くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「年少日記」「ぶぶ漬けどうどす」

「年少日記」

クオリティの高い良い映画なんですが、どこか自分に重なるように思えて、切なくて辛い作品でした。重なるといっても、自分の過去とは全く違うのですが、なぜこの話に引き込まれてしまうのだろうと思う。終盤までミスリードで進む展開は、やや技巧的なのですが、物語の裏に隠されたさまざまが不思議な感覚で見ている私たちに問いかけてくる。なかなかの映画だった。監督はニック・チェク。

 

校舎の階段を駆け上る少年、そして屋上に登り、端を超えて飛び降りる。しかし、しばらくすると、橋の外に一段段差があって少年はそこに立っていて立ち上がる。こうして映画は幕を開ける。高校教師のチェンが務める学校で、自殺を仄めかす遺書が見つかる。チェンやスクールカウンセラーが校長らと相談して対処を考える。その遺書に書かれていた文言が少年時代のチェンの日記に書かれたものと同じだったことから、チェンは少年時代を振り返る。

 

チェンは二人兄弟で、父は弁護士、母も優秀な両親のもとに育った。兄は成績も悪く、ピアノを習っても上達しない少年で、いつも父に殴られていた。弟は優秀で、両親の期待を一身に背負っていた。何をやっても出来の悪い兄は漫画が好きで、好きな作者の本を読んでは励まされ、優しいピアノのチャン先生も慕っていた。しかし、学校では落第してしまい、弟と同じ学年になってしまう。映画はこうして、高校教師になったチェンは兄の姿ではないかとミスリードして進む。

 

チェンはやがて成人して結婚するが、妻が妊娠したことが受け入れられず、結局離婚してしまった。複雑な両親のもとで育ったために、まともな家庭を持つのに自信がなかった。学校では、チェンは委員長の生徒とスクールカウンセラーと一緒に、遺書を書いた生徒の特定を進めていたが、一向に進まない。しかも委員長の女生徒にも表に出せない悩みがあることを知り、チェンは自分が何も見えていなかったことを反省する。さらに、クラスの男子生徒が、クラスメートを階段から突き落とした事件などもあり、突き落とした男子生徒は耳が不自由だということを委員長から知って、教師としての自分の不甲斐なさを感じる。

 

そんな時、父が倒れたと秘書から連絡が入る。チェンが駆けつけるが、秘書の話では、もう長くないのだという。チェンは、幼い日の思い出を回想する。チェンの兄は十歳で自殺をしていた。冒頭の飛び降りるシーンは現実に起こったことだった。兄の寂しさを知らなかったチェンは、今更ながらに切なくなっていた。実は、兄は、成績を上げようと日記を書いていた。その日記は兄が死んだ後チェンが書き続けていた。高校教師になったのは兄だと見ていたが実は弟だった。弟は、兄が自殺した後、父の期待を受けることを拒否し、母も離婚して家を出てしまった。

 

父の葬儀に、チェンの元妻が弔問に訪れる。彼女にチェンは日記を手渡す。そこには、幼い日、兄の悲しみを受け止められなかった自分の情けなさ、複雑な家庭で育ってしまった自分の不甲斐なさが綴られていた。元妻は、声優の仕事場でその日記を読んで涙する。チェンは校舎の屋上へ登り、兄が自殺した現場に花をたむける。横を見ると、幼い日の兄の姿があり映画は終わる。

 

なんとも切ない映画です。しかも、自分とは全く違う人生を歩んだ主人公の話なのに、なぜか共感してしまう部分を感じるのは、作りの深さによるものでしょうか。いい映画ですが、辛かった。

 

 

ぶぶ漬けどうどす」

たわいないお気楽なコメディという一本。特に何がどうという面倒なことを考えずに、世間一般が考える京都のあれこれを揶揄い半分に面白おかしく作った映画という作品でした。監督は冨永昌敬

 

京都の老舗の扇子屋の十四代目の息子真理央の嫁になったまどかが、自身の赤裸々漫画のネタのために夫の実家の京都にやってくるところから映画は幕を開ける。姑の環に案内されて老舗の女将達に引き合わされ、それをネタに漫画にしていく。たまたま店番をしている時に、テレビ局の取材を受けてしまい、仕入れたばかりの京都の話題をしゃべったところ、女将達にお叱りを受けてしまう。

 

一方、東京から京都に来て不動産屋を営む上田がまどかの店を売る話を環と決めたと勝手に言い出したので、まどかは、環に真相を聞いて、漫画で上田を揶揄しながら猛反撃を行う。その頃、真理央の浮気が発覚し、まどかは東京のマンションを出て環のところに住むようになる。こうして上田とまどかのすったもんだが本編となって大騒ぎ。そして、上田をやりこめてしまったまどかは、ぶぶ漬けを食べながら環にこれからのことを話して映画は終わる。

 

これということもない一本で、終始、ニヤニヤと楽しめる物語ですが、それ以上でも以下でもないという映画。こういうのもまた楽しいかなという映画だった。