くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「マルドロール 腐敗」「ピアス 刺心」

「マルドロール 腐敗」

なかなかの力作というのはわかるけれど、全編力が入りすぎて見ている方がしんどくなる映画だった。しかも、主人公のやることなすことが全て背後の巨大権力に潰されていく様がラストまで続くので見ていてストレスが溜まるばかりで、どうしようもなく辛いラストも、娯楽色が少なすぎて、しかも長尺なのでぐったりしてしまいました。監督はファブリス・ドゥ・ベルツ。

 

司法警察自治警察、憲兵という警察組織がうまく噛み合わないままになっている1996年ベルギーという社会性の説明から映画は幕を開ける。憲兵隊に所属するポールはこの日、一人の少女を自宅に連れて行き両親に引き渡すが、父親の様子に不審を抱き、裏口から勝手に突入、子供を虐待する父親を見つけて襲いかかる。そんな正義感にあふれたポールは、ジーナという女性と恋に落ちて結婚する。

 

おりしも二人の少女が行方不明になる事件が起こり、ポールは上司のヒンケルからマルドロール作戦のメンバーに抜擢される。しかし、出世と保身を最優先にするヒンケルは、ポールの行き過ぎた捜査に釘を刺してきて、せっかくつかんだ犯人の手がかりを司法警察に報告することもなかった。ポールはそんなヒンケルに逆らって、犯人と思しきマルセルとディディエのアジトを捜査する、図面になかった地下室に勝手に入って証拠を探すも見つからず、しかもヒンケルから厳しい言葉をかけられてしまう。

 

一方ジーナは妊娠し、間も無くして子供を出産、ポールの家庭は順風満帆に進むかと思われたが新たな少女拉致事件が発生、しかも、拉致されるところを目撃されて、司法警察がマルセルらを逮捕に向かう。これまで捜査してきたポールらは納得いかず現場に向かうが、逆に司法警察に追い返されてしまう。しかも、ヒンケルはポールらの捜査は自分の指揮した結果であると手柄を横取りした挙句、犯人逮捕が遅れたのはポールのせいにされて、ポールはクビになってしまう。

 

それでもポールは マルセルらにまだ何かあると考えて、マルセルらの背後にいるドルマンの建物に勝手に潜入、そこで一人の少女の遺体を豚が食べている現場を見てしまう。それは、マルセルらに殺された男の愛人マチルダのものだった。マチルダが暮らしていた船に潜入したポールはそこで一本のビデオテープを発見する。そこには警察長官が少女買春している映像だった。しかし、直後ポールの家は襲われ、なんとか逃げたものの、ポールが集めた証拠は家と共に焼かれてしまう。

 

ポールは売春宿をしている母親の元に逃げ込む。その頃、逮捕されたマルセルとディディエは脱走していた。それも警察のわざとであるらしく、背後にドルマンの影が見え隠れしていた。ポールは独自に捜査を続けていき、偽造パスポートを作る男からマルセルの潜伏先を割り出し、マルセルの隠れ家へやってくる。そして、マルセルに銃を向けるが、マルセルは、自分を撃てるはずがないと逃げようとする。一旦は躊躇したポールだが、耐えきれずついにマルセルを撃ち殺し、逮捕されていく。

 

2002年、刑務所にいるポールにヒンケルがやってきた。ドルマンが狩猟中に亡くなり、あちこちにビデオテープが送られてきたのだという。自分のところにもテープが送られてきたが何も写っていなかった。ポールが押収したテープに写っていた人物は警察長官かどうか写真をみせる。それはポールが押収したテープに写っていた男だったが、ポールは知らないと答える。ヒンケルはその写真の人物を脅して、仕事に復帰しようと考えているようだった。こうして映画は終わる。

 

捜査すれども全て巨大な黒幕に潰されていく主人公の姿がはがゆく、物語はそこを描くより、ベルギーの国の事情を訴えたいのだろうが、淡々と繰り返す展開で二時間以上という長尺はちょっとしんどい作品でした。

 

「ピアス 刺心」

何を描かんとしているのか焦点が定まらない作品で、兄弟の心のすれ違いを描くのか、兄がサイコパスだと描くのか、なぜ母親が兄を忌み嫌うのか、さらにジージエのゲイの恋物語も混じって、なんともよくわからない映画だった。監督はネリシア・ロウ。

 

川で溺れる幼いジージエを母が助けて欲しいと兄ジーハンに叫んでいる場面から映画は幕を開ける。どうやらジージエは助かったようだが、場面が変わると、ジーハンは刑務所から仮釈放の手続きをしていた。ジージエの母はクラブ歌手で、この日もクラブで熱唱し、客席には彼女の恋人チュアンがいた。ジージエは、フェンシングをしていたが今一つ成績が良くなかった。ジーハンはフェンシングの名選手だったが、数年前、相手を刺し殺してしまい、殺人と判決が降りて服役していた。

 

ジージエは兄が仮出所してくるのを知り、刑務所に行くが顔を合わせられなかった。ジーハンは、母たちと離れて暮らす予定だったが、勝手に母たちのいる台北に住み、スーパーで働き始める。ある日、ジージエがフェンシングクラブで練習していて、防具をつけた兄と再会する。ジーハンはジージエにフェンシングのアドバイスをし、ジージエはそのアドバイス通りやるとみるみる上達していった。そして、フェンシングの大会にも出場が決まる。

 

しかし、母がジージエとジーハンが会っていることを知ってしまう。チュアンにも兄のことは内緒にしていたが、ジーハンは強引にチュアンの家族とジージエの母らとの会食に顔を出す。しかし、その場にいた幼い少年はジーハンのことが怖いと泣き出してしまう。フェンシングの試合が迫る中、ジーハンはフェンシングのクラブに顔を出し、声をかけられた相手と軽く試合するが、相手を怪我させてしまう。それを見たジージエはジーハンを疑うようになり、かつての殺人も故意に行ったのではないか、幼い頃自分を助けたのも実は見捨てようとしたが母の声で助けたのではないかと疑念を募らせる。ジージエは、彼を慕う仲間とデートをし、一旦は辞退した大会出場に出ることにする。

 

フェンシング大会で、ジージエは順調に勝ち進むが、そこに兄ジーハンが現れる。ジージエはジーハンに、全てジーハンが故意に行った事ではないかと告げる。兄が現れて心が乱れたジージエは最後の試合で負けてしまう。ところが、精神錯乱したジーハンは剣で暴れ始め、人々が逃げ惑い始めた。一方、ジージエは、先日のクラブでの事故はジーハンの故意の仕業ではないと知り、ジーハンの元に駆け寄る。周りに誰もいなかったが、そこへ警察が踏み込んでくる。ジージエは咄嗟にジーハンの剣を取ってジーハンに切り付け、そのまま警察に逮捕されていく。護送されるジージエは、かつて川に溺れた際、ジーハンが助けてくれたことを思い出し映画は終わる。

 

なぜ、母はあそこまで息子を信じないのか、真実を描くところが非常に中途半端で、兄弟の心のすれ違い、疑心暗鬼の微妙な空気感が全く伝わってこない。その上、ジージエがゲイだという不必要なエピソードまで挿入し、なんとも芯が見えない作品だった。