くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「杏っ子(あんずっこ)」「ドライブ・クレイジー:タイペイ・ミッション」

杏っ子

のらりくらりと同じようなエピソードを繰り返していく作品で、成瀬巳喜男監督らしいキレが少なく、次々と出てくる新しい登場人物との簡単な絡みをラストまで繰り返すので、非常に長く感じてしまう映画だった。

 

売れっ子作家平山平四郎を父に持つ杏子が、弟平之助と自転車で走っている場面から映画は幕を開ける。年頃の杏子には今日も見合い相手の男性が家にやってきていて、近くを散策する。そんな杏子を自由にさせている平四郎らの姿が実に微笑ましい。近所の裕福な家の息子とテニスで仲が良い杏子に、その母親が、交際をやめてくれるように言ってきたりする。ある時、いつものように杏子の見合い相手に新しい男性が現れ、今回はちょっと気に入ってる風の杏子。しかし、たまたまそれを知った、旧知の貸本屋を営む亮吉が結婚を直接平四郎に申し込んでくる。

 

亮吉は作家を目指していたが、いまだに目が出ていなかった。間も無くして杏子と亮吉は結婚するが、亮吉は作家の夢を忘れられず、就職しても長続きしないで自宅で小説を執筆する。しかも根っからの酒好きなので、一日中飲んだくれている状態だった。当然、生活は苦しく、杏子は生活費の工面に苦労するが、亮吉は何かにつけて杏子の父平四郎のせいだなどと悪態をつく日々だった。

 

映画は、飲んだくれでクダばかり巻いている亮吉と健気に尽くす杏子夫婦に絡んでくる様々な人間のエピソードを繰り返しながら進んでいく。杏子は何かにつけて平四郎の家に来て相談したりするものの、離婚という言葉は出さなかった。やがて弟の平之助も旧知のりさ子と結婚する。

 

平四郎は一旦杏子夫婦を自宅の離れに住まわせるが、結局また出て行かざるを得ない展開になってしまう。安アパートの二階で生活する杏子たちだったが、亮吉の荒れ具合はどんどんひどくなり、その度に杏子は、実家に戻り数日過ごしてまた亮吉のところへ戻るというのを繰り返す。平四郎は、夫婦の生活は行くところまで行って初めて見えてくるものだと静観し、この日も杏子はアパートに戻る姿で映画は終わる。

 

次々と様々な人物が平四郎の家や杏子、亮吉に関わってくるが、どれも単発のエピソードで、話がいつまでも前に進んでいかない。結果、非常に長く感じてしまう結果になった感じです。成瀬巳喜男作品としては中の下というレベルの一本でした。

 

 

「ドライブ・クレイジー:タイペイ・ミッション」

意外に面白かった。リュック・ベッソンの脚本は少々荒っぽいけれど、香港映画を思わせるテンポ良い展開と、コミカルな演出がエンタメ感を増幅させて最後まで楽しめました。監督はジョージ・ホアン。

 

台北、海洋王と言われ億万長者となったクワンは、この日、つまらない事件で注目を浴びていたが、適当にいなして自宅へ戻る車に乗る。一方、彼の妻ジョーイはティファニーの出たちよろしくスーパーカーを物色し、赤いフェラーリを試乗して猛スピードで疾走した後調整させて購入する。そのフェラーリは、クワンへの誕生日プレゼントだった。

 

その頃、アメリミネアポリス、一人の男ジョンが警察に逮捕されようとしていたが駆けつけた上司にことの次第を告げられ釈放される。ジョンはクワンの麻薬組織の証拠を掴むべく潜入捜査していたが、一緒に潜入していた捜査官のチョンボで大銃撃戦を行った末、とりあえず大量の麻薬を押収したのだった。派手な銃撃戦で非難を浴びたジョンのほとぼりを覚ますために上司は彼にしばらく休暇を与える。しかしその直前、ジョンに、何者かからクワンの極秘帳簿を手渡すという垂れ込みが入る。

 

ジョンは単身台北に乗り込む。その頃、クワンは、金庫から極秘の帳簿のノートが消えて大激怒していた。そしてその犯人が息子のレイモンドだと判明、レイモンドを痛めつけていたがそこへジョーイが駆け込んでくる。レイモンドはクワンが大量のイルカを殺しているのを知り、動物保護のために帳簿を盗んだのだった。そしてその帳簿は17時にジョンの泊まっているホテルに届けられることになっていたが、その時間まで後5分だった。

 

ジョンは台北に着いて約束の帳簿を手に入れる取引のために仲間を連れてホテルの部屋で待っていた。そこへクワンが差し向けた暗殺軍団が現れる。ジョーイとレイモンドはジョンに知らせるべく車を飛ばしてジョンのホテルへ向かう。ジョーイは天才的なトランスポーターで、車の運転は神業だった。ジョーイらはジョンの部屋に入り、間一髪で、クワンが差し向けた暗殺集団と銃撃戦の中に放り込まれる。実はジョンはジョーイの元カレで、レイモンドはジョンとジョーイの子供だった。

 

ジョーイは、かつて寂れた漁村で暮らしていたが車が好きで、バギーを乗り回していた。ある時、漁民が引き上げた網に大量の麻薬がかかり、ジョーイの祖母はそれを隠していたが、若き日のクワンが取り戻しにやってきた。ジョーイはバギーで逃走するが結局捕まるもその運転技術を見込んだクワンは彼女を仲間に引き入れた。

 

ジョーイはクワンの部下としてトランスポーターとして仕事をしていたが、ある時潜入捜査をしていたジョンの車と出会い、二人は恋に落ちてしまう。しかし、ジョンは自分の素性をジョーイに明かし、ジョーイを逮捕させないために逃すのだが、すでにジョーイのお腹にはレイモンドがいた。ジョーイは、クワンにすがらざるを得なくなり、二人は結婚、15年の月日が経っていた。

 

ジョンは、レイモンドが手に入れた手帖の写真を撮るが、後一歩決定的な証拠が必要だった。レイモンドの証言から、それはクワンの机の上の置物に仕込まれたUSBメモリーだと判明し、それを盗むことを考えるが、レイモンドが勝手にクワンに部屋に忍び込み捕まってしまう。

 

ジョーイとジョンは、レイモンドを取り戻すため取引をしようとするも、クワンはジョーイを拉致してレイモンドと逃げたので、ジョンが必死で追い詰め、クワンとの一騎打ちに持ち込む。そして最後にクワンを倒し逮捕。ジョンも逮捕されるがアメリカの上司からの連絡で釈放され、ジョーイとレイモンド共々パリへの休暇旅行に行って映画は終わる。

 

ジョンの助っ人があっさりと撃たれてしまったり、レイモンドが簡単にクワンの証拠を見つけられたり、素手で殴り合うラストはさすがにしょぼいのだが、それまでの展開が、余計なドラマを排除してスピーディにかつコミカルに展開するので全部許してしまう。B級アクションではあるけれど香港映画のような作劇と見せ場の連続は一級品のエンタメ映画でした。