「クスノキの番人」
東野圭吾作品の初アニメ化。アニメ自体はかなり荒っぽい作りになっていますが、原作がいいのでしょう、その良さをアニメとして昇華して、感動の物語に仕上がっていました。ラストは胸が熱くなってしまいました。監督は伊藤智彦。
月郷神社、この日佐治寿明という男がクスノキに祈念に現れ、玲斗が出迎える。そして二週間前に遡る。ある工場、玲斗が働いた後休憩していると突然解雇を言い渡される。原材料に使う金箔が何者かに盗まれたらしく玲斗に疑いがかかったらしいが玲斗に身に覚えはなかった。理不尽なまま職場を後にした玲斗は、キャバクラで勤める友人からある頼み事をされる。それは窃盗の手伝いだったが、友人らに先に逃げられ玲斗は窃盗で逮捕されてしまう。ところが玲斗に一人の弁護士が面会に来て、こちらの条件を飲むなら釈放の手筈を整えるという。玲斗はその申し出を受け依頼人のところに案内される。
依頼人というのは大企業ヤナッツグループの顧問柳沢千舟という女性で、玲斗の伯母だと名乗ってくる。そして彼女は玲斗に月郷神社にあるクスノキの番人を依頼する。そして訳もわからずクスノキの番人を仰せつかったが、佐治がクスノキに向かうのを玲斗が案内していると一人の女性佐治優美と出会う。優美は、父が向かったクスノキの謎を探りに来たのだというが決まりでそれはできないと玲斗は追い返す。
別の日、柳沢グループの社長大場藤一郎の息子大場壮貴がやってくるが、祈念を行うもうまくいかないばかりだった。玲斗は、優美が心配する父寿明のことを調べる手伝いをする一方で、千舟に連れられて柳沢グループの後継者問題に関わり、さらに壮貴とも親しくなっていく中、次第にクスノキの謎に迫るようになる。
クスノキの秘密とは、祈念は、預念と受念に分けられ、クスノキに思いを預念し、それを親族が受念するというものだった。寿明が行なっていたのは、優美の兄でピアニストを目指していた息子が託した最後のピアノ曲だったが、寿明は何度受念で聞いてもうまく再現できなかった。寿明はたまたま知り合ったピアノの先生に、自分が頭で聞いた曲を再現してもらおうとしていたがうまくいかず、それを父の浮気だと優美が心配していたのだ。
一方、壮貴は、育ての父で今は入院中の柳沢グループの社長大場藤一郎の言葉を聞くためだったが、血が繋がっていない壮貴には、受念することが叶わないままだった。間も無くして藤一郎がこの世を去り、柳沢グループの次期社長の件で役員会が開かれようとしていたが、呼ばれたはずの千舟は役員会への出席を忘れていた。
玲斗は壮貴や千舟と関わる中で、これまで自分が、人生に悲観して投げやりな日々を送っていることの無意味さにようやく気づき、ついに千舟から正式にクスノキの番人を認められる。そして、柳沢グループでの千舟の立場をしっかりと現役員に訴えたりするが、実は千舟は認知症が進んでいた。玲斗は常に手帳を持ち歩きメモを欠かさない千舟に疑問を抱き、ある時、その手帳を盗んで中を読んだ。それは日々の行動や出来事を忘れないようにするための忘備録だった。
一方、優美は、父から、祈念しているすべての真実を知り、絶対音感のある自分に父が聞いた兄の曲を預念してもらい、それを優美が受念することで正確な音階を聞き取ることを提案する。そしてその祈念は見事成功し、優美がピアノで演奏、寿明の母がそれを聞いて息子の曲だと気づかせることもできた。
千舟は、会社の顧問を降り旅行に出ることにし、壮貴は会社で一から勉強することにし、優美達家族もすべてうまくまとまる。そして正式にクスノキの番人となった玲斗の姿で映画は幕を閉じる。
原作の良さを、そのエッセンスを盛り込んだ作りの脚本にまとめて、いいドラマに仕上げた良い映画だった。でも実写でやればもっと感動できたかもしれない。
