くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「君の顔では泣けない」「ブレイカウェイ」

「君の顔では泣けない」

淡々と描く物語ですが、不思議な設定を背景にした人生の機微をさりげなく映し出す青春映画という色合いのちょっと素敵な映画だった。二人のキャスト芳根京子、高橋海人に透明感があるので映画がめんどくさく濁らずによかった。監督は坂下雄一郎

 

主人公坂平陸、水村まなみは三十歳になって、年に一度、同じ喫茶店で会っているところから映画は幕を開ける。実は二人は十五歳の時に体が入れ替わってしまい、以来ずっとそのまま戻ることなく今日を迎えていた。年に一度この喫茶店で会うという約束で日々を過ごしていたが、陸の体に入ったまなみは、元に戻る方法がわかったようだとまなみの体に入った陸に話す。それは、土星の位置関係がかつて二人がプールに落ちて入れ替わった時と全く同じ今日がそのチャンスだという。しかも、この次は百年後しか巡ってこない。映画は此処から、十五歳の高校時代に遡り、十八歳の大学進学、二十一歳、二十七歳など過去の物語を紡いでいくことになる。

 

二人は東京の大学に行き、それぞれ恋を経験したりもする。それぞれの家族との行き来もあったりなかったり、また、陸の父親の急死などの出来事もある中、二人は年に一度それぞれの人生を振り返って報告しあっていた。二十七歳の時、まなみの体に入った陸は妊娠し出産する。そして三十歳の今、お互いの実家に行き、夜、元に戻るかどうか相談するが、まなみに入った陸は子供や夫のことを考え、戻らなくてもいい決断をする。その言葉に若干苦悩する陸の体に入ったまなみだったが、陸の気持ちを考え、別れる。車の中で、まなみに入った陸は高校時代の陸の中のまなみの動画を見ていた。そして、なるようになろうと決意し、陸の中のまなみを乗せて夜のプールへ行く。そして二人はプールに飛び込む。時が経ち、いつもの喫茶店で二人が会って笑う姿で映画は終わる。果たして戻ったのか戻らなかったのかは観客に任せるエンディングです。

 

ラブストーリーでもSFでもなく、青春時代を過ごした男女の人生のドラマを淡々と描いていく作品に仕上がっています。傑作という仕上がりではないものの、同じ喫茶店という場面を繰り返しながらの構成は、時間の前後の混乱をきれいに整理していくのでわかりやすいし、そのエピソードの枝葉で描く様々な過去の物語は、男女が入れ替わっている故の不思議な切なさを醸し出していてストーリーに味が出ているのはとってもいい。何か、思いもよらない何者かを感じさせてくれる一本でした。

 

 

「ブレイカウェイ」

なかなか面白い作りの映画なのですが、国柄でしょうか、当たり前に殺生をする展開だけが素直に楽しめなかった。それぞれに問題のある少年時代を送った四人が自然とつるみあって悪さをし、やがてレストランを経営するまでを描くブラックコメディ作品。切ない展開もあるものの、爽快なほどにコミカルなシーンを繰り返す作りはちょっと楽しめる映画でした。監督はアナス・トマス・イェンセン。彼のデビュー作。

 

湖の辺りの山の中、ランタン亭というレストランを俯瞰で捉えるショットから映画は幕を開ける。店内には客の賑やかな姿、壁の一枚の写真へカメラが寄ると四人の男たちの姿が映る。そして時が遡る。コペンハーゲン、犯罪仕事を請け負う腐れ縁の四人、トーキッド、アーニー、ピーター、ステファンは、この日もタバコを大量に略奪するはずが持ってきたのはメンソールで、話にならず、すぐに切れるアーニーは運転手をリンチしてしまう。ギャングのボスエスキモーに大金を借りていることもありその命令は絶対だった。

 

次の仕事で豪邸に押し入った四人だがそこで四百万クローネといい大金を手にする。四十歳を迎え、人生の岐路に悩んでいたトーキッドは、その金を持ってバルセロナへ逃亡しようと考える。ところが途中で車がエンストし、森の中の廃墟に隠れる。しかし、トーキッドはこの廃墟を買ってしまいレストランにしると言い出す。そして4人で改装を始める。

 

ピーターは地元の男にビールは地面に埋めて冷やすものだと教えられ、銃好きのアーニーは、すぐに切れてしまって、廃墟を出て行こうとするが途中で牛を飼っている男カールと意気投合して狩りをして帰ってくる。ステファンは、街に残してきた恋人ハンナを呼び寄せる。誰も彼も好き勝手な事をする中、トーキッドはなんとかレストラン開業に向けて奔走するも客は全くこない。アーニー、トーキッド、ピーターらは少年時代、銃が好きで遊んでいて友達を亡くした事があった。

 

ハンナはトーキッドたちと反りが合わず、ステファンと街に帰ろうと誘い出すが、ステファンは少年時代、裕福で厳格な家族に育てられたが、それが耐えきれず家を飛び出してトーキッドらに会った事を思い出す。その頃、金を持ち逃げされてキレたギャングのエスキモー達は、森のレストランにトーキッド達がいる事を突き止めレストランを探していた。たまたますれ違ったカールにその場所を聞き、カールを痛めつけてレストランに向かう。

 

エスキモー達はレストランに銃を持って襲いかかるが、トーキッド達はすでに銃は持っていなかった。そこへステファンが戻ってくる。四人はエスキモーに睨まれたが、そこへ仲間を連れたカールが乱入し、機関銃を撃ちまくってエスキモー達を一網打尽にする。やがて、時が流れレストランは順調に営まれていた。トーキッドの元妻が新しい夫を連れてやってくる。美味しくもない料理を出して、カメラがゆっくり引いていくと、料理評論家のナレーションで、美味しくもなく店も汚いけれど四人一人一人に星ひとつ合計星四つをつけるという言葉で映画は終わる。

 

たわいない青春ドラマというか男達の友情ドラマをコミカルなクライムサスペンスで描いた映画で、ドライなほどに爽快な演出が随所に散りばめられている。ストーリー構成もよくできているし、映像も凝っている。ちょっとした佳作だった。