くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「鶴八鶴次郎」(成瀬巳喜男監督版)「怪獣総進撃」(4K)

「鶴八鶴次郎」

静かな構図と丁寧な演出で描き出す芸道ものの名編。仰々しい展開も演技も徹底的に排除し、見事なカットバックと、絶妙のセリフの間合いで映像にリズムを作り出しながら、切々と描く男と女の微妙な心の機微がいつのまにか胸に迫ってきます。高級ないい映画というのはこういうのをいうのでしょうね。心が洗われたような名作でした。監督は成瀬巳喜男

 

三味線の鶴八と謡いの鶴次郎のコンビが人気絶頂だった。まだまだ二十歳そこそこだというのに観客を魅了する二人の芸は末恐ろしいとさえ周囲は考えていたが、鶴八と鶴次郎は何かにつけて些細なことで喧嘩をしては仲直りをすることを繰り返していて、番頭をしている佐平はいつも気が気でなかった。

 

鶴八は、いつも世話になっている松崎という男から求婚されたことを鶴次郎に話す。鶴次郎は兼ねてから鶴八のことは妻にしたいと考えていたことを告白し、鶴八も鶴次郎の言葉に応えて、夫婦になることを決める。そんな鶴八に鶴次郎は寄小屋を持ちたいと夢を語る。二人はこれまで貯めた金を持ち寄って小屋の準備を進めたが、その柿落としの時、出資者に松崎の名を見つけた鶴次郎は激怒し、鶴八に、結婚のことも反故にすると啖呵を切る。鶴八もそれに応えてしまい、以来二人は一緒に舞台にも上がらなくなってしまう。

 

間も無くして鶴八は松永と結婚をして舞台を降りるが、鶴次郎は一人三味線を弾いて舞台に立ち続ける。しかし一人になった鶴次郎の芸に次第に客は離れていく。すっかり落ちぶれ、田舎回りになった鶴次郎を見かねた佐平は、次の名人会に鶴八との舞台を再開させ鶴次郎を立ち直らせようと画策する。鶴八も快く同意し松永にも同意してもらい鶴次郎との舞台が蘇る。鶴八は、このまま舞台に戻りたくなったと言い、そのためには離婚も考えると鶴次郎に告白する。

 

やがて名人会の後、鶴次郎は鶴八に、芸の不満をぶつけ、怒った鶴八は鶴次郎の元を再び去ってしまう。佐平は鶴次郎と居酒屋に行き鶴次郎の本心を聞く。せっかく堅気になり、幸せになった鶴八を芸の道に戻すのは気が引けてしまい、鶴八を不幸な境遇に戻さないために芝居を打ったと鶴次郎は真相を話す。それを聞いた佐平は、今夜はとことん飲もうと酒を頼んで映画は終わる。

 

唐突なほどのエンディングですが、心から慕う女の幸せだけを望む一人の男の成長した姿に胸が熱くなってしまいます。長谷川一夫山田五十鈴の名演技もさることながら、巧みなカット割りで映像を紡いでいく成瀬巳喜男の演出も光る。落ち着いた画面の構図も素晴らしく、名編と呼べる一本だった。

 

 

怪獣総進撃

子供の頃に見た記憶がある一本。東宝特撮ファンの中で人気のムーンライトSY3号が活躍するまさにエンタメ怪獣映画。とにかく下手な理屈はそっちのけで見せ場の連続でクライマックスはあれよあれよとバトルを見せてくれます。今となっては特撮も稚拙だし、物語もリアリティに欠けますが、大人も子供も楽しめる娯楽映画という雰囲気に終始楽しい時間を過ごすことができました。監督は本多猪四郎

 

月に月面基地が作られ、小笠原諸島にはゴジラたちを集めた怪獣ランドが築かれている近未来。月で謎の電波を調査するために最新ロケットムーンライトSY3号が現地に向かう。そこで、キラーク星人に乗っ取られた月面基地の職員たちがムーンライトSY3号の乗組員に敵対してくる。その頃、怪獣ランドでは謎のガスが吹き出し、怪獣たちが解き放たれて世界の主要都市の攻撃を始める。慌てて地球に戻ったムーンライトSY3号だが、キラーク星人は、地球に近代都市を築いて共存すべく破壊を続けていた。

 

ムーンライトSY3号は、キラーク星人が低温に弱いことを発見し、怪獣たちを操っていた装置を破壊、ゴジラたちを日本に集結させてキラーク星人の富士山麓の基地を破壊しようと進める。そこへキラーク星人は宇宙怪獣キングギドラを呼び寄せてゴジラたちに向かわせるが、ゴジラたちの奮戦でキングギドラは倒される。続いてファイヤードラゴンという謎の怪物が現れる。苦戦するゴジラたちを援護すべくムーンライトSY3号がファイヤードラゴンの正体が機械の宇宙船だと突き止めて破壊する。ゴジラたちはキラーク星人の地下基地を発見して破壊、全てが終わって怪獣たちはまた怪獣ランドに戻って映画は終わる。

 

とにかく、ムーンライトSY3号がかっこよくて子供心をくすぐってくれるし、正義の味方になってしまったゴジラたちを応援する子供達の姿も垣間見てしまうほど微笑ましいエンタメ映画です。昭和の一時代と言えばそれまでですが、これが映画の本来の面白さではないかと思います。