くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし」「グッドワン」

「アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし」

「シンデレラ」の物語を元にしたゴシックホラーですが、主人公はシンデレラではなく、義姉のエリヴィラの物語です。かなりグロテスクなシーンも散りばめられていますが、「シンデレラ」の話をリアルなドラマにしたら実はこういう悍ましい女の姿を描くことになるかもしれないと思う映画だった。監督はエミリア・ブリックフェルト。

 

スウェランディア王国、この国のユリアン王子に恋焦がれるエルヴィラが、王子との幻想に浸っている場面から映画は幕を開ける。ユリアン王子の詩集を愛読し、いつか王子の妃になることを夢見ている日々だった。母のレベッカは、オットーという貴族の後妻になることになっていた。大邸宅にやってきたレベッカ達はオットーの娘アグネスと出会う。ところが結婚式の後の夕食で、悪ふざけしていたオットーが急死してしまう。実はレベッカはオットーの財産を、オットーもまたレベッカの財産目当てだったが、お互い無一文に近かった。

 

そんな時、宮殿から、ユリアン王子が妃を決める舞踏会が行われるという知らせが届き、アグネスもエルヴィラも招待される、エリヴィラの妹アルマはまだ幼かったので招待はなかった。アグネスは容姿もそれなりに優れているがエルヴィラはごく普通の顔立ちだった。母のレベッカは、なんとか玉の輿に乗せるべく、エルヴィラに美容整形させることにする。

 

まず矯正している歯の金具を取り去り、鼻を形良くするため強引な手術をする。アグネスとエルヴィラは、ソフィ淑女学院に入りダンスや行儀作法を学び始める。舞踏会の開催は四回目の満月の夜と決まっていた。アグネスは学院の校長に認められ、舞踏会当日のダンスのヒロインに抜擢される。エルヴィラは、日々悶々とする中、森でくつろいでいて、遊びに来たユリアン王子と出会うが、ユリアン王子はエルヴィラに蔑むような言葉をかける。その帰り、エリヴィラは恋人で馬番の青年イサクとSEXしているアグネスを見てしまう。アグネスは、犬のようにイサクに体を貪られていた。

 

エルヴィラはレベッカに報告し、アグネスは、使用人のような扱いにされてしまう。ソフィは、アグネスの代わりのヒロインをエルヴィラにするため、エルヴィラが痩せるためにサナダムシの卵を与える。妹のアルマはそんな姉を非難するが、エリヴィラはそれを飲み、みるみる痩せていく。さらに整形でまつ毛も縫い付けられ、すっかりエルヴィラは見た目美しくなったが、サナダムシが原因か髪の毛が抜け始める。やがて舞踏会の日、エルヴィラはかつらを被り、レベッカの愛人がプレゼントしたドレスを着て出かける。その前の晩、アグネスはシンデレラと呼ばれて生活していたが舞踏会に行くためドレスを準備していた。しかしそれをエルヴィラに見つかり破られてしまう。

 

アグネス=シンデレラは、父の亡骸のそばで泣いていると、亡き母が現れ、蛆虫によってドレスが作り直され、舞踏会に行けるようになる。やがて舞踏会の夜、エリヴィラは期待通りユリアン王子にダンスを申し込まれるが、そこにシンデレラが現れ、ユリアン王子はシンデレラとダンスを踊る。ショックを受けたエルヴィラは、泣き崩れるが、口からサナダムシの卵を吐き出してしまう。それでもレベッカは他の裕福な男と踊ればいいと勧めるもののエルヴィラにはユリアン王子しかいなかった。

 

12時になり、シンデレラは会場を後にし、ユリアン王子は、片足だけ残された靴を手にして、この靴が履ける人を探すと宣言する。エルヴィラは、家に戻り、アグネスの靴を無理やり奪い、その靴が履けるように右足の指を包丁で切り落とす。叫び声を聞いてレベッカとアルマがやってくるが、エルヴィラが切り落とした足は王子が合わせにくる左足ではないと言って反対の足の指を切ってしまう。

 

翌朝、ユリアン王子が家々を周り、エリヴィラの屋敷にも来た。エルヴィラは血だらけの足で階段を這うように降りて途中で転げ落ちて鼻を折ってしまう。そんなエルヴィラを見下ろしながら颯爽とシンデレラは出ていき、ユリアン王子に認められて、王子に抱かれて去っていく。エリヴィラは、アルマに助けられて虫下しの薬を飲み、サナダムシを吐き出して、アルマと共に屋敷を後にしていく。エンドクレジットの後、腐敗してしまったオットーの死骸が映って映画は終わる。

 

笑ってしまうほどに、ある意味俗っぽいシンデレラストーリーだった。エルヴィラの一途な思いがホラーチックに描かれる様は、取りようによれば切ないほどに物悲しいし、シンデレラは淫乱女だし、レベッカは男狂いだし、王子もどこにでもいる若者だというキャラクター設定がとにかく面白い映画だった。

 

 

「グッドワン」

静かに淡々と何事もなく流れていく映画だった。登場人物達が山に入っていき、降りてくるだけの映画。娘が女になる微妙な時期の父と娘の不安定な関係を、その背後にある色々なことを行間を読むように感じていく作品で、90分ほどに描いた手腕は認めるが、だからと言って次を期待できるかというと疑問が残る映画だった。監督はインディア・ドナルドソン。

 

十七才のサムは父クリスと山登りに行く準備をしている場面から映画は幕を開ける。母と離婚しているクリスは、友人のマットとその息子デュランと行く予定だったが、デュランは行かないことになり三人で山へ向かう。物語はここから、三人が山に入り、テントを張ってキャンプし、河原で遊ぶ姿を淡々と捉えていく。大人の階段を上りかけているサムは生理用品を使う場面が頻繁に出る。マットは何気なく、一緒に寝ようなどと冗談を言うが、サムにとっては、身の毛がよだつほどに気持ちの悪い言葉だった。そんな事も二人の男性には理解できないものがあった。

 

河原で遊んでいる時、サムはマットに言われた言葉をクリスに話すが、クリスは軽くいなしてしまう。サムはクリスのリュックに石を詰め込んで一人山を降りる。車で待つサムのところにクリスとマットが降りてくる。クリスはサムに車を運転して欲しいとキーを渡すが、サムはなかなか助手席の鍵を開けなかった。ようやくクリス達を車に乗せるが、クリスは一個の石をダッシュボードに乗せるとサムの顔を見て暗転映画は終わる。

 

ラストシーンは、父としてのクリスが娘のことを一人の女として理解したと示したのかどうか、一方サムは大人としての父やマットに相いれない何かを感じたのか、そんな様々を感覚だけで見る感じの映画だった。