「赤い柿」
第二次大戦後の台湾の歴史を背景に描くある大家族の物語。淡々と流れる物語ですが、そこに家族の愛、親子の愛、兄弟の愛が溢れていてとってもあったかくなる映画だった。題名にある赤い柿が、物語に不思議なスパイスを生み出していく流れがとってもいい。良質な一本という映画だった。監督はワン・トン。
1949年上海、モノクローム映像、国民党軍の総司令官王が家に戻って来る所から映画は幕を開ける。王家族は中国を離れて台湾へ逃れる事になる。この家には有名な画家が描いたとされる「赤い柿」の絵があり、祖母が大事にしていた。孫達はこの絵を舐めてみたりして遊ぶのが常だった。
台湾へ移る船に乗るために港へ向かおうとするが、祖母は最初は嫌がって隠れてしまう。そんな祖母を説得して港までやってきたが、夫が本土で戦っているのを残して行けないと妻も抵抗する。そんな妻を使用人達が説得していざ船に乗ろうとするが、使用人の福順が乗り遅れてしまう。しかも彼は「赤い柿」の絵を持ったままだった。
台北に移って画面はカラーになる。台北に移った王家族だが、生活は苦しく、妻の宝石を処分して十人の子供を学校へ行かせる事になる。学校で子供達が問題を起こすと祖母が駆けつけて校長を説得したりする。そんな祖母が孫達は大好きだった。やがて総司令官が肩を負傷して帰ってくる。彼は子供達の名前を混乱するほど家を空けて戦場へ赴く日々だった。家族を守るために妻は鶏を飼い、卵を売ったりして子供達を学校へ通わせる。
そんな家族を、暖かく見守る祖母の姿は、時に妻や孫達の心を癒していく。祖母は将来、死に瀕して着るべき服を時々虫干ししたりしていたが、そんな事とは知らない孫達はその真っ赤な服でいたずらをして祖母らに怒られたりする。王は、上層部から様々な報告書などを求められていたが、決して頼られている風もなく出世の気配もない中、妻は、庶民に戻って家庭を守ってほしいと言う。
時は流れ、新たに子供も生まれ、兄や姉達はそれなりに家族を養えるようになる所だが、相変わらず生活は厳しく、自宅を賃貸して生活をしのごうと考える。王が計画した蛙の養殖も失敗、鶏もある日病気で大量に死んでしまう。妻は、田舎に移って静かに生活するべきだと提案し、住んでいる大きな家はアメリカ人に貸す事にして、小さな家に引っ越す。王は生活のために、家にある書画を売ろうとするが値打ちのあるのは祖母が所有する「赤い柿」の絵くらいだった。祖母は、孫達に教育を受けさせるべきだと、大切にしていた絵を処分してしまう。
ある日、孫達と映画を見に行った帰り、福順と再会する。福順は、大陸で戦った後台湾に来たらしい。王も退役し、貧しいながらも家族と過ごしていた。ある夜、孫達にせがまれて映画に行った祖母だが、帰りに川に落ちて風邪をひいたことがきっかけで体調を崩してしまう。自宅で療養する祖母に教師になった孫娘が時計をプレゼントしたりする。しかし、祖母の容態が急変し、とうとう亡くなってしまう。庭に真っ赤な柿の木が柿を実らせ、葬列が進む姿で映画は終わっていく。
監督のワン・トンの自伝的な作品で、これという大きなドラマもないのですが、祖母が家族と絡む様々が実にあたたかい物語に溢れている。良質の映画という言葉がぴったりの良い作品でした。