「8番出口」
大ヒットゲームのなぜか映画実写版。あれほどシンプルなゲームをシュールな不条理劇に仕上げた川村元気の才能に拍手したい佳作だった。一人の青年の心の迷宮という形でゲーム展開を利用し、そこに絡んでくる謎の男と少年をゲームのキャラクターとして利用する作りは絶品。面白かったし、考えさせられる意味深さもあって、大人の鑑賞に耐えうる逸品でした。監督は川村元気。
ボレロが流れる中、真っ黄色なタイトルバックから映画は幕を開ける。そして地下鉄内、一人の青年がスマホを見ている。激しく泣く赤ん坊を抱く女性に罵声を浴びせる若者の姿を横目に、青年は列車を降りる。そこへ、別れることを決めた恋人から電話が入り、妊娠がわかったという。どうする?という問いかけに答えに窮している青年は電波が届かない通路の迷宮に足を踏み入れていく。ここからはゲーム8番出口の展開がしばらく続く。
異変に気づいたら引き返すこと、異変がなければ進むこと、8番出口から外に出ること。その原則をひたすら繰り返すのが、迷う男という最初のエピソード。そして、喘息に苦しんで瀕死の状態の青年は一人の少年を見つける。続いて、何度も通り過ぎる謎の男として次のエピソードへつながる。その男は、一人の少年と8番出口を目指しているが、なかなか外に出られない。途中すれ違う女子高生風の女の子に誘惑されたりする。ようやく8番出口が見えたと思った男だが、少年は何かの異変に気がついて、一緒に出ていこうとしないので、男は少年を突き飛ばして出口へ向かう。
青年が少年に出会う場面に戻り、青年は少年と出口を目指す。間一髪で少年が異変を発見して青年を助けたりする。背後に赤ん坊の鳴き声が繰り返される。少年は、母親らしい女性に出会うが、その女性も異変である。少年は貝殻のお守りを青年に手渡す。そして、間も無く8番出口かと思われた矢先、突然、濁流が二人を飲み込む。青年は必死で少年を助け、気を失うが、海辺で青年は恋人と少年と戯れている。少年は海岸で拾った貝殻を青年に贈る。やがて気がつくと8番出口が見える。少年は青年と恋人との間に生まれる子供らしいかの描写の後、青年はようやく迷宮を抜け出し、再び列車に乗り込むと、泣く赤ん坊を抱く女性に罵声を浴びせる若者がいる。青年が今度はその方へ向かうカットで映画は終わる。
ゲームの面白さを逆手にとってサスペンスフルに展開する前半から、恋人に妊娠を告げられて悩む青年の心理ドラマが交錯して、次第に、シュールな中に、迷宮に迷い込む人間ドラマ、そして、いのちへの賛歌が見え隠れするクライマックスへと、なかなか書き込まれた脚本に頭が下がりました。カメラワークや演出もさりげなくゲームの映像以上に映画的で面白い。なかなかの作品だった気がします。
