「けものがいる」
観念的に始まるオープニングから、その後の物語の方向が全く見えないままに、時間が前後し空間が前後し、さらにシュールな映像も繰り返されるので、正直、恐ろしく長く感じてしまった。結局、近未来の処置を施された主人公が瞑想の中で見る過去と現代の世界を断片的に描きながら、そこで出会った一人の男性に恋するのだが、実はそれも政府による空想のものだったというエンディングと理解したが正しいかどうか不明。監督はベルトラン・ボネロ。
グリーンバックで演技をする女優ガブリエルが、テーブルのナイフを取って構えると急に絶叫してタイトル、映画は幕を開ける。時間が遡ったのかドレスを着たガブリエルが仮装パーティのような席にいて、一人の男性ルイと出会う。何やら水に浮かんで感情を排除する処置を施されようとしているガブリエル。耳に針が突き刺されようとしている。近未来では重要な仕事をするためには感情を排除しなければならず、彼女はその処置を受けることにしたのだ。
近未来、パリは地震か何かの天変地異で水没しているらしい。パソコンの中で占いの女が何やら予言をしている。突然ガブリエルの部屋に鳩が舞い込んできてガブリエルはパニックに陥ってしまう。そこに夫だろうか男性が現れる。ガブリエルは女優らしく、容姿の衰えを気にしていて整形外科の相談をしている。
地震の後、家の外に出て一人の若者ルイと出会う。ルイを家に誘うがルイは断る。深夜パソコンを開いていて突然警報が鳴る。パソコン画面には怪しいサイトが次々と現れ、ファイルが送られて来て開いてみるとルイが全ての女を抹殺するからと語ってくる。ガブリエルは占いの女に連絡するがその女は背後にいる男がいなくなったら答えてあげるという。ガブリエルが振り返ると鳩がいて、次の瞬間、ルイが迫ってくる。そして銃で撃とうとするので画面が固まり、一瞬の後、ガブリエルは撃たれてプールに沈む。
近未来の処置室の中で、ガブリエルは処置できなかったと言われる、隣にサポートロボットのケリーがいる。ガブリエルはケリーにルイを探して欲しいという。場面が変わると、ガブリエルの目の前に現れたルイは政府の仕事に就くことになったと言い、次の瞬間鳥になって消える。ガブリエルが絶叫して映画は終わる。
という物語だったと思いますが、時間や空間を交錯させるとしても、整理して演出していかないと観客はついていけない。そんなことを実感してしまう作品だった。
「メイデン」
なんとも淡々とゆるゆる展開する青春映画だった。まるで、インディーズムービーのようなカメラワークと演出を繰り返しながら、たった一つの事件を中心に描かれる物語。その描かんとしたい部分が奇妙なほどに間延びしていて、ラストに至っても収束されずに何気なく終わってしまう。映画が生きていないという感じの作品でした。監督はグラファム・フォイ。
カイルとコルトンがスケボーで疾走している場面をカメラが横に追いかけていく場面から映画は幕を開ける。二人は、建築中の家にいって、古びたカセットレコーダーを見つけ、猫の死体を見つけて川に埋葬してやり、古いテレビを叩き壊したりして遊ぶ。夕闇が迫る中、線路を歩いていたカイルは、突然コルトンの視界から消える。まもなく列車が近づいて来て、コルトンがカイルに危険を知らせるも返事がない。そしてカイルは死んでしまう。
落ち込み、自暴自棄になり、クラスメートに当たり散らしたりする、そんなコルトンを気遣うクラスメートたち。ホイットニーという少女が行方不明になっているという事件が起こっている。時間が遡ったのか、コルトンはホイットニーに、カイルがホイットニーのことが好きらしいと告げる。
場面が変わると、カイルとホイットニーがデートしている。建築中の家に行き、古いテープレコーダーを見つける。これは過去の物語なのか、死んだ二人の物語なのか、そのあやふやな中、一人になったコルトンは、建築中の住宅で黒猫を見つける。コルトンは愛し気にその黒猫を抱き映画は終わる。
瑞々しい青春ストーリーかと思いきや、どこか透き通りきらない仕上がりの作品で、映画に命が吹き込まれていない感じが最後まで違和感で感じてしまう作品でした。結局、恋人ホイットニーを失ったカイルが自殺したのかという解釈もあるのではないかと思った。