「見える子ちゃん」
ゆるゆるの脚本と適当な演出、下手くそな演技、三拍子揃った仕上がりかと最後まで見たら、クライマックスだけが大どんでん返しに全てが明らかになる作りという構成がちょっと面白かった。出来のいい映画とはいえないものの、こういう作りもありだろうと思えるから不思議。演技ができない俳優陣を揃えたならそれはそれでこう作ればいいと監督の職人芸が出た一本だった。監督は中村義洋。
群馬県のとある高校、四谷みこは、親友のハナと楽しく過ごしていた。学園祭出し物を決めるべく、クラス委員長のハナとみこが採決をとっていたが、なぜかみこには見えない手が見えてしまい数を間違えてしまう。気を取り直してその場を取り繕ったものの、ある日、親戚の葬儀に出た後登校してきたハナの肩に霊のような手を見つける。みこは道端の少年の霊や、そのあたりにいる様々な霊が見えるようになるが、それを、生徒会長の権藤や副会長のユリアに気付かれる。みこは、そんな霊を無視すればいいのではと実行する。
みこはハナの除霊をするべく、通りかかった神社にハナを誘い入れると、ハナに取り憑いた霊の除霊に成功する。学園祭の出し物が決まらない中、担任の荒井先生は出産のため入院、後任に、覇気のない遠野先生が赴任してくる。しかし遠野先生の背後には不気味な霊がみこには見えていた。ユリアも権藤も、その霊の危険さを指摘するが、間も無くしてハナが異常なくらいの食欲を見せるようになりみこは不審に思う。
学園祭の演目はお化け屋敷に決まり準備が進む中、ハナの様子はどんどんおかしくなる、そして、その原因は遠野先生についている何者かだと権藤たちは考える。学園祭が翌日に迫った日、とうとうハナは意識をなくして入院してしまう。たまたま同じ病院に荒井先生も入院していて、荒井先生と話をしたみこは、遠野先生に取り憑いているのは、遠野先生の亡き母であることがわかる。そして同じ霊がハナにも影響を及ぼしていた。
遠野先生を除霊するべく、みこは遠野先生を学園祭の材料買い出しに連れ出して、ハナの除霊に成功した神社に連れていく事にするが、神社に神様がいるのは陽のあるうちだと権藤に言われ、みこはあせる。そしてなんとか神社まで遠野を連れ出したみこだが、駆けつけたユリアによって遠野は神社の鳥居をくぐり、霊と分離される。必死で取り憑こうとする霊に、遠野先生は無視を装い、神社の神様の霊力もあり、ついに除霊に成功、ハナも元気になって、学園祭は開催される。
お化け屋敷の出来栄えを見るためにハナ、みこ、ユリアたちが出し物の中に入るが、突然、権藤が現れる。しかし、それはみこにしか見えなかった。権藤はこの学校に取り憑いた地縛霊だった。かつて、この学校が土砂崩れに遭い、不慮の死を迎えた霊たちがこの学校に沢山いたのだ。学園祭では、男子の霊があちこちに現れていた。実はこの高校は今は女子校だった。みこはユリアに、自分の父は心筋梗塞で亡くなり、父の霊を見るようになって、霊が見えるようになったのだと告白する。ここまで、普通にみこの父親と会話する場面が出てきたが全てみこにしか見えない父の霊だった。こうして映画は終わる。
原作があるので、基本的な展開は崩していないのだろうが、いかにも安直に作った感満載の映画。それをそれなりに仕上げた感じの一本だった。