「#真相をお話しします」
ネット社会を揶揄しただけの薄っぺらい娯楽映画かと思っていたが、原作が、テーマをしっかり掘り下げて描かれているのか、なかなか面白いエンタメに仕上がっていました。ラストを紋切り型にしたエンディングも映画の仕上がりを押し上げた気がします。監督は豊島圭介。
一人の男がホームセンターで道具を買い、クロスボーのようなものを仕上げている映像から映画は幕を開ける。今日もいつものように警備員の仕事に来た桐山は、借金に喘いでいた。真相暴露サイト「#真相をお話しします」に採用されることで一攫千金を目指していた。この日、このビルの住民で友人でもある鈴木が警備室に遊びに来る。桐山は、自身の投稿が「#真相をお話しします」の主催者、通称サテツに採用されることを固唾を飲んで見ていた。サテツは、小学生の時、沖縄に住み、チョモランマという同級生やルー、リンコという二人の女子の日常をアップしたフルハウスデイズという投稿が大人気だったが、突然サイトは終了した謎を知っていた。そして目標の視聴者数が達成したらその真相を語ると約束していた。
最初に採用されたのは、カテキョというハンドルネームの男で、かつて家庭教師の勧誘の仕事をしていたときに遭遇した殺人事件とその真相を暴露して大金を手にする。続いて採用されたのは一人の女子大生で、美人局をしていたときに出会った、パパ活をしている女子を殺している殺人鬼との遭遇事件の暴露で、これも大金を手にした。諦めかけたとき、警備王というハンドルネームの桐山が採用される。
桐山は、商社に勤めていた際、友人二人と、自分の恋人との恋愛トラブルから発展した殺人事件のことを語り始める。投げ銭は思いの外盛り上がって大金が入り始める。そしてサテツは目標数に達成したことで、フルハウスデイズの真相を話し始める。そこへチョモランマとして登場したのは鈴木だった。鈴木こそチョモランマだった。鈴木は余命一年という病に冒されていた。
サテツらがフルハウスデイズで人気になっていた頃、リンコが突然崖から落ちて亡くなる事件が起こる。その日、たまたまルーはチョモランマの家を訪ねていて、ルーがリンコを殺したと思っていた。そしてサテツは、リンコが知った謎をチョモランマに話す。フリハウスデイズは、チョモランマの母が隠し撮りをして配信していたものだった。そして、そのことをルーは知っていて、真相を知ったリンコは殺されたのだ。
サテツは「#真相をお話しします」で、成人になったルーを拉致して処刑することにする。そして匿名で投稿していた視聴者の情報を暴露するか、ルーを殺すかを選ぶように強要する。鈴木は、桐山は友人だからと情報暴露をしないが、殺すか辞めるかの選択を最初にさせる。殺す方に強制的に投票させられ、殺すの投票が鰻登りなっていく中、桐山は自身の顔を晒し、殺してはいけないと絶叫し、鈴木が画面で選択を迫って映画は終わる。
匿名投稿の無責任さや、ネットの中の真実と虚構の矛盾をメッセージとして問いかけながらエンタメ感満載で展開するストーリーは、今更というテーマながら面白おかしくできている。映画として決して一級品の仕上がりではないかもしれないが、軽く見るには十分なエンタメだった。
「異端者の家」
映像が凝っていてカメラワークも美しく、胡蝶の夢や獅子おどしなど東洋的な思想を盛り込んだキリスト教宗教観という作りが、ホラーながらなかなか独特な空気感を生み出して楽しめる作品でした。少々理屈やキリスト教の教義についての延々としたセリフは流石に理解しづらいものもありましたが、ヒュー・グラントを殺人鬼にした設定も面白いし、シスター二人の女子トーク的な導入部も含めモダンなタッチも今風で面白かった。監督はスコット・ベック&ブライアン・ウッズ。
二人のシスターパクストンとバーンズがベンチでSEXやポルノ談義に花を咲かせている場面から映画は幕を開ける。どうやらモルモン教の布教をしているらしく、自転車に乗って布教をするも成果が進まなくて、営業的に焦っている風が如何にも現代的である。天候が悪くなり雨が降る中、一軒の邸宅にやってくる。自転車にロックをセットして鍵を締め、チャイムを鳴らして出て来たのはリードという中年のイケメン親父だった。
玄関口で話をするうちさらに天候が厳しくなり、リードは二人を中へ招き入れようとする。中に妻がいるというので安心した二人は家の中へ入る。妻は奥でパイを焼いているというリードの言葉を信じてキリスト教の教義について語り始めるが、リードは独自の宗教感を二人に問いかけ議論を始めていく。妻を同席して欲しいという二人の申し出に奥へ入ったリードを見て、二人は様子の異様さに気づく。そして玄関を出ようとしたら玄関のドアが開かなかった。
おかしいと確信した二人は、脱出しようとするが、スマホは通じない。この家は金属で囲まれていて電波は遮断されているという。さらにバーンズが自転車の鍵をコートに入れたままで、コートは預けていたことに気がつく。リードの言われるままに奥の部屋に行きコートを手にしたが鍵がない。外に出たいという申し出にリードはとうとう妻は存在しないことを告白し、玄関のドアはタイムロックがかかっているので裏口しかないという。
裏口に通じるドアは二つあり、バーンズが覗いてみると地下室に通じていた。二人は一方のドアを開き地下に降りていくとそこは別の部屋になっていて、二人は閉じ込められてしまう。しばらくするとフードを被った女が現れ食べ物を置くが、伝言管を使って、リードが「その女はトリカブトの入った食べ物を食して一旦死ぬが蘇るから、蘇りの証人になって欲しい」という。女は食べ物を食べその場で死んでしまう。
二人を探して教会からエルダーが探しに訪ねて来たので、二人は地下室のドアの隙間から叫ぶも聞こえない。再び地下に戻ると死者の位置が変わっている。バーンズは手に入れたマッチを擦って煙を表に送って合図しようするもうまくいかない。そんな二人に死んだはずの女が言葉をかけてくる。
リードが現れ、これが蘇りだと言い、その女を連れ帰ってしまう。バーンズは、居間にいる際、ペーパーナイフを隠し持っていて、パクストンに預けていた。「魔法の下着」という合言葉でリードを刺すように決めていたが、パクストンが合言葉を言った途端に逆にリードにパクストンは喉を裂かれて死んでしまう。
リードはパクストンの二の腕からチップを取るが、それは避妊具だとバーンズは説明し、さらにバーンズはさっきの女が蘇ったのはトリックだと言う。生きた女と死体が入れ替わった事を説明し、地下室のさらに下に別の部屋があることを見破る。リードに促されバーンズはそこへ降りていくが、リードはその入り口を塞いでしまう。
バーンズがそこで女の死体を発見し、さらに奥へ進むと自分たちの自転車のロックがかかった部屋にたどり着く。コートのポケットに鍵が入っていたのでその鍵でロックを外して中に入ると、檻に入れられた女たちを見つける。そこへリードが現れたので隙をついてペーパーナイフをリードを刺す。
バーンズはその部屋を脱出して逃げようとするが玄関の扉を開ける術がなく、再度地下室に戻ると、リードが襲いかかってきて腹にペーパーナイフを突き立てられる。ところが死んだと思っていたパクストンが最後の気力で、最初にこの部屋に閉じ込められた際窓によじ登ろうとした時剥がれた釘の刺さった木辺をリードに突き立てて殺した後、パクストンは息を引き取る。
バーンズは、換気口を抜けて外に出ると一面が雪景色だった。スマホで助けを呼んだ後、自身の指に留まっている蝶を見つめるが、次の瞬間、蝶はいなくなっていた。こうして映画は幕を閉じる。
今の出来事は現実だったのか夢だったのか、信仰心や宗教の存在意義はなんなのか、様々なテーマを二重三重に盛り込んで展開するホラー作品で、シンメトリーな画面や、絵画的な絵作りを繰り返すカメラワークも美しく、なかなか面白いホラー映画でした。