くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「桐島です」「この夏の星を見る」

「桐島です」

こういう人生もあると思うと単純にヒューマンドラマとして胸に迫る何かがある映画だった。とは言え、実話である。しかも連続企業爆破テロ事件を起こしたメンバーの一人の話であり、決して許容できるものでもない。しかも、作る側のさまざまな偏見的なものの見方がちらほら見え隠れする脚本は正直虫唾が走るのも事実である。しかし、完全にフィクションの映像作品としてみれば、一人の男の生き様を見るドラマだと思うと、どこか懐かしいものを感じてしまった。監督は高橋伴明

 

1974年、三菱重工爆破事件のニュース映像から映画は幕を開ける。反日武装戦線狼の活動に共鳴した大学生の桐島聡は、友人の宇賀神らと反日武装戦線の活動にのめり込んでいく。そして自らの組織をさそりと名付けて、狼などの組織と行動を共にするようになるが、爆破事件に関わって多くの犠牲者を出してしまったことへの深い葛藤に苛まれるようになる。間も無くして宇賀神が逮捕され、自らは内田と名乗って、地方の工務店で働くようになる。

 

時が流れ、生活は落ち着いて来たものの、三菱重工爆破の映像が毎朝頭をよぎり目覚め、部屋にはいつでも逃げられるように靴を常備していた。ライブハウスでキーナという歌手が歌う「時代遅れ」の曲に感化されて、お互いに相思相愛になるものの、キーナからの告白に答えられなかった。さらに時は流れ、年を重ね体調の不具合が目立つようになって来た桐島は、ある朝、職場に着くと倒れてしまい救急搬送される。意識のない桐島だったが、看護師の呼びかけに一時意識を取り戻し「自分は反日武装戦線の桐島だ」と言葉を発する。遥か彼方の国でテロ行為を続ける一人の女性が桐島が亡くなったという連絡をもらい映画は幕を閉じる。

 

ちらほら見え隠れする、監督の本音のセリフの数々が少し鼻につくものの、こういう人生を送った一人の男がいた事、そんな時代があった事、そんな様々なノスタルジーを感じ入りながら、自分のこれまでを振り返っている瞬間にどこか寂しさを感じてしまう作品でした。

 

 

「この夏の星を見る」

素直に良かった。コロナ禍で様々な制約が課され、マイナスイメージばかりが表になったままだったが、コロナ禍があった事で見えてくるものがあったのかもしれないと前向きになってしまう素敵な物語だった。辻村深月の原作がいいのだろう。ほとんど、役者たちはマスクをしたままになっているが、マスクの奥に隠された笑顔、涙、切なさ、寂しさ、希望、そんな様々をちらちらと見せる演出も良かった。群像劇の形式をとっているので、個別の物語に焦点が絞られているわけではないけれど、あの数年間も無駄じゃなかったと思ってしまいました。いい映画でした。監督は山元環。

 

ISS国際宇宙ステーションのクルーとなった女性飛行士花井うみかの公演を見る一人の少女の姿から映画は幕を開ける。ラジオ番組に投稿した彼女のハガキが読まれて電話が来る。ラジオのゲストから月の距離、なぜ月が自分を追いかけてくるのかの説明を聞いた渓本亜紗は天文に興味を持つ。やがて茨城県立砂浦第三高校に入った亜紗は天文部に入り、凛久と出会う。凛久は、天文部で望遠鏡を作りたいと考えていた。

 

長崎、泉水高校、つばき旅館を経営する母の元で暮らす円華がいた。吹奏楽部に所属していたが、コロナ禍で、無用な差別を受けるようになってしまう。そんな時、亜紗らのスターキャッチコンテストの話を天文台の館長から聞かされる。

 

東京、ひばりの森中学に通う真空は新入生の中の唯一の男子生徒ですが、希望していたサッカー部は廃部になり目標もなく不登校気味になっていく。そんな時、天音が属する理科部に誘われ、亜紗らの天文部が企画していたスターキャッチコンテストのチラシを見つけて興味を持つ。

 

亜紗の呼びかけで、オンラインでスターキャッチコンテストをすることになり、長崎、東京、茨城で第一回オンライスターキャッチコンテストに向けての練習が始まる。そして、迎えた第一回のコンテストが大盛況。そんな時、亜紗の同級生凛久が家庭の事情で引っ越すことを亜紗は知る。亜紗は凛久が引っ越す前にもう一度スターキャッチコンテストをやりたいと考え、ISSを捉える企画を提案する。それは全国の中高に広がり、12月1日の開催日、一瞬を捉えるために全国で夜空を眺める中高生たちが集まる。一時は雲で見えないかと思われた亜紗たちだったが、一瞬の雲の切れ間に亜紗はISSをキャッチすることに成功する。

 

やがて、それぞれの場所のそれぞれの青春ストーリーが語られる中、未来の希望に向かっていく姿で映画は幕を閉じる。

 

それぞれの場所で展開する甘酸っぱいような青春の一ページを交えながら、コロナ禍がなければ決して出会わなかった中高生たちのひと時の物語は、見ている私たちに希望を思い切り投げかけてくる。この爽やかすぎる純粋な姿がとにかくとっても素敵で透明感に溢れているから良い。映像作品としてのクオリティ云々よりも、まずこの物語を素直に受け取って欲しくなる。そんな映画だった。