「マルティネス」
話の本筋が見えない映画だった。冒頭の階下で孤独死した女性の話とマルティネス自身の職場での人間ドラマが噛み合っていなくて、結局ラストは、前に向かって歩き出したエンディングですが、ではここまでの様々なエピソードはなんだったのかという脚本で、掴めない作品でした。監督はロレーナ・パディージャ。
定年前のマルティネスがベッドで目を覚ます。騒がしいラジオの音が階下から聞こえて来る。職場へ向かう途中で、階下のドアをノックするも返事がなくてそのまま職場へ。そこで、同期の女性コンチタから、後任のパブロを紹介される。マルティネスは解雇されるらしい。週明けに人事担当に会ったマルティネスは、契約延長の申請をするが、パブロを教育するように言われる。何事も要領のいいパブロが気に入らないマルティネスだったが、人事との関係をいい感じにするために受けることにする。
ところが、帰宅してみると階下のアマリアが孤独死していたことがわかる。さらに翌朝、家主から、アマリアからマルティネスへのプレゼントがあったと届けられる。マルティネスは、そのプレゼントを見て、捨てられるように積まれていたアマリアの荷物を自室に取り込み、アマリアの日記帳を元に、生活を変え始める。
会社では、マルティネスの態度が変化したのをコンチタも気づき始める。実はコンチタはマルティネスに好意を持っていた。そんなマルティネスにパブロは、恋人ができたと勘違いし、さらにその恋人はアマリアという名前だと聞き出してしまう。パブロはアマリアのためのプレゼントを買うべきだと、綺麗な下着を買いに行かせ、さらに近く誕生日になるコンチタにも香水を買わせる。
この日、コンチタの誕生パーティだったが。会社では誰も集まってくれずコンチタは寂しい思いをしていた。そこへパブロとマルティネスがやってきて三人で盛り上がることになる。コンチタはマルティネスからのプレゼントを喜ぶが、マルティネスは明日はアマリアとの大事な日だからとそそくさと帰る。帰ったらマルティネスはアマリアと食事をし、ベッドにアマリアにプレゼントする下着を置いて横に添い寝する。
翌日、人事に行ったマルティネスは、自身の契約が更新されたこと、マルティネスが評価を悪く言ったためにパブロが辞職することになるのを知らされる。パブロは、故郷に帰ると言って、住所をマルティネスに渡す。家に帰ったマルティネスは、取り込んでいたアマリアの荷物を外に出し、仕事も辞めてパブロの故郷へ向かう。そしてパブロと会い、これから旅をして回ることを告げて映画は終わる。
既に亡くなっているアマリアとのエピソードや、コンチタとのドラマ、さらに自分の評価でクビになったパブロへの思いなどが全てすっ飛んでいて、どれを中心という構成が見えない。ストーリーテリングが非常に悪い映画で、面白くできそうなのに、全部潰してしまった気がする作品でした。
「ニ・ニ六事件 脱出」
これはめちゃくちゃに面白かった。ニュー東映というレアな会社のサスペンスですが、ニ・ニ六事件を背後から描くという着想の面白さを、余計な背後の描写を排除して、ハラハラドキドキのみで仕上げていく脚本が最高に面白い。まだまだ駆け出しの高倉健らも、今となっては貴重な姿を楽しめるし、本当に掘り出し物の一本でした。監督は小林恒夫。
昭和十一年二月二十五日、総理官邸で選挙結果などを喜ぶ総理や、その影武者的な男たちが祝杯をあげている場面から映画は幕を開ける。陸軍の青年将校たちの動向を心配する秘書官速水らは、いざという時の準備に警官の配備などを計画していた。そして翌朝、栗林中尉率いる青年将校たちは首相官邸を襲撃、首相に酷似した義弟の杉尾大佐を首相と思い射殺してしまう。
当然、栗林らは気が付かず、杉尾大佐を首相として安置し、事の成就を喜んでいた。しかし、岡部首相本人は女中部屋に匿われていた。それを知った速水らは、首相を救出するべく検討するも妙案が出ない。切羽詰まる中、首相は亡くなったとして、勅使差遣が決まり、翌日正午までに首相が無事であることを天皇陛下に伝えなけらばいけないが、手段が見つからなかった。
憲兵隊の小宮曹長は、岡部首相の存命を知り、分隊長に進言するも受け入れられず、側近の部下二人のみで救出する計画を進める。速水の協力を仰いで、杉尾大佐の弔問客を十名仕立てて、その中で岡部首相を救出することにする。しかも、ギリギリまで亡くなったのは岡部首相だと栗林中尉らに思わせておかなければならない。緊迫感が走る中、約30分の決行時間を決めて、無事、岡部首相を救出に成功、女中や小宮らも脱出に成功し、勅使差遣直前に岡部首相は天皇陛下に謁見し、無事を報告、二日後、栗林中尉らは鎮圧されたとナレーションが出て映画は終わる。
途中、一度も緩む場面がなく、全編緊張感がみなぎる映画で、しかも、史実とは言え、しっかりと描きこまれたストーリー展開も見事で、本当に面白い娯楽映画でした。まだまだ見ていない傑作が山のようにあるのを実感しました。
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