムの舞台演劇での実話をもとにした真摯で誠実な良質のヒューマンドラマでした。二人の中心人物の人間描写がしっかりしているし、犯罪者とはいえ、そこに過度に言及せずに、男同士の友情ドラマとして芯を崩さなかったのが良かった。監督はグレッグ・クウェダー。
シンシン刑務所で十年近く更生プログラムの舞台演劇で委員長をしているジョン・ディヴァインGが舞台の大団円で大音声をあげてラストを締め括ったところから映画は幕を開けてタイトル。次の演目に、欠員になったメンバーを補充するべくジョンはマイクマイクとクラレンス・ディヴァイン・アイという男に目をつける。クラレンスは、更生プログラムに興味を示しているという申請を出していたのだ。ジョンは、クラレンスの素質に惹かれメンバーに迎えることにする。
次の演目は、ジョンが書いた作品だったが、クラレンスの提案で喜劇はどうかということになる。そこで演出のブレントが、様々な有名なキャラクターをタイムトラベルものにしてごちゃ混ぜに登場させる脚本を仕上げる。ジョンはハムレットの役になる。やがて稽古も中盤に差し掛かった頃、ジョンとクラレンスはちょっとしたことで諍いになり、クラレンスが稽古に来なくなるが、それもジョンはの声掛けで再び稽古は動き出す。ある日、マイクマイクが脳梗塞で急死してしまう。
終盤に差し掛かった頃、クラレンスは仮釈放の申請を出す。一方、ジョンは無実であることの証拠を発見して、減刑の申請をした。結果、クラレンスは、ジョンのアドバイスもあって仮釈放となるが、ジョンは却下されてしまう。ドレスリハーサルの場で自暴自棄になったジョンは舞台をぶち壊してしまう。そんなジョンにクラレンスは、もう一度戻れるようにメンバーにはかる。
そして本番は成功し、次の演目に向かうことになる。実際の舞台映像が次々と映され、時がたち、この日ジョンは出所した。彼を車で待っているのはクラレンスだった。二人は抱き合い物語は終わる。
映像的にもストーリー的にも抜きん出た仕上がりの映画ではないのですが、終始刑務所内での閉鎖空間の物語を徹底し、登場人物たちの心の空間が閉じ込められている感を徹底的にした演出は上手い。ラストでようやく外の空気に触れた二人の主人公の開放感は素晴らしかった。いい映画だったと思います。