くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「ジェイ・ケリー」「落下の王国」(4K)

「ジェイ・ケリー」

トップスターに上り詰めた大俳優の過去を振り返るヒューマンドラマ。Netflix作品ですが、二時間越えでも退屈はしませんでした。出ている役者のクオリティが映画を最後まで牽引した感じですが、ストーリーは若干甘いと言えば甘いので、心の奥深くに染み渡るほどの感動はなかった。監督はノア・バームバック

 

長回しで見せる映画撮影の現場、主人公を演じる大スタージェイ・ケリーが登場人物が亡くなる瞬間を演じている場面から映画は幕を開ける。カットの最後に「もう一度やってみたい」というが、監督はこれでOKを出す。彼はイタリアで功労賞の授賞が決まっていたが、本人は行く気がないと言い、マネージャーのロンは、自分が同じくマネージャーをしているベンを勧めて彼に変更した。しかしジェイがやっぱりもらうといったためにダブル受賞になるように画策した。そんなジェイは、かねてからの旧友ピーターが亡くなったことを知る。

 

ジェイは、ピーターの葬儀に行き、そこでかつて役者を目指していた頃の仲間ティモシーと再会する。ティモシーは今では役者ではなくセラピストとして生活していた。ティモシーに誘われ、時間もあったのでジェイは飲みにいくが、その帰り、ティモシーに絡まれてしまう。かつてあるオーディションでティモシーに付き添い人としてジェイはついていったが、オーディションに受かったのはジェイだった。以来ティモシーはジェイを恨んでいたと喧嘩を売ってくる。結局、ジェイはティモシーと殴り合ってしまい、翌朝、次の作品に出演しないと言い出し、功労賞の授賞式に向かうとロンを困らせる。

 

仕方なく、ジェイに付き添っていくことになったロンや、リズらジェイの付き人達だが、実はジェイは、今の作品の撮影が終わると娘デイジーと過ごすはずだったが、パリ方面に旅行に行くと断られ、彼女の行き先をクレジットカードの利用履歴で追いかけていた。そして、飛行機で向かうところを勝手に列車に変えてしまう。ジェイの好き勝手な行動にロン達は翻弄されてしまう。家族のことやさまざまを犠牲にしてジェイについていたスタッフ達は一人づつジェイの元を離れ始める。

 

ジェイは、デイジーやもう一人の娘ジェシカとのコンタクトを進めるもさりげなく彼の元に戻ってこない。途中、授賞式に呼んだ父も出席しないと去っていく。ジェイはとうとうロンとも口喧嘩をしてしまうが、ロンがベンにマネージャーの仕事を解雇されたことを知り、ぜひ授賞式に出てほしいと懇願、ロンもまたジェイに寄り添うことを決める。

 

功労賞の授賞式の場で、ジェイのこれまでの出演作の映像、家族のホームムービーなどが映され、ジェイは周りにこれまで関わった人々の顔を思い出していた。ジェシカとデイジーが幼い頃、ジェイの前で見せたパフォーマンスのホームムービーを見せられ、ロンに気持ちを尋ねられて、映画撮影でいつも口にしていた「もう一度試してみたい」とつぶやいて映画は終わる。

 

結局、スターとして成功するための代償で家族との絆が途切れてしまった現実に直面し、孤独の中に沈んでいく主人公の切なさを描く一方で、周囲の人々との人生の対比を描いた作品。過去に何度も描かれた物語ですが、それでも飽きずにラストまで見ることができた。ただ、これもやはり配信映画の域を出ず、全体が非常にこじんまりしているように見えるのは気のせいだろうか、そんな一本でした。

 

 

落下の王国

初公開以来だから二十年ぶりくらいの再見。初めて見た時はその映像の美しさに息を呑んだものですが、今回改めて見ると、画面の美しさはグラフィカルな美しさで、映画作品としての美しさとは別物だと確認できた。物語は失意のどん底になった一人の青年の再出発というシンプルなものですが、壮大な空想劇を挿入することで映画自体がカルトムービーのような仕上がりになっています。彼に絡む少女の存在が映画を引き立てていることも確かで、その純粋さに心が切なくなっていく様が素晴らしい一本だった。監督はターセム

 

スローモーションで、映画の撮影場面でしょうか、鉄橋の上の汽車、吊り上げられる馬、騒ぐ人々の様子が描かれてタイトル、映画が幕を開ける。カットが変わると、病院のベッドで一人の少女アレクサンドリアが起き上がり、カタコトの英語の手紙を書いて窓から大好きな看護婦エヴリンに投げる。ところがその手紙は下に落ちずに、途中で窓から下の階に飛び込んでしまう。

 

手紙が飛び込んだのはロイという青年のベッドだった。スタントマンのロイは、撮影中に橋から落ちて大怪我を負い、さらに私生活でも恋人を主演俳優に奪われて失意のどん底にいた。アレクサンドリアは、ロイのベッドを訪ね、彼にお伽話を聞かせてもらうようになる。ロイは、人生に失望し、身動きできない自分の代わりにアレクサンドリアに自殺するための薬を取ってきてもらうつもりだった。

 

ロイはアレクサンドリアの名前にちなんでアレキサンダー大王の話をし始めるが、翌日、その続きをするにあたり、悪徳総督オウディアスに復讐するために、彼に酷い目に遭わされた六人の戦士の話を始める。弟を殺されたベンガ、妻を誘拐されたインド人、爆発物の専門家ルイジ、幻の蝶を追うダーウィン、猿のウォレス、死刑宣告された仮面の黒山賊、そして森を焼き払われた霊者だった。ロイはアレクサンドリアに頼んで、モルヒネの瓶を取ってきてもらうが、中には三錠しか錠剤が残っていなかった。そこで、向かいの患者のテーブルからモルヒネを盗んでもらい、それを大量に飲んで眠ってしまう。

 

一方お話は、彼らが総督の牙城に向かう途中、扇で顔を隠した姫と遭遇する。一行は姫を攫うが、黒山賊と姫の間には恋が芽生える。しかし、二人の結婚式を取り持った司祭の裏切りで一行は捉えられてしまう。あわや殺されるかという時、彼らの皮袋からアレキサンドリアが飛び出して彼らを救う。現実世界では、ロイは薬で意識が混濁して続きが話せなくなってしまう。しかし、大量に飲んだと思ったモルヒネは砂糖だったため、ロイは死ねなかったことで半狂乱になってしまう。アレクサンドリアは、ロイに喜んでもらおうと再度薬棚にいくが、足を踏み外して床に落ちてしまう。

 

頭に包帯を巻いて横たわるアレキサンドリアの前でロイは泣き崩れる。アレクサンドリアが話の続きをせがむので、ロイは六人の戦士の物語を語り始める。総督の屋敷についた六人は総督の部下に次々と殺され、とうとう黒山賊アレクサンドリアだけになってしまう。黒山賊は総督と一騎打ちをし総督を倒し、エヴリンと結ばれる。現実世界で、アレクサンドリアは退院して果樹園で遊んでいる。ロイはあれからまたスタントの仕事に戻りあちこちの映画に顔を出している姿で映画は終わる。

 

純粋な心で、青年を癒そうとする少女のあどけない姿に胸が痛くなる名編という一面と、映像にこだわったヴィジュアルな演出、そして現実と架空の御伽噺を織り交ぜたカルト的な作りが混じり合った傑作。改めて見直して、素直に感動してしまいました。