「コルチャック先生」
噂通りの名作だった。このレベルの完成度だと、素人には具体的にどこがどうと感想は書けないけれど、一見淡々と流れていくようで、次第に追い詰められていく世相のきびしさが、主人公コルチャック先生やその周辺の人々との関わりの中で伝わって来る様が圧巻である。そして衝撃のラストシーンがまるでファンタジーのような映像表現で描いてしまう皮肉さに涙が止まりません。戦争の悲劇以上に、人間ドラマの中での葛藤とうねりに、深い深い何者かを感じさせて感動させてやまない素晴らしい映画だった。監督はアンジェイ・ワイダ。
ラジオ放送で熱弁を振るうコルチャック先生の姿から映画は幕を開ける。しかし、間も無く放送局の所長から降板を申し渡される。コルチャック先生の過激な言動が世間の反感を生んでいるというのである。しかし、ドイツ人のポーランド侵攻に伴うポーランド人達のユダヤ人への辛辣な視線が顕著になってきたというのが正しかった。
コルチャック先生は、二百人以上のユダヤ人孤児の施設を預かり、日々子供達の世話に勤しんでいたが、間も無くしてドイツ軍がワルシャワに侵攻、ユダヤ人らはゲットーと呼ばれる居住区に強制移住させられることになる。ユダヤ人自治区のメンバーらとの交渉の中、孤児院の姿は残されたものの、食糧事情は厳しく、コルチャック先生は日々奔走する毎日だった。
ゲットー内で母と二人きりで盗みをしながら暮らすシロトは、コルチャック先生に認められて、孤児院へ移ることになるが、母と一緒というわけにはいかなかった。盗みを繰り返すシロトだが孤児院内の最年長者ヨゼフと親しくなる。ヨゼフはポーランド人のエヴァと恋をしていて、時々ゲットーを抜け出して会っていたが、エヴァが周囲の目もあるからと、とうとう会えなくなってしまう。
ドイツ軍のユダヤ人への圧力は次第に強まり、集団移住させられるという噂が流れ始める。一方、ゲットー内でも密輸などで富を得るユダヤ人達も現れ、コルチャック先生は彼らの金に頼らざるを得なくなっていく。さらに、かつて世話をした孤児のシュルツが事業に成功してコルチャック先生の元に現れ、コルチャック先生だけならスイスへ逃がせるパスポートを手に入れられると言うが、コルチャック先生は拒否する。
ある時、コルチャック先生の孤児院にドイツ兵が現れ、孤児たちは汽車で強制移住させられることになる。シュルツの手筈で、厳しい追い立ては免れたものの、コルチャック先生は、堂々とユダヤ人の旗を掲げて駅に向かう。外で食糧調達などで走り回っていたヨゼフとシロトは、孤児院に戻り誰もいない事に気づいて、慌ててユダヤ人自治区のリーダーの自宅に電話をするが、リーダーもまた職務の中命を絶たれていた。
駅に着いたコルチャック先生らは汽車に乗り込む。暗転ののち、コルチャック先生らが乗った汽車の車両だけが切り離され、中から子供達が大草原の中に飛び出し、霧の中に走り去る。同時に、コルチャック先生と子供達はガス室で亡くなったと言うテロップの後映画は終わる。
物語の組み立て、雑踏の中を右往左往するコルチャック先生の姿をカメラが追う絵作り、子供達のあどけないクローズアップ、彼らを支える人々のさりげない姿がコルチャック先生の人柄を浮かび上がらせる演出、そしてラストの衝撃。これが映画作りだと思う。しかも、伝えるメッセージは寒気がするほどに鋭く研ぎ澄まされている。まさに名作と言える一本。見て損はない傑作だった。
「星つなぎのエリオ」
舞台を宇宙に変えて、ディズニーらしい友情と愛のヒューマンドラマ。前半がやや雑なので、なかなか掴まれていかないため若干退屈ですが、中盤から後半に入ると、得意のドラマ展開が広がってきて、次第にのめり込んでいきます。でも全体の仕上がりは中の下というのはちょっと残念。ラストはいいのでずが、そこに至るまでがやや弱い作品でした。監督はマデリーン・シャラフィアン、ドミー・シー、エイドリアン・モリーナ。
両親を事故で亡くし、ひとりぼっちになったエリオは、叔母で宇宙飛行士のオルガに引き取られたが、心を開いてくれなかった。オルガの職場についていったエリオはそこで宇宙に興味を持ち、広い宇宙に存在する宇宙人と交信し、自分を連れていって欲しいと行動を開始する。その中で、アマチュア無線の愛好家らと知り合う。ある時、オルガの勤務する基地で、宇宙人からの通信を聞いたという出来事に遭遇したエリオは、それが自分が発した信号への返事だと、その通信に返信を送る。
オルガは、エリオはなかなか打ち解けず、騒動ばかり起こすため、しばらくキャンプに参加させることにする。エリオは、そこでいじめに遭いかけるが、そこにエリオの通信を聞いた星の代表が集うコミュニバースからの招待が届き、エリオはコミュニバースにやってくる。その場の嘘で地球の代表だとエリオは説明して、コミュニバースのメンバーになれるかの審査に参加する。
その頃、グライゴンという宇宙人もコミュニバースのメンバーへの参加を望んで審査を受けていたが、戦闘的な態度ゆえ参加を拒否される。怒ったグライゴンはコミュニバースを破壊すると豪語して自身の星へ帰っていく。コミュニバースのメンバーはグライゴンを宥めてくれればメンバーに加えるとエリオに提案、エリオも勢いでその提案に乗ってグライゴンのところへ宇宙船で乗り込む。地球へはエリオのクローンがオルガの元へ送られる。
しかし、エリオは逆にグライゴンに捉えられてしまう。牢屋を脱出しようとして奇妙な穴に堕ちたエリオは、そこでグロードンと言う芋虫のような宇宙人と出会う。グロードンはグライゴンの息子で、グライゴンが身につけている鎧を着ることが嫌だったが、話せなかった。エリオは、グロードンと一緒に宇宙船でコミュニバースにやってくるが、息子を取られたと思ったグライゴンはコミュニバースにやってきて、息子の鎧装着の儀式をコミュニバースでやることでコミュニバースを攻めることをやめると約束する。
エリオ達はグロードンのクローンを作ってグライゴンを騙そうとするが、すんでのところでバレてしまう。一方、グロードンはエリオの宇宙船で地球へ向かってしまう。グライゴンは怒ってコミュニバースのメンバーを拉致し、エリオも地球代表ではないことがバレた上に、グロードンの居場所を見つけられ、取り返すべく地球へ向かう。
地球では、エイリアンの乗った宇宙船ということでエリオの宇宙船はNASAに監視されていたが、エリオのクローンの活躍もあり、エリオとオルガは、エリオの宇宙船に乗り込み、グロードンと共にコミュニバースを目指す。途中デブリの嵐に遭遇して、宇宙船が破壊されそうになるが、アマチュア無線の愛好家達の協力で無事脱出、ハイパースペースでコミュニバースに辿り着く。しかし、グロードンは瀕死の状態だった。それを見たグライゴンは鎧を脱ぎ、息子を繭で包んで回復させてやる。
晴れてエリオはコミュニバースのメンバーとして迎えられたが、オルガこそが自分の家だと気づいたエリオはグロードンらに別れを告げて地球に戻る。地球で、エリオはグロードンと交信を続ける姿で映画は終わる。
終盤三分の一がスピーディで面白いのですが、それまでがやや雑で間延びしてしまうのが勿体無い。ディズニーピクサーらしい面白さはあるのですが、まあ普通の出来栄えの一本でした。
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