「遠い山なみの光」
非常にクオリティの高いなかなかの佳作。第二次大戦後、時代の変化に対応していかざるを得ない人たちの姿を、長崎を舞台に、母と子の物語として、素晴らしい映像センスで描き上げた作品でした。監督は石川慶。
戦後の長崎の記録写真が映され、戦後がようやく落ち着いた頃の長崎、被曝を逃れた悦子は長崎を外れた片田舎で団地に住みながら夫二郎と暮らしている場面から映画は幕を開ける。夫を仕事に送り出した悦子は妊娠していた。そんな二人の家に二郎の父緒方がやってくる。校長を勤めたこともある緒方だが、今は退職して悠々自適な生活を送っていた。
時は移り1982年、イギリス、ソファで悦子が目を覚ます。彼女は時々長崎時代知り合った佐知子とその娘の夢を見ていた。次女のニキはロンドンに住んで物書きをしているが、母悦子の長崎時代の姿を本にするべくやってきたが、母は今の家を売る準備をしているという。悦子には、亡くなった長女景子がいた。ニキは、どうやら不倫関係の男性がいるらしく、相手はなかなか離婚してもらえず、一方ニキは妊娠したらしい。ニキは、母悦子から過去の物語をまとめ始める。映画は、イギリスでの悦子と朝鮮戦争の頃の長崎の悦子の物語を交錯させて展開する。
長崎、悦子はある日、河原で男の子にいじめられていた少女万里子と知り合い、河原のバラック建ての小屋に住むその子の母佐知子という女性と知り合う。万里子と佐知子は長崎で被爆していた。フランクというアメリカ人の恋人がいるらしく、近くアメリカに移譲するのだと繰り返し言っていた。万里子は、悦子には心を開き、河原で見つけた妊娠していた猫を可愛がりやがて子猫が生まれて飼うようになる。
悦子と二郎の家にやってきた緒方は、毎日、長崎見物をしたり、家でゆっくりしながら過ごしていたが、二郎はあまり好ましく思っていなかった。悦子は長崎見物にいくという緒方に付き添っていくことにする。緒方はかつての赴任していた学校へ行き、そこで一人の教え子に迫っていた。その教え子が書いたかつての緒方ら戦時中の教師たちの物語に抗議したが、時代は変化しているのだと諭される。間も無くして緒方は帰っていく。
イギリス、ニキは母から長崎時代の話を書き進んでいたが、悦子の話に出てくる万里子が夜店で手に入れた木箱や、佐知子が使っていたらしい西洋風の食器などを荷造りの中から見つけて、悦子が語っていた佐知子の物語は全て悦子本人の物語だと気がつく。そして万里子というのは、幼い頃の景子だった。全てを知り、母悦子の物語もまとまり、ロンドンへ帰ることにする。こうして映画は終わっていく。
長崎時代の若い悦子は妊娠しているのにいつまでもお腹が大きくならないし、夫二郎の言葉に、これからは女性も変わっていかなければいけないと応えたり、時代に流れ、人々の心の変化を背景に映しながら、戦後を生きた一人の女性のドラマを描いていく。長崎時代をやや色調を抑えたカラー映像にし、イギリス時代を鮮やかなカラー映像にした絵作りの美しさ、ガラスや鏡を使ったシュールな演出など、映像作品としてもクオリティが高く、俳優陣も充実、ドラマも面白く、なかなかの作品でした。
「カラダ探し THE LAST NIGHT」
橋本環奈が出ているというだけで見に行った前作の続編。前作同様、それほど出来の良い映画ではないけれど、退屈はしなかったから良いとしましょう、という一本でした。監督は羽住英一郎。
前作のフラッシュバックの映像から、タイトル。無事カラダ探しを終えた高広と明日香は、失われた記憶の手がかりのネクタイピンで、思い出すところから映画は幕を開ける。高広と明日香は、過去を振り返りながら会話していたが、突然、高広の目の前で明日香が消えてしまう。カラダ探しの呪いの連鎖だった。
そして3年後、高校生の陸人ら五人は遊園地への遠足に来ていたが、突然真夜中に遊園地で目を覚ます。そして目の前の現れた赤い少女に惨殺される。しかし、目を覚ますと同じ日の朝だった。カラダ探しの都市伝説だと思っていたが、遊園地内にある棺、その中の体の型を見て、カラダ探しの呪いにかけられたことを知る。そこに、明日香を探す高広が現れる。六人は赤い少女の恐怖と闘いながらカラダ探しを始める。しかし、最後の一部を揃える前に時間が来て、二人の高校生が行方不明になってしまう。
一方、呪いの世界に閉じ込められた明日香は、カラダ探しの呪いを生み出す赤いオブジェを壊し、呪いの連鎖を断ち切ろうとする。そして、自らの体が血だらけになりながらも赤いオブジェを破壊するが、明日香の体は呪いに取り込まれ始める。
その頃、高広は、過去が変わり四人の連続殺人事件に変わったことでその真犯人に対峙、壊された赤いオブジェの一部に血を加えることで後一夜カラダ探しができるようになる。
最後の体は休止中のジェットコースターの席の中と予想し、最上段に停まったままのコースターをおろそうとするが、そこに赤い少女が現れ、次々と陸人らを殺していく。最後の最後に残ったのは高広で、苦闘の末赤い少女を倒して、最後の体を棺に収める。
何事もなく陸人ら五人の高校生は現実に戻っていた。もちろん、記憶はなく、なぜか、遊園地に集まっていた。高広は、ネクタイピンを握り教会にいた。そこへ、明日香が戻ってくる。二人は抱き合い、映画は終わる。エンドクレジットの後、新たな殺人事件と、赤い少女に襲われる警官の姿の映像で映画は終わる。
サスペンスの部分が非常に甘くて、ホラーテイストも適当で工夫もなく、役者陣もあまり面白みのない演技を繰り返している。適当に作った感満載のホラー映画という作品でした。
「九龍ジェネリックロマンス」
SF仕立てのファンタジックラブストーリーという一本。コミック原作らしいほのかな空気感が、九龍城という異世界と、ピュアな恋物語を融合させて、良い感じの実写版に仕上がっていました。監督は池田千尋。
九龍城に住む鯨井令子が、朝、ベッドで目覚める。なぜかピアスがあるが、耳にピアスの穴がなく不審に思う。そしてベランダでスイカを食べながらタバコを吸う場面から映画は幕を開ける。空にはキューブ状の物体が浮かび、製薬会社社長蛇沼がテレビで、ジェネテラと呼ばれる、人間の記憶を記録しておく装置と、それのバックアップでクローン人間に記憶を戻して永遠の命を与えるシステムを説明している。令子は、まるでロボットのように挨拶しながら勤め先の不動産会社へ向かう。一方、不動産会社の先輩社員工藤は、この日も遅刻ギリギリで会社に飛び込んでくる。
工藤と令子は、良いコンビでふざけ合いながらも毎日を過ごすが、いまひとつ距離は縮まない。工藤には恋人がいるらしく、ふと寂しい思いになる令子だった。ある時、物件の塗装で二人で作業をしていた際、工藤に抱きしめられ令子はキスされる。しかし、すぐに突き飛ばされて謝られる。令子は、靴屋を始めた楊明と親しくなる。さらに様々な店でバイトをする小黒らとも楽しい日々を過ごしていた。
ある日、令子は工藤と立ち寄った金魚茶屋という喫茶店で、マスタータオ・グエンから、工藤の恋人だと勘違いされる。令子は、工藤の上着から落ちた写真に載っていた工藤のフィアンセと瓜二つだということを知る。さらに、蛇沼の部下が、小黒を九龍城の外に出てみないかと誘う場面に遭遇、小黒が九龍城の外に出た途端、消えてしまう現場を目撃してしまう。令子もまた九龍城を出ることができないと知る。
自分が何者か疑心暗鬼になる一方、工藤もまた苦しんでいた。工藤の元恋人は亡くなっていた。その悲しみから抜け出せず、恋人と瓜二つの令子に次第に心が揺れていくのを止められずにいた。そして、ある雨の夜、工藤は令子の家を訪ね一夜を共にする。蛇沼らは、最近ジェネテラに負荷がかかり危険な状態だと心配していた。蛇沼もまた令子を失いたくはなかった。工藤と令子は、九龍城を出る決心をする。蛇沼らが止めるのも聞かず、工藤らは九龍城の外へ飛び出す。瞬間、ジェネテラは崩壊し九龍城も消えてしまう。そして工藤が目を離した隙に令子もまた消えてしまった。こうして一旦終わりエンドクレジット。
季節は冬、今や普通の不動産屋に勤める工藤は、九龍城の頃に通った食堂を見つけて立ち寄る。そこでレモンチキン定食を食べていると、前に令子がやってくる。そして、かつてのようにふざけ合って映画は終わる。
細かい設定や説明が飛ばされているのでややわかりにくい所もあり一級品の出来栄えとは言えないまでも、切ないラブストーリーとして十分楽しめる作品でした。クライマックス、令子が飼っていた金魚がアニメになって泳ぎ去って行ったり、工藤が恋人の思い出で泣き崩れると雨が降ったり、壁を叩くと地震になったりと、映像表現も面白く、小品ながら面白い映画だった。


