くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「カーテンコールの灯」「長崎の歌は忘れじ」

「カーテンコールの灯」

話が整理できていないのか、語り方が悪いのか、はたまた演出が悪いのか、ロミオとジュリエットの舞台劇と現実を重ね合わせた展開ながらどっちも中途半端で、現実部分の背景が最後まで見えてこない上に、舞台劇との交錯もはっきりしないまま、無理やり感動へ持っていったような仕上がりの映画だった。監督はケリー・オサリバン、アレックス・トンプソン。

 

主人公ダンが工事現場で働いている場面から映画は幕を開ける。交通整理の指示を無視して走り去るスポーツカーに辟易としながらも、さらに一人の女が、騒音がうるさいとクレームしてくる。ダンの息子ブライアンは、昨年、恋人と自殺したらしく、ブライアンの恋人クリスティンは助かったことから、ダンは相手の家族を訴訟しようとしている。娘のデイジーは学校で問題ばかり起こし、ダンと妻のシャロンはかなり参っている。

 

この日、失踪するスポーツカーの運転手につかみかかってしまったダンは、動画をネットにアップされ仕事を失ってしまう。そこに声をかけたのが、先日騒音のクレームを言った婦人。彼女はリタと言って、元女優で、近くでアマチュア劇団に出演していて、ダンを舞台に招いたのだった。乗り気でなかったダンだが、演出家やリタと意気投合する中、ロミオとジュリエットのロミオ役をすることになる。

 

ジュリエット役のリタとキスシーンをしているのをシャロンとデイジーに見つかり、デイジーが、父親の浮気現場を抑えようとダンの後をつけて、劇団の稽古場に足を踏み入れる。そして、元々女優を目指していたデイジーもダンらの舞台に出演することになる。以降、デイジーとダンの心が通じ合い、シャロンとの仲も取り戻したダンだったが、ブライアンへの思いは断ち切れず、クリスティンら家族への辛辣な視線を緩めることはできなかった。

 

やがてロミオとジュリエットの舞台が開演、ダンは演じ切ってシャロンらを感動させる。リタに見送られてダン達が帰る場面で映画は終わる。

 

なんともチグハグな作りの作品で、ダンが起こしている訴訟も独りよがりであり、クリスティン側の家族の描写がほとんどなく、リタがダンを劇団に招き入れる動機も弱い。やや荒すぎる作りの一本でした。

 

 

「長崎の歌は忘れじ」

若尾文子映画祭で、若尾文子が無名時代の出演作を見た。この時代で二時間を超えるというのは大作なのですが、自分の知識にない一本、まさにレア作品でした。物語は、長崎の原爆による悲劇、戦禍のドラマを中心に語られるものの、どこか筋の通った展開でもなく、と言って涙頂戴でもない仕上がり、かつ大スターが勢揃いといういわくありげな映画だった。監督は田坂具隆

 

一機の飛行機がアメリカから長崎を目指している。中に乗るのは作曲家のヘンリーで、終戦直後、日本人捕虜の一人から託された未完の楽譜を頼りに日本を訪れたのである。長崎の知人の神父の元を訪ねたヘンリーは、ホテルに勤務している桃子と知り合う。桃子と姉綾子は、戦禍で家を亡くし、陶芸家の叔父の家で暮らしていた。綾子は、原爆のために盲目となっていて、敵国だったアメリカ人を嫌い、ヘンリーのことも受け入れなかった。綾子は夫道信が帰還してくるのを心の頼りにして日々暮らしていた。

 

陶芸のバイヤーでもあるヘンリーは桃子に通訳を頼み、未完の楽曲完成のために日本を散策したいと申し出、桃子もそれを引き受ける。やがて、ヘンリーが帰国する日が近づくが、ホテルで未完の曲をヘンリーがピアノで弾いた際、それが綾子の夫道信のものだと確信する。当時、捕虜となった日本人は、捕虜になったことを恥じて適当な名前を告げることをしていたため、ヘンリーが聞いた捕虜の名前が道信ではなかったというのも納得が行った。しかし、道信の死を綾子に伝えるのは桃子は気が引け、そのままになっていた。

 

ところが、ヘンリーが帰ってしばらくしたクリスマスの日、教会の使いのシスターが綾子の元を訪れ、ヘンリーが曲を完成したこと、それが道信の曲であること、道信は亡くなっている事を話してしまう。落胆した綾子は一時行方をくらましてしまうが、ヘンリーは、完成した曲を綾子の琴で奏でてもらうため東京へ招待しようとしていた。そして教会で完成した曲を弾いていると、綾子が気がつき、ようやく綾子はヘンリーの好意を知る。そして曲の中に夫が生きていることを確信し、東京でヘンリーの指揮のもと琴を奏でる綾子の姿で映画は幕を閉じる。

 

これと言って秀でたものもない作品ですが、今回特集では、松葉杖の少女として登場する若尾文子の姿が見どころとなっています。非常にレアな一本という面白さを楽しめる映画でした。

 

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