くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「ふつうの子ども」「バード ここから羽ばたく」「LOVE」

「ふつうの子ども」

相当な傑作かもしれない。この映画を大人目線で見てはいけない。もっと頭を柔軟にして、すっかり忘れてしまった子ども時代の自分の心を取り戻してみるとこの映画の素敵さがはっきりわかります。環境問題なんていう題材が取り上げられるので、大人社会の縮図を風刺したとか面倒な解釈をしたらこの映画の素晴らしさはおそらくわからない。もっと素直に、純粋にこの映画の子供達の純粋さに浸って欲しくなる。そんな映画でした。監督は呉美保。

 

一人の男の子唯士の顔のアップ、どうやらエレベーターに乗っているらしく、一階に降りた彼はそのまま虫籠を持って飛び出す。次々と彼の友達が合流して駆け出して草むらの中で虫を探し出して映画は幕を開ける。登校時間に間に合わないので、途中で引き上げて学校へ。授業で、様々な生徒たちの作文が出際良いテンポで紹介され、子どもたちの日常が描かれる。

 

何かにつけて邪魔をしに来る陽斗に教室内はにぎやかそのもの。次の授業の作文で、みんなたわいない内容を披露するが、心愛という一人の少女が立板に水を流すように環境問題について語るので、みんなあっけに取られる。一方、心愛のことが内心好きな唯士は、彼女に好かれようと、彼女が通う図書館に行き、環境問題の本を持って近づいていく。ところがここに唯士のライバルが現れる。元気な陽斗である。

 

どこか親しげな陽斗と心愛の姿を見る唯士は、なんとか入り込もうと彼らに近づく。心愛は、環境問題を生み出したのは大人だから行動しないといけないと言い出す。陽斗が、近くの空家を見つけてきたので、三人はそこに集まって環境問題を訴えるビラづくりを始める。車に乗るな、ゴミを出すななどとあちこちに貼り始め、心愛らはさらにエスカレートして、二酸化炭素を出す牛の肉を売る肉屋にロケット花火を打ち込んだりする。さらに、近くの牛舎の柵を壊して牛を逃し大騒ぎを起こすが、エスカレートしていく行動に陽斗は次第に怖くなって来る。唯士も母親に話せず困り始める。

 

ある朝、三人は担任の先生に呼び出される。陽斗が何もかも話し、心愛と唯士も呼び出されたのだ。母親も呼ばれて、先生の前で聞かれる。泣くばかりの陽斗。唯士は、心愛が好きだったので行動に加わったと白状する。そして、先生や母親を交えて先方へ謝りに行くことになる。しかし、唯士はその集団から遅れて道端の虫に目を向ける。そこに心愛が近づいてくる。母に呼ばれた唯士に、心愛は口だけで何かを伝えて暗転、映画は終わる。果たしてなんと言ったのか。

 

子供達にとっては何事もないふつうのことなのだが、大人たちはそれをさまざまな解釈で大人の出来事に焼き直そうとする。そんな様々がある意味ユーモラスで、大人の危惧を全く気にせずふつうに振る舞う子供達の姿が微笑ましいし、何か忘れかけているものを思い出させてくれる気がします。主演の三人以外の子どもたちもとっても魅力的で、さりげないカットのそれぞれがとにかく素敵。素直に見ればとにかく透明感に溢れる映画だったと思います。良かった。

 

 

「バード ここから羽ばたく」

いい映画だった。クソみたいな主人公の父親が、最後に人間味を見せる作劇のうまさ、人間か鳥かわからないファンタジックな作り、スマホ画面と16ミリの荒い画面の美しさ、そんなそれぞれがうまくマッチして、とっても温かい作品に仕上がっていました。なかなかの佳作。監督はアンドレア・アーノルド。

 

フェンス越しに鳥を撮っている一人の黒人の少女ベイリー、傍に鴎が降りてきたので見入っていると、スクーター、と言ってもスケートボードのようなタイプのものに乗った全身刺青の男がやって来る。彼はベイリーの父親バグだった。ベイリーを後ろに乗せて家に向かって疾走する。こうして映画は幕を開ける。

 

家に帰ると、バグはベイリーに今週末結婚するからドレスを買ったという。相手はケイリーという女性だった。結婚資金は、訳のわからないカエルを持っていて、分泌液がドラック成分があって儲かるのだと言っている。ベイリーは罵声を浴びせて、兄ハンターの家に行く。ハンターは、ゴーストら友達と、暴力を振るう男たちを懲らしめる自警団を作っていた。ベイリーも入りたいというが断られる。

 

そんなベイリーの前に、バードと名乗る青年が現れる。タイラーハウスに行きたいから場所を教えてほしいという。タイラーハウスは、以前ベイリーが住んでいたアパートだった。バードは元そこに住んでいて両親に会いに行ったのだが今は別人がいた。ベイリーは、母親でバグの元妻ペイトンの家に行く。そこにはベイリーの妹三人とペイトンの愛人スケートがいたが、スケートはDVだった。

 

ハンターの恋人ムーンは、両家の娘らしかったが、ハンターとの間に子供が出来たらしいことをベイリーはたまたま知る。しかしムーンの両親に反対され、ハンターは会えなくなり、ベイリーに、手紙をことづける。それは、一緒にスコットランドに逃げようというものだった。ベイリーのいく先々に常にバードが付き添い、何かにつけて寄り添っていた。

 

ベイリーは、妹たちを助けるため、ハンターの知り合いの自警団ゴーストらに頼んでスケートを懲らしめてもらうことにする。そして行動の日、ベイリーはバードと一緒に妹三人を海に連れて行った。海辺の家に、バードの父親フレッドが住んでいたが、バードが訪ねて行っても、最初は断られる。しかし、しばらくして、フレッドはバードのところへやって来る。前妻との間に男の子が生まれたが、死んだと聞いているという。果たしてバードは実際に存在しているのか。

 

海から帰ったベイリー達だが、ペイトンの家に戻ると、しばらくしてスケートが戻ってきて暴れ始める。バードのことも殴り倒すが、バードは突然巨大な鳥に変身してスケートを捕まえて飛び去る。スケートに蹴られて死んだと思われた飼い犬のデイヴも生き返って来る。やがて、バグの結婚式の朝、ベイリーはバグに、ハンターがスコットランドへ旅立ってしまうからとスクーターを借りにいくが、バグはベイリーを乗せて駅へ向かう。ハンターは駅にいたが、ムーンは来なかったと落ち込んでいた。そんなハンターをバグは慰め、三人で結婚式場へ向かう。

 

やがてにぎやかに式が行われ、間も無くしてバードもやってきて優しくベイリーを抱きしめ、別れを言って去っていく。ケイリーが花を投げて結婚式は幸せに進み映画は終わる。

 

あれよあれよと、うらぶれた展開で、どんどん貶められていくのかと思われたが、いきなり暖かい人間味あふれるドラマに変化していく終盤が実に素晴らしい。バードというファンタジックな設定が物語に色合いを添えて、とっても素敵な仕上がりに見せてくれます。いい映画を見た感じになれる一本でした。

 

 

「LOVE」

ノルウェーオスロを舞台に描く三部作の二作目。映画のクオリティがどうかはともかく、気持ちの悪い映画だった。ノルウェーという国柄、国民の感性というか考え方の違いについていけない嫌悪感を感じてしまう作品でした。監督ダーグ・ヨハン・ハウゲルード。

 

泌尿器科の医師マリアンヌが前立腺がんの告知をしている場面から映画は幕を開ける。直後、看護師のトールから、説明が不十分だと指摘される。マリアンヌの友人ハイディは、この日役所のイベントのプレゼンをしていたが、聞いていたメンバーから、偏った考えが入り過ぎているのではないかと指摘される。

 

マリアンヌはハイディからオーレという男性を紹介される。しかしオーレはバツイチで、かつ前妻は隣に住んでいるということで、マリアンヌは引いてしまう。しかし、マリアンヌはオーレと何度か逢瀬を重ねるが、ある日の帰り道、マッチングアプリで出会った男性とゆきずりのSEXをする。しかも相手は既婚者で、自身のSEXへの考えを延々と語られる。

 

一方、トールは、マッチングアプリで、一人の男性とフェリーで出会う。彼の名はビョルンと言った。トールはゲイだった。その日は言葉を交わしただけだったが、ビョルンは、トールの勤める病院にやって来る。彼もまた前立腺がんだった。トールは、手術後のビョルンを訪ね、何か手伝うことはないかと提案、ビョルンが退院した後、ビョルンの家で、買い物などをサポートする。ビョルンは、HIVの情報から臆病になり恋愛から遠のいている自分がいると告白する。トールはさりげなくビョルンの隣に添い寝してやる。

 

マリアンヌがオーレと一夜を過ごした朝、マリアンヌが帰ろうとすると、オーレの娘が外で待っていた。マリアンヌに遠慮して中に入れなかったのを知ったマリアンヌは非常な罪悪感に苛まれる。その帰り、オーレの前妻と出会い、しばらく言葉を交わす。そして、今度、三人で会う事にする。ハイディが企画したイベントは現実味を帯び、庁舎の屋上で準備が進められていた。マリアンヌやトールもその場にいた。カメラがゆっくりと俯瞰で引いていって映画は終わっていく。

 

とにかく、平気で他人と体を合わせる感覚があまりに自分の感覚と離れ過ぎていて、後半は嫌悪感ばかりが出始めた。国柄といえば仕方ないし、映画のクオリティはそれなりにあるので、完全に拒否してしまう作品ではないけれど、自分の好みではなかった。