「ペンギン・レッスン」
1976年、アルゼンチン、ブエノスアイレスで起こった実話をもとにした作品。特に優れた映像作品ではなく、一匹のペンギンが織りなすヒューマンドラマに、当時のブエノスアイレスでの軍事クーデター批判を交えて描いた感じの映画だった。監督はピーター・カッタネオ。
1976年の世界情勢のフィルム映像が画面を覆い尽くしタイトル、そして、英語教師トムが、ブエノスアイレスのセントジョーンズ校という富裕層の子息が通う学校に転任してくるところから映画は幕を開ける。着いた途端、彼方で爆発が起こり、いかにも不穏な情勢。トムが任されたクラスは中学校下位クラスで、生徒は誰も授業を聞かないし、教師の前でいじめはするし、どうしようもないクラスだった。そんな時、軍事クーデターが勃発して急遽学校は休校になる。トムは物理教師タピオとウルグアイへ遊びにいくことにする。
女好きのトムは行く先々で女性とダンスをしたりして過ごし、ダンスホールで一人の美女と知り合う。二人で海岸を歩いている時、重油まみれで瀕死のペンギンを発見する。トムは全く興味がなかったが、その女性の気を引くためにホテルへ連れ帰り洗ってやる。しかし女性は結婚しているからと早々にトムの元を去り、トムは仕方なくペンギンを引き取ってしまう。
海に返そうとしてもトムの元にペンギンが戻ってくるし、何かにつけて、ペンギンを連れていかいないと逮捕すると言われ、仕方なく学校の寄宿舎に持ち帰り世話をすることにする。この部屋に掃除に来るマリアと孫のソフィアがペンギンを見つけサルバトールと名付けて可愛がるようになる。授業は再開されたが相変わらずトムの講義に見向きもしない。呆れたトムはペンギンを教室に連れてくる。生徒たちは一斉に興味を示し、ペンギンをダシにした授業は順調に進み始める。
ある日、トムは市場で買い物をした帰りソフィアに会うが、ソフィアは軍の関係者に逮捕される現場に出会してしまう。トムは一言も声をかけられず、学校に戻って校長やマリアに報告するだけだった。ペンギンは生徒たちにも可愛がられ、周りの人達に笑顔を起こさせる。マリアは嘆願書を送ると言い出し、トムが手伝うが、結局、マリアの言葉そのままが一番良いからとマリアの手紙で嘆願書は届けられる。校長も父兄会を通じて嘆願書を出すことにする。トムは市場で、ソフィアを逮捕した男と出会い、ペンギンをダシに話しかけて、ソフィアのことをさりげなく訴えるが、その直後トムも逮捕されてしまう。しかしトムは一晩で釈放された。
やがて、終業式の日になる。トムのクラスの生徒の成績は見違えるほど向上、壇上で表彰される生徒も出た。良い気分で宿舎に帰ったトムだったが、サルバトールはベランダで死んでいた。トムのクラスのディエゴが、ペンギンは伴侶を失くすと一匹になって死んでいくのだと教えられる。ペンギンの葬儀が生徒たちの前で行われ、校長先生らも涙を浮かべる。そこへ、釈放されたソフィアが帰ってくる。マリアは歓喜に包まれて映画は終わる。
こういうドラマがあったという映画で、ペンギンを通じて人々の心が和らぎ、クーデターへの批判をさりげなく訴えようとする作品だと思いますが、どの点をとっても今一つ鋭いところがなく淡々と流れる演出がちょっと物足りない映画でした。
「ペリリュー楽園のゲルニカ」
反戦映画ではあるけれど、良質に丁寧に作られた良い映画だった。原作は圧倒的なリアリティで描かれた漫画であるが、可愛らしいキャラクターと相まっての悲惨な戦場のドラマは、いつのまにかたまらないほどの悲しみに打ちひしがれて行き、見終わった後に残る余韻は、戦争は絶対にダメだという思いに浸らせてくれる。良い映画でした。監督は久慈悟郎。
昭和19年、パラオ諸島ペリリュー島、ここに派兵された主人公田丸の姿から映画は幕を開ける。アメリカ軍の猛攻撃が始まり、次々と日本兵は亡くなっていく。そんな悲惨な中、田丸は、たまたま一緒に物資を運搬していて、同僚が道を滑らせて頭を打ち亡くなる。田丸の部隊長島田から、功績係という任務を仰せつかる。田丸は、漫画家志望で、絵を描くのが得意だという事で、亡くなった兵士を名誉の戦死をしたかに書き換えて故郷へ送るというものだった。
アメリカ軍の攻撃は激しさを増し、海上には艦船がひしめき、空からは空襲が連日のように行われ、上陸してきたアメリカ兵は情け容赦なく攻撃してきた。そんな中、田丸は同じ年だが上等兵の吉敷と出会う。吉敷は射撃も抜群に上手く、頭も切れる人物だった。田丸は吉敷と意気投合し、どこへいくにも行動を共にする。しかし、田丸の隊はほとんど全滅に近い状態になり、食料もほとんどなくなってしまう。
二人は間も無くして他の隊の生き残りと合流、そこで指揮を取る島田少尉と再会する。島田少尉の作戦で米軍の物資を盗むことに成功し、隊は反撃まで持久戦に入ることになる。一年が過ぎ二年が過ぎた頃、たまたま米軍のゴミ箱から、新聞などを見つける。そこにはすでに戦争は終わっていて、日本は負けたことが描かれていた。
誰もが信じなかったが、吉敷は米軍に投降して真実を確かめると田丸にいう。田丸も吉敷と行動を共にすると言って隊から離れるが、それを知った兵士らに捕まる。そこに、手榴弾が投げ込まれ、田丸らは窮地を脱して米軍キャンプを目指す。最後に立ち塞がったのは島田少尉だった。吉敷は島田少尉と対峙したが結局撃てず、島田少尉の銃弾が吉敷を射抜いてしまう。田丸は吉敷の遺体を担いで米軍キャンプまで行き投降。
田丸の提案で、潜伏している日本兵を投稿させるべく、家族の手紙を持参していくことにする。田丸は、兵士隊の住所を全て漫画に書き留めていたのだ。やがて全兵士が投降し、間も無くして日本への輸送船が手配される。そして、日本へ戻った田丸は実家の食堂にやってきて映画は終わる。
物語は今更というものですが、独特のキャラクター画と、悲惨な戦場、美しい景色などが交錯して、非常に良質な反戦映画に仕上がっています。できるだけ大勢の人に見てほしい一本、そんな映画でした。

