くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「JUNK WORLD」「アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓」

「JUNK WORLD」

「JUNK HEAD」の続編、というより1042年前、つまり前段の物語。今回は時間軸を繰り返すという展開になるので、後半はひたすら同じシーンとズレて変化した場面を繰り返していくので混乱というより面白い。しかもゴニョゴニョ日本語字幕版ということで、ギャグだらけのセリフを楽しみながら、ツッコミ満載のコミカルなシーンを満喫できた。スケールは前作以上にアップし、造形も豪華になって、映像を楽しむこともでき、エンタメ芸術作品という仕上がりになった気がします。監督は堀貴秀

 

荒れ果てた荒野に一体のロボットロビンが打ち捨てられている場面から映画は幕を開ける。そこの謎の生物が集まってきて、それに反応したロボットが光る。

 

はるか昔、地上の生息域減少により地下開発を進め、労働力として人工生命体マリガンを創造したが、マリガンは自らのクローンを増やして人類に反乱、そして停戦協定から230年後、人類は地上にとどまり、地下世界はマリガンが支配していた。そんな説明の後、地下世界に異変が起こったということで、人間とマリガンの共同調査チームが組まれることになり、女性隊長トリスとその腹心ロビン率いる人間チームとオリジナルマリガンであるダンテ率いるマリガンチームはこの日、中の島という要塞で会合を開き、地下都市カープバールを目指そうと計画していた。

 

ところが、そこをギュラ教の集団に襲撃される。なんとか脱出してトリス、ロビン、ダンテらはポッドに乗ってカープバールを目指すが、いく先々でトラブルが起こる。その途上、ロビンは破壊され、自己修復能力で新たな体を手に入れる。

 

やがて次元の歪みにたどり着いた一行だが、歪みの中から現れたのは、新たな姿になったロビン達だった。ロビン達は、時空の向こうで神とし、冒頭の場面から何百年もかけて新しい世界を構築、トリス達を救うべく戻ってきたのだが、それがまた異なった世界を作り出したことから、ロビンは繰り返し次元を超え、歴史の修正作業に臨むことになる。

 

映画は、次元の歪みにたどり着くまでの様々なエピソードを後半で何度も繰り返しては少しづつ修正変化させ、やがて、「JUNK  HEAD」につながるまでを描いていく。様々なエピソードがギャグになり浪花節になり、漫談風に縦横無尽に変化していく様がとにかく楽しくて、そのまま、前作まで繋がって、さらにその先、第三部完結編を匂わせて映画は終わる。

 

独特の世界観とストーリーテリングで見せるマペットアニメの楽しさは前作を上回り、ますますバージョンアップしていく様を堪能できます。面白かった。

 

 

アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓」

終盤、畳みかけが中途半端で、メリハリがないのは勿体無いが、映画は結構面白かった。普段触れることが少ないアルメリアという旧ソ連領の地域を描いた民族映画でもある背景がすごく勉強にもなったし、ヒューマンドラマとしても胸に響くストーリーだったし、檻房から鉄格子越しに向かいのアパートを覗く中でのドラマ作りも映画的に面白かった。いい映画でした。監督はマイケル・グールジャン。

 

オスマン帝国に支配される1915年アルメリア、一人の少年チャーリーは母に荷物のトランクに隠されていた。鍵穴から覗いているとアルメリア人が迫害される様子が見えていた。チャーリーが隠れたトランクは荷台に結ばれて何処かへ運ばれていき映画は幕を開ける。そして時が流れ1945年、ソ連の指導者スターリンは自国のアルメリア地域に世界に散らばったアルメリア人を優遇して移住させる。そんな中の一人にチャーリーもいた。

 

ソ連の高官ドミトリーの妻ソナは、夫がアルメリア人を蔑んでいるのを非難しながら、息子ヴァーニャと車の中にいた。ソナの義理の弟はアルメリア人だった。ドミトリーが仕事で車を離れ、ソナとヴァーニャは車の外に出て待っていたが、食料の配給などの人ごみの中、目を離した隙にヴァーニャがその人混みに紛れて逸れてしまう。ヴァーニャを助けたのは、今はアメリカ人となったアリメリア人のチャーリーだった。ソナはチャーリーを食事に誘うが、ドミトリーはいい顔をしなかった。

 

レストランで、カタコトのロシア語で話すチャーリーに、仕事や住まいも手配してやるなどと適当に返事したドミトリーだったが、そんな夫にソナは不満の顔を見せる。ところが、夜、チャーリーはソ連の役人がやってきて、留置所に収監されてしまう。カタコトのロシア語で受け答えしたチャーリーだが、アメリカのスパイという罪名でそのまま留置所に送られる。全てドミトリーの手配で、少し懲らしめて釈放してやればいいと指示したのだが、回線のつながりが悪く、留置所の所長は、収監後シベリア送りにするものと勘違いしてしまう。留置所に塀にはコウノトリが巣を作っていた。

 

荒れた部屋に留置されたチャーリーだったが、わけもわからず過ごし始める。ところが突然地震が襲い、留置所の塀が崩れてしまう。チャーリーは咄嗟に落ちてきたコウノトリ卵を抱き抱える。この塀の修理のため囚人達はシベリア行きを免れ、毎日作業するようになる。チャーリーは、自室の窓から鉄格子越しに、向かいのアパートが見えるようになったのに気がつく。そのアパートの部屋には画家らしい男とその妻が暮らしていた。しかも、その男が描いた絵からチャーリーと同じアルメリア人だとわかる。さらに、その男は留置所の監視塔にいるティグランという男だった。ソ連から絵を描くことを禁じられていたティグランだったが、隠れて絵を描いていた。さらにティグランは、ソナの義理の弟だった。

 

偶然の出会いに、チャーリーは窓によじ登れるように部屋の配置を変え、夜毎、向かいのアパートのティグランらと食事をするようになる。配膳係のハコップとも親しくなり、それなりに快適に過ごし始めるが、ある夜、ティグランとその妻が喧嘩をし、妻が家を出て行ってしまう。どうやらティグランの絵が原因のようだった。ティグランの絵の道具を置いた部屋の鍵を妻は天使の花瓶の隅にかけていたが、ティグランは気が付かない。鍵のありかを知るチャーリーはなんとか伝えようと、ハコップを通じて手紙を渡してみるが、うまくいかず、庭の散歩の時に自らの体で地面に絵を描いてティグランに伝える。

 

以来、ティグランもチャーリーを認めるようになって、ハコップを通じて心を通じ合うようになっていく。その頃、ソナはドミトリーに、頼んでいたチャーリーの行方を聞く機会があったが、ドミトリーは適当に返事するだけだった。ドミトリーが留置所を視察することがあり、留置所の外で待っていたソナは、たまたま入り口の見張り窓が開いて中を見た時にチャーリーの姿を見つけてしまう。ソナは慌てて留置所内に入り、チャーリーに声をかけ、かつてレストランでチャーリーが口ずさんだ歌はアルメリア地方の民謡で、歌詞に歌われた言葉はコウノトリのことだと教える。

 

ソナはさらにドミトリーにチャーリーのことを詰め寄る。しかし、チャーリーの自白文書はモスクワに送られていて、ドミトリーにはどうしようもなかった。しかも、留置所の壁も完成し、囚人達はシベリアに送られることになっていた。しかし、所長の機転で、留置所の屋根を直すことになり、シベリア送りは見送られることになる。面白くないドミトリーは副所長に、厳しく運営するようにと釘を刺す、その日、いつもの拷問に呼ばれたチャーリーの前にティグランが呼ばれた。

 

もはや友人として親しくなっていたティグランだったが、上官の命令でチャーリーを痛めつけざるを得なくなる。その日、妻と苦悩するティグランの姿を留置所の窓からチャーリーは見ていた。しばらくして、ティグランは引っ越してしまう。やがてスターリンが亡くなり、ソナが勧めていたチャーリー釈放の手続きも整う。最後にドミトリーに署名をもらい、チャーリーは晴れて釈放される。

 

チャーリーは、ティグランのアパートを借り、そのクローゼットに、かつてティグランが書いた絵を見つける。それを壁に貼り、年老いたチャーリーがアメリア人達を招待してパーティを開いている場面で映画は幕を閉じる。

 

もう少しソナとアルメリア人の背景、それに関わるロシア人のドミトリーの姿を掘り下げて描けばもっと深い話になったかもしれませんが、一人の囚人と監視員との空間を隔てたヒューマンドラマは、心温まるものがあり、とっても素敵な時間を過ごすことができた。さらに、アルメリア人という自分の知識に乏しい部分の世界を垣間見れた事も良かった。色々な意味で勉強にもなる見応えのある一本でした。