「新幹線大爆破」
1975年の傑作サスペンスのリメイク版というかネットフリックス版の配信映画。シンプルにめちゃくちゃ面白かった。もちろん、配役といい展開といいスケール的には映画的というより配信向きの映像になっているように思えなくもないですが、元々の展開の面白さを今風に焼き直して、あざといながら、今時のドラマを盛り込んで徹底的にエンタメに仕上げた手腕は拍手ものでした。特に、終盤三分の一が抜群に良い。面白かった。監督は樋口真嗣。
青森発の東北新幹線が今まさに東京に向けて出発しようとしている場面から映画は幕を開ける。車両見学の生徒に一通りの説明の後この日も業務につく車掌の高市は後輩の藤井とはやぶさ60号の列車に乗り込む。世界屈指の運行システムを預かるのは笠置室長らだった。列車は定刻でいつものように出発するが、間も無くして司令室に一本の電話が入る。新幹線に爆弾を仕掛けた。その証拠に、別の貨物車両を爆破する。新幹線は100キロを下回ると自動的に爆発する。というものだった。その予告通り、貨物車両が爆破される。そして爆弾解除に必要な金を1000億円と要求してくる。司令室では、早速政府へ連絡する。こうして、疾走する新幹線、乗務員、乗客を含めて犯人との丁々発止の攻防戦が始まる。
ユーチューバーの等々力、ママ活をしていたと騒がれた国会議員の加賀、高校生らを引率する市川先生、観光業を営むも先日事故を起こし、犠牲者を出した社長の後藤などが乗り込む中、それぞれの人間関係がネットによって爆発していき、いかにして乗客を助けるかという必死の対応を高市らが進めていく。等々力は自分のサイトで1000億円の寄付を募り始めるが、後藤が乗っていると知ったユーザーらが反感を持ったりする。
司令室は、途中で後部車両を切り離し、救援車両と連結し、その車両に乗客の大半を移動させる作戦を実行、成功するが、前部車両に9名の乗員乗客が取り残されたまま疾走することになる。そしてついに犯人は姿を現す。犯人は9名残された中の女子高生小野寺柚月だった。彼女の体内のペースメーカーを止めるしか爆弾の起爆装置を止める方法がないという。
柚月は、1975年の新幹線爆破事件で英雄になった警察官の娘だったが、その父小野寺勉に殺された男(高倉健が演じた役)の息子が柚月の父を恨み柚月に協力して爆弾を作る手筈をしたのだった。実は柚月の父が射殺したと言いふらしていたが実は犯人は自爆して死んだのだった。そんな父を柚月は恨んでいたので新幹線に爆弾を仕掛けたのだ。かなり無理矢理感のある展開ではある。
残された9人だが、柚月の命を奪うということはしなかった。高市は、東京駅で東北新幹線と東海道新幹線を連結する奇策を思いつく。わずか5メートルを連結するべく国交相に許可を求める一方で、工事が開始される。しかし、すんでのところで国交相は許可を下さず、列車を急停車させて自爆させるという決定を下す。この辺りも無理矢理感だらけである。
ところが司令室では、最後の手段として、列車を脱線させて、巧みに車両を切り離して自爆させて、9人を救出するという一か八かの作戦を計画する。そして間一髪のチャンスに欠けた作戦は見事成功、9人は無事救出、柚月は刑事に搬送されて行って映画は終わる。
キャストのレベルや、絵作りは大スクリーン向きより明らかに配信向きの仕上がりではあるけれど、スクリーンで見ても十分楽しめるレベルだと思えるし、退屈しない娯楽作品としてなら商売になるレベルだと思う。かなりお話に無理矢理感はあるし、旧作とは比べ物にならない仕上がりではあるけれど、つなぎ程度にはなる一本だと思った。
「ワン・バトル・アフター・アナザー」
三時間近くあるのにあっという間のあれよあれよという展開に引き込まれて楽しんでしまう映画だった。とにかく単純な話、かつ荒唐無稽な中にユーモアを交えた展開が面白い。期待通りの一本だった。監督はポール・トーマス・アンダーソン。
メキシコとアメリカの国境付近、違法移民を留置している施設を観察する一人の女性ベルフィディアの姿から映画は幕を開ける。革命家フレンチ75を組織するボブとその妻ベルフィディアは、この日、移民達を救出するべく突入していく。その中でベルフィディアは警官の一人ロックジョーと出会う。何かにつけて夫ボブにSEXを迫る好きもののベルフィディアだが、ボブにとっては活動そのものが大切で、やや辟易としていた。やがてベリフィディアは妊娠し、ボブとの間に一人娘ウィラが生まれる。ボブは、子供も生まれたことで革命活動をやめることを提案するが、ベルフィディアは受け入れられず、ボブの元を去っていく。
ある時、ベルフィディアらは銀行を襲うが、そこで抵抗してきた警備員を殺してしまい逮捕されてしまう。逮捕したのはロックジョーだった。ベルフィディアの色香に引き込まれたロックジョーは司法取引をしてフレンチ75のメンバーを明かす代わりに、保護制度で逃してやると取引を持ちかける。ベルフィディアはそれに応じ、フレンチ75は壊滅状態となり、ボブも身を隠すことになる。ベルフィディアに惚れたロックジョーはプロポーズするべく保護されているベルフィディアを訪ねるが、ベルフィディアは行方をくらましてしまう。ロックジョーは、ベルフィディアを追い詰めてとうとう殺してしまう。
そして17年の時が流れる。今や、うらぶれた生活をするボブだったが、一人娘ウィラが命を狙われていることを知る。狙っているのはロックジョーだった。実はウィラはロックジョーとベルフィディアの子供で、黒人との間に子供を儲けたことは白人至上主義のロックジョーには汚点だった。そこでその証拠を抹殺しようとウィラを追っていた。この日、ウィラの高校ではダンスパーティだったが、ロックジョーの部下達が乗り込んでくる。その直前、デアンドラという女性がウィラを連れ出して、すんでのところでウィラを救出、隠れ家である修道院を目指す。
一方、ウィラが危ないと知ったボブもまた、ウィラ救出に向かうが、すっかり腕も鈍ってしまいなすすべもない。ウィラが通っていたカラテ道場のセンセイを頼ってウィラを救出するための計画を立てる。ボブは向かう途中、一度はロックジョーの部下に、暴動を起こしている市民の一人と間違われて捕まってしまうもセンセイの仲間に救出される。かつての革命家の仲間からウィラらが向かう場所を聞き出したボブはその修道院を目指す。その頃、ロックジョーが黒人との間に子供を儲けたことを知った白人至上主義のメンバーはロックジョー暗殺のスナイパーニックを派遣する。こうして、三つ巴、四つ巴の追撃戦が展開する。
ロックジョーはとうとうウィラが逃げ込んだ修道院を突き止めて駆けつけウィラを拉致、自分と親子関係があるかDNA鑑定で確定して、ウィラを抹殺するべく知り合いの暗殺者に託す。ボブはようやく修道院に辿り着いたが、すれ違いでウィラと会わなかった。一方ロックジョーを追う殺し屋ニックはロックジョーを追い詰め、銃で撃って車ごと崖下に落としてしまう。ウィラが持っている信号機を頼りにボブはウィラの居場所を探すが、その信号がロックジョーの車から発せられていたため、ロックジョーの事故現場にたどり着くも、ウィラはいないことを確認する。
その頃、ウィラはロックジョーが雇った殺し屋に拉致されていたが、殺し屋が改心してウィラを逃す。ウィラは車でその場を脱出するが、ロックジョーを殺したニックの車が後を追ってきた。ボブもまたその追撃戦に加わる。ウィラは起伏のある道を利用して巧みにニックに事故を起こさせて殺してしまう。
そこへ駆けつけたボブがやってきてウィラを保護する。ロックジョーは、まだ死んでいなかったが、白人至上主義メンバーへの参加が認められたと言われてあるオフィスをあてがわれるが、ロックジョーが中に入るとガスが出て、ロックジョーは暗殺されてしまう。ボブはウィラと自宅に戻り、母ベルフィディアがウィラに当てた手紙をウィラに渡す。平穏な生活に戻った二人だが、母の血を受け継ぐウィラは、この日も革命運動に向かうべくボブに挨拶して出かけて行って映画は幕を閉じる。
本当にシンプルそのもののストーリーで、中年になったボブがモタモタと逃げ回って捕まってしまったり、かつての革命運動メンバーに、ウィラの居場所を聞き出すために過去に決めた暗号を忘れて四苦八苦したり、ユーモアを交えた展開がとっても楽しい。有色人種と白人の確執というアメリカの分断を背景にしているとはいえ、細かい展開の雑さは目を瞑っても、とにかく面白い映画だった。
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