「桃中軒雲右衛門」
実在の浪曲師の半生を描いたいわゆる芸道もの。かなり端折ったストーリー展開ですが、ぎっしり詰め込んだエピソードが作品の充実感を生み出して、役者陣の圧巻の演技も相まって、しっかり見ることができる映画でした。監督は成瀬巳喜男。
九州から東京へ向かう列車の中、桃中軒雲右衛門の様々なスキャンダルを噂する人々の場面から映画は幕を開ける。そんな雲右衛門は急に静岡で途中下車してしまい、弟子たちや付き人は右往左往する。雲右衛門は静岡の料亭で芸者遊びをしていたが、最近自身の芸に疑問を抱いていた。かつて、死に物狂いで妻おつまの三味線で小屋周りをしていた頃が一番充実し、芸も輝いていたように思えるのだった。妾に産ませた千太郎も駆けつけ、かつての師匠お爺さんも説得をし、雲右衛門は東京へ向かうことになる。
雲右衛門は予定通り東京へ出て公演をするが、東京で寄った料亭で千鳥という芸者に惚れてしまう。妻を蔑ろにし千鳥の所へ日参する雲右衛門だが、これも芸の肥やしだと周囲の声も千太郎の非難も聞かなかった。妻のおつまは、肺病に侵され、三味線を引くことも難しくなってしまうが、そんな衰えを見せる妻に雲右衛門は、芸人として生きてほしいと厳しい言葉を投げる。おつまは、女として自分を見ない雲右衛門に、芸が衰えてきたことを自覚するべきだと厳しい言葉を返す。間も無くしておつまは入院してしまう。
雲右衛門は自宅に千鳥を住まわせるようになり、千太郎は番頭のすすめで寄宿学校へ入る。ある時、千太郎は学校で、父親を侮辱した生徒を相手に刃物を振り回し暴れてしまう。それを聞いた雲右衛門は劣化の如く怒るが、弟子たちがそれを抑える中、病院からおつまが亡くなったことを知らせる電話が入る。病院のおつまの傍に座る雲右衛門は二人きりになり、妻に感謝の言葉をかける雲右衛門の姿で映画は終わる。
「王将」や「残菊物語」などもそうだが、この頃の映画は妻や自分を支えてくれる女性の死をエンディングにする作りが目立つ気がします。さすがに、成瀬巳喜男作品の中では中の下レベルですが、しっかり作られた一本でした。
非常に普通のマイルドなフランケンシュタインの映画だった。特にどぎつい個性的なシーンもないし、映像表現もいたって普通。監督が監督だけにかなり期待したが、所詮Netflix配信映画の域を出なかった。監督はギレルモ・デル・トロ。
19世紀、北極点を目指す船が北の海で氷に閉ざされている場面から映画は幕を開ける。なんとか氷を破ろうと乗組員らが必死で作業をしている。すると彼方に炎が上がり獣のような声が聞こえる。船長と乗組員数名が調査に行くと、そこに瀕死の一人の男がいた。そして傍に大男が現れ船長らを襲ってくる。男を担いで船まで戻ったものの大男が船を襲ってきて、乗組員らを次々と倒していく。なんとか氷を破壊して沈めてしまい、助けた男からことの次第を船長が聞く。
男の名はヴィクターと言った。著名な医師を父親に持ち、母の財産目当ての結婚の末に生まれた男だったが、幼い頃から厳しく躾けられてきたこと、父が母を道具のように扱ったこともあり父を憎んでいた。そんな母は弟を産んだ際に亡くなってしまう。父は弟のウィリアムを可愛がる。やがて父も他界し、兄弟はそれぞれ親戚に預けられて育つ。
医師となったヴィクターは、命を操ることの研究に没頭し、この日学会で、半身の遺体に電気を通して生き返らせる実験を披露し学会のメンバーから疎まれてしまう。しかし、ヴィクターのことを見ていたハーランダーはヴィクターに出資し応援することを提案してくる。ハーランダーの姪エリザベスはウィリアムの許嫁でもあった。ヴィクターはハーランダーに惜しみない資金と実験のための建物を提供され、死刑囚や戦場で死んだ遺体を集めて人造人間を造る実験に臨んでいく。そしていよいよ最後、落雷によるショックを与える場になってハーランダーは自分が梅毒で余命わずかなので、自分を人造人間に生かしてくれと頼んでくる。しかし病に蝕まれた体は使えないとヴィクターと揉み合う中でハーランダーは転落死してしまう。
落雷による実験は成功し、人造人間は完成するが、知性はいつまでも進歩することがなく、ヴィクターという言葉以外学ぶこともなかった。そこへエリザベスとウィリアムがやってくる。エリザベスは人造人間の所へいき、この化け物に宿る優しい心を見抜く。ヴィクターは、ウィリアムにハーランダーの死を告白して、エリザベスとこの地を去るように勧める。そしてヴィクターは全てを灰にするべく油を巻き火をつける。嫌な予感がしたエリザベスはウィリアムと共に引き返し、炎で吹き飛ばされて片足を失ったヴィクターを発見して脱出する。しかし人造人間はすんでのところで排水口から脱出していた。
ウィリアムとエリザベスの結婚式の日、人造人間はヴィクターのところへ現れる。ヴィクターは人造人間を撃ち殺そうとするが飛び込んだエリザベスが人造人間を庇ったためにエリザベスは銃弾を浴びてしまう。さらに暴れた人造人間はウィリアムを投げ殺してしまう。エリザベスを抱きかかえて逃げる人造人間をヴィクターは追い詰めるが、エリザベスは死んでしまい、不死身になった人造人間はヴィクターを苦しめるだけの存在となるが、ヴィクターはダイナマイトや銃を持って人造人間を殺すべく追い続ける。そして氷原で、人造人間はヴィクターのダイナマイトを取り上げて自ら火をつけ爆発するも人造人間は死ぬことはなかった。そして冒頭、船長らに発見される。
時は遡り、人造人間のドラマになる。館を脱出した人造人間は、彷徨う中である農家の水車小屋に隠れる。そこには目の見えない老人と息子たちがいた。老人は孫娘に字や本を与えてやり、それを人造人間が隙間からのぞいて文字や言葉を覚えていく。ある日、狼の群れがこの家の家畜を襲う。息子たちがなんとか追い払ったものの、森へ追い詰めて駆除するために出かけていく。一人残った老人の前に人造人間が姿を現し、親しくなっていく。
人造人間は、自分が生まれた屋敷をもう一度見たいと、老人の家を離れてヴィクターの元屋敷に行き、そこで自分がどういう経緯で生まれたものかを焼き残った書類から知り、ヴィクターの居場所も突き止める。そして、老人の家に戻ったが、狼が老人を襲っていた。なんとか人造人間は蹴散らしたものの、そこへ息子たちが帰ってきて、人造人間は息子たちに撃たれて意識を失ってしまう。しかし、間も無くして生き返った人造人間はヴィクターの元を目指していく。
全て話終わった人造人間の話を聞いたヴィクターは、人造人間に謝り、息子として抱きしめる。船長は人造人間を解放してやる。人造人間は最後に氷に閉ざされた船を動かしてやった後夕陽の中に消えていき映画は終わる。
ギレルモ・デル・トロ監督で、ミア・ゴスまで出ているのにこの普通さはなんだという作品。所詮、配信作品で過激なことができないためだろうがあまりに物足りない160分でした。
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