「ひとつの机、ふたつの制服」
とっても心地よい青春ストーリーでした。主演の二人が可愛らしくて愛くるしいのも大きいですが、素直な展開と、妙な濁りのない物語がとにかく見ていて清々しいほどにピュアです。いい映画だった。監督はジャン・ジンシェン。
シャオアイがこの日第一女子高校に入学し制服が届いたところから映画は幕を開ける。母と妹の三人暮らしで、父親は亡くなりかなり生活が厳しい様子である。第一女子高校は名門ですがシャオアイが入ったのは夜間部だった。シャオアイは、夜間部に無理やり行かされたことが不満で制服を投げ捨てようとするが、母の思いもあり仕方なく登校することになる。昼間部の生徒と同じ机を使うので、同じ机を使うもの同士は机友としてキユウとなり、手紙などでそれぞれ親交を深めていた。シャオアイのキユウはミンミンといった。
ある時、ミンミンはシャオアイをライブに誘う。シャオアイは授業を抜けて校門を出ようとするが、門で落ちてライブに行けなかった。それを聞いたミンミンは、制服を交換しようと言い出し、それぞれ着替えて夕方の時間にこっそり抜け出すようになる。昼間部の制服には黄色の刺繍文字、夜間部は白の刺繍文字だった。さらにミンミンは自身の着替えの制服をシャオアイに貸してやりミンミンはシャオアイからも制服を借りる。
シャオアイは、卓球クラブでアルバイトをしていた。そこへ卓球をしにきたルー・クーという男子高校生に密かに恋心を持つ。彼は理数系の男子校に通う優等生だった。そんな時、シャオアイはミンミンから、気になる男子高校生がいると教えられる。それはルー・クーだった。シャオアイはミンミンの勧めで同じ塾に通うようになるが、そこにルー・クーもきていた。シャオアイはミンミンにルー・クーと親しいとはいえなかった。
シャオアイ、ルー・クー、ミンミンらは三人でライブに行ったりする。ある時、ショップでルー・クーが見ていたパスケースをミンミンが目に留めていたが、後日、三人で遊びに行った際、シャオアイがそのパスケースを持っているのを見て二人の仲を知ってしまう。卓球クラブではオーナーのコーチがシャオアイとルー・クーに初心者体験会のイベントの手伝いをしてもらったりし、二人はさらに親しくなっていく。
間も無くしてルー・クーの母親の個展が開かれ、シャオアイもミンミンも遊びに行くが、そこで、ルー・クーの家族や、招待された客の言葉に、シャオアイは彼らのような裕福な家庭ではなく、見下げられていると知ってしまう。
ショックを受けたシャオアイが家に帰ると、それまで成績に関して母親に見せずに自分でサインして提出していたのがばれて母に叱責され、以来、口を聞いてもらえなくなる。シャオアイは、ニコール・キッドマンが好きで、伯母が経営しているレンタルビデオ店でバイトしているチャオに、ファンレターを英訳してもらって送ったことがあった。落胆した中、店を訪ねたシャオアイにチャオは、ニコール・キッドマンからの返事を手渡す。そこには、ロブスターを例えにして、少しづつ成長していくべきというような内容が書かれていた。
時が流れ、シャオアイは高校三年になっていた。母の兄が入院したということで母が家を留守にし、シャオアイは、母に言われた通り、鍵を預かったレンタルビデオ店に行ったところ、チャオが友達を呼んで勝手にビデオを見せていた。その中で、先日のシャオアイにきたニコール・キッドマンの返事が作られたものだと知る。チャオを責めるシャオアイだったが直後地震が襲う。
なんとか地震が治り、妹が心配で自宅に戻ったシャオアイだったが、妹は無事だった。地震の後の片付けの時、ミンミンが大切にしていた幸運を呼ぶ人形を発見したシャオアイは、ミンミンに返しに学校へ会いにいく。ミンミンもシャオアイを探していた。やがて学校の創立記念日のお祭りの中、シャオアイはルー・クーと再会、ルー・クーは、ミンミンから全て聞いたけれどそんなものは関係なくシャオアイが好きだと言う。
シャオアイらには大学入試の統一試験が迫ってきた。ようやく立ち直ったシャオアイは、猛勉強をし、受験会場へ向かう。そこで、推薦入試と聞いていたルー・クーと出会う。彼もまた実力で入学する事を選んでいた。やがて結果発表の朝、シャオアイは自宅で新聞を見つめ、三人が合格した事を知る。三人は夜の学校で祝杯をあげ、映画は幕を閉じる。
受験戦争と学歴社会を背景に、純粋な友情と思春期の恋を綺麗に描いた一本で、主人公二人を演じたチェン・イェンフェイ、クロエ・シャンがとにかく可愛らしい。ルー・クーを演じたチウ・イータイも好印象の人物で描き、今時甘いと言うような美しい青春群像に心が洗われる気がする作品でした。
「ハード・トゥルース母の日に願うこと」
行間を読みなさいと言わんばかりの映像表現だけで見せるストーリーで相当にクオリティは高い。黒人ドラマなので、最初人物がみんな同じに見えたけれど、次第にストーリーが浮き上がってくると全て綺麗にまとまってきました。いい映画ですが、さすがに難しいです。監督はマイク・リー
閑静な住宅街、白を基調にした建物の通りに自転車に乗った黒人が走ってきて、通りに止まっているバンの後ろに自転車を積み込んで車に乗り走り去るところから映画は幕を開ける。場面が変わると、ベッドの上で突然目を覚ます女性パンジー。廊下を息子のモーゼスが散歩に行こうとするので、何やら警告めいた言葉をかける。夫のカートリーは配管工をしているらしく、この日も相棒と仕事をしている。
パンジーは終始イライラしていて、スーパーに行ってはレジの女に突っかかったり、体調が悪いと病院や歯科に行っても悪態をつくばかり。パンジーの妹シャンテルには二人の娘がいて、それぞれ仕事をしていて明るい家庭を築いている。ある母の日、シャンテルの提案でパンジーの家族を家に招待する。
嫌々やってきたパンジーはシャンテルと亡き母の墓参りに行き、自分はみんなから嫌われていると思っている事を告白するが、シャンテルは、ずっと自分たちを面倒見てくれたパンジーに感謝していると伝える。シャンテルの家で食事をすることになるが、パンジーは食べようとしない。そんな中、モーゼスがパンジーに母の日の花を買ってある事をシャンテルの娘たちがバラす。それを聞いて泣いてしまうパンジー。
家に戻ったパンジーだが、モーゼスが買ってきた花を汚いものでも触るように花瓶に刺し、夫の服を部屋の外に出してベッドで眠ってしまう。カートリーは、パンジーがいけた花を庭に捨てる。カートリーは、仕事場で腰を痛め、相棒に家まで送ってもらう。そしてパンジーにその事を伝えた相棒はカートリーを残して帰っていく。バンから自転車を出して走り去り、パンジーとカートリーの顔のアップで映画は終わる。
これまで歩んできた人生の中での様々な苦難が、今のパンジーの心を蝕み、ずっと苦しんでいる様をひたすら映像だけで見せていく。そんなパンジーをなんとかしようと周囲は心を砕くも、結局何もできない無力さに打ちのめされる様を描いているのだろうか。真っ白な室内と洗練された家具、そんな中で黒人の家族たちが繰り広げるドラマは、非常に中身が濃いと思うのですが、全て映像から読み取る演出に徹底されている。異常に鳩が集まってきたりするのを嫌い、狐がやってきたり、シュールな演出も散りばめられているので、並の作品ではないのは分かるのですが、完全に汲み取れたかどうかは自分でも自信がない作品だった。
「自分に見合った顔」
現実か幻想か想像か、監督の感性とひらめきに任せた映像作品という感じで、正直ほとんどわからなかった。目眩くような夢の中にいるような映画だった。監督はミゲル・ゴメス。デビュー作である。
カウボーイハットを被った男フランシスコがバスを降りてきて、マルタという恋人に電話をする場面から映画は幕を開ける。マルタは小学校の学芸会で、衣装をつけて忙しそうにしていて相手をしてくれない。そんなマルタの所に押しかけたフランシスコは、マルタと雨の中歌いながら歩いたり、フランシスコが算数の先生と浮気?まがいのことをしたりして、結局フランシスコは死んでしまって第一部が終わる。第二部は第一部の学芸会で描かれた白雪姫をもとにしたファンタジックな話という解説だが、七人の男が、フランシスコの看護目的で集まったのだが、空想とも現実とも境界のないカットの切り返しで物語が描かれていく。白雪姫の七人の小人を元に大人の物語として描いていく。でもどういう流れなのかよくわからないままにラストシーンを迎える。
途中何度か気を失うほどに展開が唐突で。特に後半はついていけなかった。

