「TOKYOタクシー」
フランス映画「パリタクシー」の本案映画。ほぼ9割方オリジナル版を無難にコピーした作品でした。ここまでコピーすると面白みも何もないのですが、これも演出スタイルなのかもしれません。監督は山田洋次。
明け方、個人タクシーを営む宇佐美浩二が深夜の仕事を終えて自宅に帰ってくるところから映画は幕を開ける。娘が音大付属の推薦入学ができると聞いて喜ぶが、先立つものがいると言われて落ち込んだままベッドに入る。しばらくして同僚から電話が入り、お客さんを代わりに受けて欲しいという。宇佐美が待ち合わせ場所に行くと高野すみれという上品な老婆が待っていた。
宇佐美はすみれがいく老人施設に向かうべく車を発車させるが、すみれはこれまでの人生の思い出をたどりたいからと東京のあちこちを回って欲しいと依頼してくる。宇佐美はすみれの言われるままに東京を回り始める。その中で、すみれは第二次大戦で父を失ったこと、戦後すぐに朝鮮人の男性と恋に落ちて子供が生まれたこと、しかし二度目に結婚した相手はDVで、その男の股間に油をかけて殺人未遂で起訴され収監されたことを語っていく。オリジナル版とほとんど変わりのない展開と、細かいエピソードの演出まで全く同じで進む。
施設が近づいた頃、夕食を一緒に食べ、施設に送り届けた宇佐美は、運賃を後ほどもらいにくるからと別れる。後日、妻と娘と一緒にすみれの施設を訪ねた宇佐美は、すみれが先日亡くなったことを知る。そして葬儀の場で弁護士に会い、すみれからの遺言の手紙と一億円の小切手をもらう。こうして映画は終わる。エンドクレジットで朝鮮人の恋人と踊るすみれの姿が被る。
ここまでコピーするともはや山田洋次の映画ではないと言えるほどで、車内に今のすみれと若き日のすみれが乗る場面の演出まで同じ。唯一、オリジナル版では、すみれは有名な女性活動家であったことと、遺産の原資が邸宅を売ったお金ではなく、今回はネイルビジネスで成功した原資であったというあたりくらいでした。こういう映画を作らんとした山田洋次の、そして周囲の考えが今ひとつ理解できない一本だった。
「スプリングスティーン孤独のハイウェイ」
ブルース・スプリングスティーンの若き日を描いた作品で、まるで一枚の音楽レコードを聞いているような作品でした。少年時代と現代を交錯させる構成と美しいインサートカットの挿入で、まるで一枚の音楽アルバムを聴いているような感覚に囚われ、主人公ブルースの心の苦悩や音楽への思い、様々な人生のドラマを体験してしまうような錯覚に囚われていきます。いい映画だった。監督はスコット・クーパー。
1957年、ブルース・スプリングスティーンの少年時代がモノクロで描かれて映画は幕を開ける。昔気質の不器用な父親と優しい母親、そして1981年、ステージで熱唱するブルースの姿になって映像はカラーに変わる。すでに不動の人気のブルースだが、次のアルバムや新曲作成に奔走する日々だった。ステージの後、学生時代の知人から妹のフェイを紹介される。軽い気持ちで付き合い始めたブルースだが、やがてフェイの幼い娘と一緒に過ごすようになり恋に落ちていく。
一方、ブルースは、新曲制作に勤しむが、大きなターニングポイントの到来を感じていた。人気は不動のものになっていたが、次の曲へのこだわりから、一人自宅の部屋で4トラックの録音機の前で一人で歌い始める。そしてやがて完成した新曲を最新のスタジオで再現しようとするが、ブルースの思うような曲が聞こえてこない。マネージャーのジョンとの苦悩の日々の中、ブルースは次第に重圧に苛まれ、精神的に参っていく。父ダグも高齢故か衰えを見せ、そんな父を入院させる。フェイトも別れ、ロサンゼルスに自宅を買いそこへ向かう。
そんなブルースにジョンは、専門家の力が必要だと告げる。そして十ヶ月が経つ。セラピーを受けたブルースはニュージャージーへ戻ってくる。老いた父ダグと再会し、父に膝に座ってみろと言われる。そして見事復活、間も無くして彼が仕上げたアルバムネブラスカは大ヒットし、ブルース・スプリングスティーンは世界の頂点に登り詰めていく。こうして映画は終わる。
セリフのないカットにまるでアルバムの一曲を想像させるような味わいがあり、美しい景色などの映像が物語自体に彩りを与えていく。それはそのまま彼の人生の彩りに変わる様がとにかく見事。一人のミュージシャンの人生のひとときのドラマが美しく描かれたいい映画だった。
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