くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「3つのグノシエンヌ」「みどりの壁」

「3つのグノシエンヌ」

江戸川乱歩の「一人二役」を原作にした作品ですが、乱歩のエロチシズムと狂気がほとんど描けていない薄っぺらい脚本と雑な演技で終盤まで持たない作品でした。ラストは原作の狂気が出たとはいえ、それは原作ありきという流れで、そこに至るまでの引き込まれるサスペンスがほとんど感じられなかった。監督はウエダアツシ

 

釣り堀で、舞台の脚本家哲郎と後輩の悠介が話をしている場面から映画は始まる。哲郎は妻の晴とは冷め切っていて、茉莉という女性と不倫を重ねていた。演出家から台本の依頼があり、哲郎はその題材を考えていたが、毎日に刺激のない中、浮かんでいなかった。しかし、突然奇妙なことを考える。

 

悠介に、自分の妻晴を誘惑させて不倫をさせ、その実態をそのまま脚本にしようというものだった。悠介は乗り気でなかったが、協力すれば舞台の主役に選ぶという誘惑に乗って哲郎の依頼を受けることにする。悠介は晴が通う手話教室に入会し、哲郎の指示通り晴と親しくなり、やがてホテルに行くことになる。

 

悠介は晴に目隠しをし、その様子を、ホテルの部屋で哲郎は隠れてみていたが、いざ悠介が晴の体に触れようとすると、いきなり哲郎は悠介の手を掴んでしまう。結局その日は何もないままに終わったが、哲郎は晴に目隠しをさせ、いざ抱くときは悠介と入れ替わるという行為を提案、悠介はそれを受け入れ、目隠しされた晴と哲郎がSEXする行為を傍で声だけ出して見ることになる。しかし晴は悠介への想いが募り、哲郎と離婚すると悠介に告白、悠介も晴と結婚したいと答える。

 

ここにきて哲郎は、嫉妬の炎が燃え上がり、いくら脚本通りの展開とはいえ耐えられなくなって悠介を責めるが、悠介はすっかり晴に恋心を抱いていた。哲郎は、狂気になって悠介に襲いかかるが逆に反撃されてしまう。苦悩した哲郎は、ラストシーンを思いついた。それは、晴の目と耳をダメにしてしまい、自分が悠介となって晴を愛し続けるというものだったが、それを思いついた途端、交通事故に遭い死んでしまう。

 

火葬場で、哲郎の焼かれる煙を見ていた晴は悠介に、哲郎は末期の癌だったと告白、事故死の方が保険金が多く出るのだとつぶやく。茉莉も傍に現れ、結婚なんてしないとつぶやいて映画は終わる。

 

どうも男性陣が弱い。女性陣は声を出していればいいとはいえ、いい演技をしているが男性陣が非常に薄っぺらい演技になっているので、狂気の様が見えない。映像も平凡だったし、なんとも残念な映画だった。

 

 

「みどりの壁」

ペルー映画祭の一本。名作と言われるだけあって、恐ろしいほどの傑作でした。大統領が農場実験場を視察に来る一日を背景に、ジャングルに移り住んだある家族のこれまでの物語を細かいカットの連続と抒情的なシーンにシュールな空間演出を加えて、それでいて過去から現代まで描いていく。その映像センスが素晴らしい。まさに名作という一本でした。監督はアルマンド・ロブレス・ゴドイ。

 

ペルーのジャングルの奥地、仕事を辞めて農業をすることに決めたマリオが野焼きのために枯れ木を燃やしている場面から映画は幕を開ける。妻のデルヴァ、息子のロムロと暮らす三人家族。電気もない未開のジャングルで、マリオとデルヴァはSEXをするが傍に眠るロムロが目を覚まし、それもままならない。

 

映画はここから、マリオがこの地で農業を始めるにあたり、土地の取得に役所に何ヶ月も日参する姿、などが交錯し始める。翌日、植えたコーヒーの木が倒されていて調べに行くと土地改革の役人が勝手に測量していた。マリオは、申請もして手に入れた土地に勝手に入ってこられ、銃で脅す。

 

ロムロは、空き缶で作った水車が壊れたからと父に直してもらい、そこに割れたワイングラスを吊るして心地よい音がするように作る。そんな映像の合間に、マリオがデルヴァと出会った日々、デルヴァの両親に結婚を反対されたこと、ロムロが生まれた時に実験場から貰った仔牛を育て、大きくなったが畑を荒らすので売りに出してしまうが、牛は暴れて自ら木に激突して死んでしまいロムロが悲しむ姿などを挿入していく。

 

大統領が実験場を視察にやってきた日、マリオは街に出かける。いつもの水車で遊んでいたロムロは、突然絶叫を上げる。毒蛇に噛まれたのだ。駆けつけたデルヴァが蛇を叩き殺し、ロムロを病院に連れて行こうと走るが、街まで遠すぎる。途中、現地の人に毒を吸い出してもらい、通りかかったトラックで街に行き、マリオと合流して病院へ行くが、血清を保管してある所の鍵を院長が持っていて、院長は大統領の式典に行ったという。

 

マリオが院長を探し出し、ロムロに血清を打ったがすでに手遅れでロムロは死んでしまう。遺体を家に連れ戻し、この地の風習で小舟に乗せて墓場まで川を下る。途中、現地の子供達が船で後をついてくる。埋葬が終わり家に戻ったマリオはロムロがいなくなった家に灯りをつける。心地よい音色がするのでロムロの水車のところへ行き、ロムロが作ったグラスを見つけるが、つい壊してしまう。しかし気を取り直して元に戻し、音色が流れるようにする。ふとみるとその周りにロムロが集めた人形たちがあった。まるでペルーの歴史を物語ようだった。家に戻ったマリオはデルヴァと悲しみを分かち合って映画は終わる。

 

素直に撮った作品のフィルムを全てぶつ切りにして、映像センスだけで前後に繋ぎ合わせたような作りもすごいが、やたら奥行きにある空間演出をする役所や病院の描写も圧倒されてしまう。抜きん出た傑作とはこういうものを言うのだろうと感心してしまう作品だった。