くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「ブラックドッグ」「テイク・ミー・サムウェア・ナイス」

「ブラックドッグ」

あえて大筋の物語を描くのではなくて、広角レンズと引の構図で横長の広大なシーンを淡々と語っていくつくりが実にいい。しかも、小さなシーンの数々が映画的に素晴らしく、一人の若者と犬の物語なのだが、とっても味のある仕上がりになっている。北京オリンピック直前の中国の片田舎の舞台設定と皆既日食なども迫る中の切り取られた時間の一瞬が映像としてまとまって、見終わって、これが映像作品の極みと言えるほどの仕上がりを堪能できました。監督はグアン・フー。

 

ゴビ砂漠のそばの荒野、一台のバスが彼方から走ってくる、突然右手から野犬の大群が駆け降りてくるので、バスはそれを避けようとして横転してしまう。乗客が這い出てきて、その中に物語の主人公ランも現れる。警察が駆けつけてバスごと引っ張って目的の街へ着く。ランはこの街でかつてスターだったが、フー家の甥が興業の金を盗んで逃げたので追い詰めた挙句崖から落ちて甥を殺したことになり刑に服していた。仮釈放でこの地に戻ってくると、父は動物園の世話で家を離れて暮らしていて隣家のラクダという老人に家の鍵をもらう。

 

北京オリンピックを間も無くに控え、この街も再開発で取り壊しが決まっていたが、野犬が放置されていて、しかも一匹の黒犬は狂犬病らしく、町から駆除するように要請されている。仮釈放ということもあり、街で相応の活動に参加する方が良いと知人の警官からも言われランは野犬を捕獲するパトロール隊の仕事に参加する。そんな中、たまたまこの街に来た時に見かけた黒犬を捕獲することになる。しかし、犬を捕獲する事に消極的なランに、パトロール隊のリーダーは運送班に配置換えする。そこであの黒犬を移送する事に。折しもゴビ砂漠に強風が吹き荒れ、ランの車は横転、黒犬と一時避難する事になる。

 

ランと犬は救出されたが、ランはその黒犬との間に絆が出来始めていた。そして黒犬を引き取りたいと申し出る。しかしランは黒犬に噛まれていたので、狂犬病かどうか確認するため数日隔離される。結局、犬もランも無事で、そのまま放免される。ランを恨むフー家の男たちは何かにつけランに絡んでくる。そしてある時ランを拉致するがランが目を覚ますと黒犬は見当たらなかった。フー家の父親らは毒蛇を養育していたが、毒蛇に噛まれてしまい助けを求めていた。ランは、フー家の父親を捨て身で助けてやる。

 

黒犬はドッグレースのところにいるらしいと聞き、ランはそこで黒犬を見つけるが、事故にあって内臓を損傷していて余命わずかだと知る。ランは黒犬を連れ帰るが、しばらくして黒犬の伴侶らしい雌犬がやってくる。黒犬は死んでしまうが、その雌犬が子供を産む。ランはその子犬をリュックに入れ、黒犬を埋葬した後バイクで何処かへ去って映画は終わる。

 

これという大きな物語は展開せず、淡々とランと黒犬のドラマが描かれるのですが、ランが街にやってきて初めて黒犬と出会う時、ランが立小便した後に黒犬が小便をしたり、ランがバイクで街の外へ行く壊れた橋を飛び越えようとする場面や、動物園の動物を全て逃す事になる中、一匹いた虎がゆっくり街を闊歩するシーン、黒犬を助け出したランの前に野犬の群れが現れるが、瀕死に黒犬が顔を出して静かに通り抜けるシーン、などなど、小さなシーンの数々が映画的な絵作りで見事に描かれている。しかもブルーグレイの色彩に変調した画面も美しく、非常に優れた作品に仕上がっている映画でした。

 

 

「テイク・ミー・サムウェア・ナイス」

オープニングはちょっと面白かったので、後を楽しみに見ていたのですが、どんどんその場限りの展開になって、しかも行き着く先が見えないままに唐突なエンディングにあっけに取られる映画だった。一体何を描こうとしたのかわからない一本でした。監督はエナ・センディヤレビッチ。

 

揺れるカーテンのシーンに続いて一人の女性アルマが服を選んでいる。ボスニアに住む父親が入院したというので、オランダから会いに行く事になったのだが、別居している母親は行く気がなくてアルマが一人行く事になった。ボスニアには従兄弟のエミルがいるから頼って行けと言われてアルマは単身ボスニアに向かう。

 

ボスニアについたもののエミルは無愛想で何の手助けもしてくれない。エミルの友人らしいデニスだけがアルマを手助けしてくれるが、下心しか見えない。仕方なくアルマは一人でバスに乗って父の入院している病院を目指すが、途中、乗り遅れてトランクごとバスが行ってしまう。仕方なくヒッチハイクをしたら、女性の車に拾われてホテルへ。そこへエミルたちが駆けつけたが、アルマは拒否し、知り合った男性と病院を目指すが、途中で追いかけてきたエミルたちに拉致される。

 

トランクを引き取ったものの、アルマのトランクではなく、中にはドラッグらしいものさえ入っていた。病院に着いたが父はすでに死んでいて、三人は遺体を引き取り、埋葬する。トランクに入っていたドラッグを処分して金を手にし、三人は海岸へ向かう。デニスとアルマが二人でいると、チンピラに絡まれてデニスはリンチされ瀕死の状態になる。そんなデニスにアルマがまたがってSEXし、行為の後アルマは海に入って股間を洗って暗転、映画は終わる。

 

で、どういう映画だったのかわからないまま、即興で撮って行ったかの展開のままエンディングに唖然としてしまう作品だった。即興の面白さを狙ったのか、オープニングの後は、これといって工夫された映像もなく、どんどん平凡になってしまうのが残念な作品だった。