「私たちが光と想うすべて」
インド映画初のカンヌ映画祭グランプリ作品。静かに淡々と進むストーリーで、背後に流れる静かな曲、古い風習から次第に変化していくインドの女性の姿が、じわじわと画面から伝わってくる感覚が美しい幻想的な演出で描かれる様はとっても良い。とは言っても、物語が平坦なので、時々眠気に襲われてしまいました。監督はパヤル・カパーリヤー。
大都市ムンバイで看護師として働くプラバの姿から映画は幕を開ける。この街に住めば、故郷に戻ることなど考えられないというナレーションが被る。プラバは親が決めた相手と結婚したが夫はドイツに行ったきり最近は連絡もなかった。同僚で年下のルームメイトアヌは陽気な性格でイスラム教徒の恋人シアーズがいた。物語は二人の姿を淡々と描きながら進んでいく。
病院の食堂に勤めるパルヴァディが自宅の立ち退きを迫られ海辺の村に帰ることになる。プラバとアヌはパルヴァディについて彼女の村まで送ることになるが、神秘的な森や洞窟のあるその村は別世界のようだった。アヌを追ってきたシアーズはアヌとアバンチュールを楽しむ。そんな時、浜辺に一人の男が倒れているという騒ぎでプラバが駆けつけ蘇生処置を行う。その男は記憶を失っていて、周囲の人たちはプラバと夫婦だと誤解してしまう。
プラバの蘇生処置で一命を取り留めた男は、自分についてきてほしいとプラバに頼むが、プラバは拒否する。これはプラバが幻想の中に生きる夫との別れの決断を意味したようです。アヌはシアーズをパルヴァディの家族に引き合わせる。三人は屋外で夕食を囲み、カメラはゆっくり引いて映画は終わる。
静かな作品で、その映像から醸し出される三人の女性の再生の物語に感銘を受ける作りになっています。しかし、ラストで明確なメッセージを描かず、余韻を残す手法で終えた手法は、それまでの淡々とした流れの延長で画面に惹きつける効果をもたらし、映画を品の良いものにした気がします。古い風習から新しい世界に変化していくインドの姿の一シーンと言える一本でした。
「MELT メルト」
切ないラスト、あまりに残酷なエンディングに、救いが無いのはちょっと辛すぎました。被害者が報われないままに終えるストーリー構成もさることながら、過去と現代を交錯させる組み立てが少々しつこくてテンポが悪いために、終盤の、ストーリーの流れの真相が見えてくるまでが非常にだらけて見えてしまう。もう少しキレ良く処理すればもっと面白くできた気もします。監督はフィーラ・バーテン。
一人の女性エヴァが机の上の陶器らしい物を下に落とす場面から映画は幕を開ける。彼女は特に友達もいなくて両親とも絶縁状態、この日、同居していた妹テスが部屋を出ていくことになり、エヴァはいよいよ孤独になろうとしていた。そんな時、幼馴染のティムの兄で、不慮の死を遂げたヤンの追悼イベントをするという招待メールが届く。同じく幼馴染のラウレンスとその母マリーの店も開店という祝い事を兼ねているらしい。
エヴァは、ある決心をし、大きな氷の塊を作り車に乗せて故郷の村へと向かう。エヴァの今の姿と重なって、幼い頃、ティムやラウレンスと親しかったエヴァはいつも一緒に遊んでいた。ティムの兄ヤンは、事故で亡くなり、ティムの両親とティムの仲も溝ができていた。エヴァの母はエヴァを嫌い、妹のテスを可愛がることが多く、エヴァは家の中でも孤独だったが、ラウレンスの母マリーはそんなエヴァを可愛がってくれたのでエヴァはマリーを慕っていた。
ティムもラウレンスも女の子に興味を持つ年頃で、謎解きゲームをして、正解すればお金をあげるが、間違えるたびに服を脱ぐという遊びをエヴァと一緒にするようになっていた。エヴァが出すなぞなぞは、首を吊った男の足元に水溜りがあったが、男はどうやって首を吊ったのかという物だった。エヴァは密かにティムを恋していたがティムはエヴァを女の子と思っていなかった。しかし、エヴァはティムに好かれようとゲームの手伝いをしていた。しかし、ふとしたことで喧嘩をしたエヴァは、ティムらに相手にされなくなり、隣に越してきたエルザに近づいていく。
エルザは父に買ってもらった馬を大切にしていた。エヴァは、時々その馬に、そのあたりに生えている草を食べさせたりして可愛がっていた。しかし、エヴァが与えていた草は馬にとって毒になる物で、しばらくして馬は死んでしまうが、エヴァはエルザに本当のことを話せなかった。可愛がっていた馬が死んで落ち込んでいるエルザに、エヴァはティムらとやっているゲームに誘う。そしてあらかじめ答えを教えておく。
ゲームが始まり、程よいところで正解を言ったエルザに、ティム達は疑い、エヴァがあらかじめ教えていたのではないかとエヴァを責める。エルザは真実か嘘かで、ティムに真実を迫り、ティムはついエルザの馬に毒草を食べさせたのはエヴァだと漏らしてしまう。怒ったエルザは、エヴァに服を脱ぐように命令し、さらにラウレンスらにエヴァをレイプするように迫る。逃げ場を失ったラウレンスらは、エヴァを押さえつけてレイプしてしまう。
ことが済んで、エバはマリーに助けを求めにいくが、マリーはラウレンスがしたとわかりながらも自分の息子を庇って、エヴァを追い返してしまう。エヴァは汚れた服と下着をゴミ箱に捨てる。時は現代、ヤンの追悼式にきたエヴァは、ラウレンスとマリーの店の厨房に持ってきた氷を置き、ストーブを傍にセットして天井からロープを吊るす。そして追悼式の場に行ったエヴァはティムやラウレンス、マリーらのいる前で、過去のことをかいつまんで語り、その時汚れた下着を撒いてその場を後にして、ラウレンスの店の厨房に行き、自ら首にロープをかけて氷が溶けるのを待つ姿で映画は終わる。
被害者が被害者のままで終わるという後味の悪いエンディングで、しかもその後の余韻も想像できないのはなんとも辛いです。時間を前後させ、次第に真相を明らかにしていくサスペンス仕立ての手法はわかりますが、今一つキレがなくて、終盤、間延びしてしつこく感じてしまった。
