「ストロベリームーン余命半年の恋」
普通の映画という一本でしたが、目当ては當間あみだけなので、十分満足に楽しめました。いわゆる難病ものなので、展開も特に変わったところはないですが、岡田惠和の脚本は優れているけれど、演出が甘くて、せっかくのストーリー構成の面白さが生きていないし、脇役が弱いのでお話が膨らまないのは残念でした。監督は酒井麻衣。
醤油工場で働く大人になった日向の姿から映画は幕を開ける。実家の醤油工場の仕事をしてから、職場である小学校へ教師として向かう。学校では婦警になった幼馴染の麗が交通安全の教室をしている。麗の実家は唐揚げ屋で、この日も実家に戻っては、たまたまきている日向とたわいない会話をする。
そして物語は十三年前に戻る。この日、初めての小学校の教室で机に座る桜井萌を後ろから両親がビデオに撮っているが、突然、萌はその場に崩れる。萌は難病で学校へ行けなくなり、両親の愛情のもと、自宅で生活するようになるという細かいシーンが展開していく。
中学校になった萌は、友達が欲しいと言い、両親は近所の唐揚げ屋の娘麗に唐揚げの配達を頼む。麗は萌の部屋に入り、萌の可愛らしい服と自分の制服を交換したりしてすっかり親しくなる。以来二人は親友になる。萌は次の目標に高校へ行きたいと言い出す。そしてなんとか入学した萌は入学式の日、教室に行き、そこで、かつて病院の帰り見かけた一人の男子生徒日向を発見する。日向も、実家の仕事の後学校へ来たので遅刻だった。教室にやってきた日向に萌はいきなり告白する。
後日、体育館で日向に呼び出された萌に、日向は一旦付き合えないと断るが、萌は強引に迫り二人は付き合い始める。しかし、萌は麗に、自分が後半年しか生きられないことを告白する。あちこちデートを重ねた萌と日向だが、間も無く六月の萌の誕生日が迫ってくる。日向は萌に望みを聞き、萌はストロベリームーンを望月湖で見たいと言う。親に門限に帰ることを偽って萌と日向は望月湖に向かう。そこで、雲の隙間から出たストロベリームーンを見る。
湖の中で、日向は萌にキスしようとするが、すんでのところで萌は日向を引き離す。その日以来、萌は学校に来なくなり、日向も連絡がつかなくなる。日向は萌の家に行き両親に会うが、両親は萌の行き先を話さなかった。萌は入院していた。日向に会わないと言う萌に麗は、それは良くないと説得、一方両親も、日向の思いに逆らって日向に萌の居場所を教える。
麗が萌に説教していると、窓に小石が飛んでくる。窓を開けると、萌の病室の真下にひまわりが植えられていた。日向が友人らと準備したものだった。それから日向は萌の病室に来るようになる。ある夜、萌は日向に抱きしめて欲しいとせがみ、日向は萌を抱きしめ、キスをする。そして翌朝まで萌のそばで寝る。翌朝、日向は醤油の仕事のために帰っていくが、直後、萌の容体は急変、駆けつけた麗が日向に連絡をし日向も病室に駆け戻る。うっすらと開いた目で萌は日向を認めた後息を引き取る。
現代、麗は一人で住むことを決意し、この日家を出る。そこへ郵便局から未来手紙が届く。それは萌からだった。そして、未来の日向にも手紙が入っていた。萌が日向と初めて会ったのは余命六ヶ月と病院で言われた日で、日向の母親が亡くなって病院にいた日だったこと。萌が日向に恋をしたのは、病院の帰り、小さな女の子を助ける日向の姿を見た時であることを告白する。日向はその手紙を読み、母の死以来流していなかった涙を流し車を走らせて映画は終わる。
終盤の、萌の手紙で真相が明らかになる鮮やかさが、全く出ていないのがとっても残念で、ここを生かすともっと涙を誘う作りになっていたと思うが、このあたりが演出の弱さだろう。本当に普通の映画だったが、當間あみがますます可愛らしくなっていたので、それで十分でした。
「死霊館 最後の儀式」
相変わらずこのシリーズは面白いし怖い。実話という迫力もですが、クライマックスにこれでもかと工夫を凝らした怖がらせシーンの連続に画面から目を離せなかった。しかも、ショッキングなスプラッターは全くないというこのシリーズの特徴が見事に生きていてとにかく楽しめました。監督はマイケル・チャペス。
1964年、ウォーレン夫妻が依頼された呪いの家で調査をしている場面から映画は幕を開ける。ある部屋に入り不気味な鏡を見つけて妻のロレインが触れるが、直後産気づいて病院へ向かう。やがて出産するが、一時は死産だった。何やら不気味な影がロレインの周りに存在していた。ロレインが赤ん坊を抱きしめて神に祈ると赤ん坊は息を吹き返し奇跡が起こる。
1986年ペンシルバニア、スマイリー夫妻の娘がこの日堅信式だった。娘の祖父はお祝いに骨董店で見つけてきた巨大な鏡をプレゼントするがそれはウォーレン夫妻がかつて調査した呪いの鏡だった。以来この家族に恐ろしい出来事が頻繁に起こるようになる。ウォーレン夫妻の娘ジュディはすっかり大人になり、恋人のトニーと結婚するまでになっていた。この日、エドの誕生日のお祝いでトニーも駆けつけ、ジュディにプロポーズする。しかし、ジュディは最近不気味な魔物を見ることが多くなっていた。
ウォーレン夫妻と悪魔祓いの捜査をしてきたゴードン神父もお祝いに駆けつける。そして、困っている家族がいるとエドらに話すが、ウォーレン夫妻はすでに悪魔祓いの仕事を引退していた。ゴードン神父も諦めて帰る。その頃、スマイリー夫妻の家ではさらに不気味な出来事が続き、鏡を捨てに行ったが、娘の一人がガラスのカケラを吐いたりする。以前から気になっていたゴードン神父が家を訪ねて、聖水を撒いたところ、恐ろしい煙が立ち上がり、尋常ではないと判断し教会へ悪魔祓いの依頼をしにいくが、魔物がゴードン神父を襲い、神父首を攣って死んでしまう。
ゴードン神父の葬儀にでたウォーレン夫妻とジュディだが、ジュディは、神父の棺から何やら予知を感じてしまう。そして両親に内緒でジュディはペンシルバニアのスマイリー夫妻の家に向かう。単身出かけたジュディを追ってウォーレン夫妻とトニーもそこへ向かう。そしてジュディを連れ戻そうとするが、困っている家族を助けるために立ち向かうべきだとジュディは両親を説得、ウォーレン夫妻は最後の仕事にこの家の魔物を祓う事にする。この家には、呪いの鏡があった。こうしてウォーレン夫妻と呪いの鏡の魔物との壮絶な戦いが始まるが、魔物の目当てはジュディだった。一時は劣勢になったウォーレン夫妻らだったが、全員が鏡に手を当てて魔物に対峙すると、なんとか封じ込める事に成功する。
事件が解決し、トニーとジュディは結婚式を挙げ、鏡はウォーレン夫妻の保管庫に移され、保管庫の鍵をトニーに引き継いで映画は終わる。エンドクレジットで、実在のウォーレン夫妻の写真、エドが70歳余りで亡くなり、ロレインは90歳まで生きたというテロップが流れる。
クライマックス、ジュディが次第に魔物に取り憑かれていくくだり、心臓が悪いエドの必死の攻防や、ロレインが追い詰められていく展開がスリリングで、しかも、時折見せる魔物の不気味な顔立ちのショッキングな映像も効果抜群。スピーディな展開に最後まで飽きさせないホラーでした。
「聖者」
妄信的に信仰する人々の姿をコメディという体裁で風刺した作品で、いかにも嘘くさい教祖風の男の風貌がコミカルで、そんな教祖に縋る庶民の顔の面白さを楽しむ一本でした。監督はサタジット・レイ。
駅で、大勢の信者らしい人々に喝采を受けている教祖ババの姿から映画は幕を開ける。彼はよくわからないものをばら撒き列車に乗る。そこで、弁護士で日々の生活に悩むグルバダという男と出会う。グルバダはいかにもな嘘くさい奇跡をババに見せられ、信じ込んでしまうが、娘のブチキはそんな父の姿に辟易としてしまう。
ババは大勢の信者を集めて、アインシュタインやプラトンと知り合いであるとか、キリストと話をしたとかブッダとも幼い頃から知っているなどと嘘八百を豪語していく。ブチキの婚約者の青年は、知人たちと画策してババの化けの皮を剥ぐべく計画を立てる。ババの説教が頂点になった時に窓の外で火を焚いてババを驚かす。ババの仲間はこの日シバの女王の姿を見せようとしていたが失敗、慌てて逃げ出してしまう。ブチキの恋人はブチキを連れ出す。逃げ出したババとその仲間は、信者が忘れていったバッグなどを持って何処かへ消えて映画は終わる。
なんともコミカルな一本で、特に工夫も何もないが、デフォルメされた教祖の姿、そんな男に妄信する人々の姿をかなり辛辣に描いていく。これもサタジット・レイの映像なのだろうと思う作品でした。


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