くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「エルジ」「月が沈むとき」

「エルジ」

映像のリズムだけで物語というか主人公の心の動きを表現していく卓越した演出力を見せる一本。養子に出されて孤児となった主人公が求める愛の本質をストレートに描いていく。監督はメーサーロシュ・マールタ。デビュー作

 

西洋弓道でしょうか、たくさんの生徒が教師の指示で次々と矢を放っていく。そして軽快な音楽と共にタイトル。児童養護施設で卒業式らしい食事会が行われている。エルジをつけ回す十六歳に少年がいて、適当にいなしたりする。主人公のエルジは二十四年ぶりに小さな村で暮らし母を訪ねることにする。母の暮らす村についたエルジは、母の家になんとか辿りつくが、母は来ないように手紙を出したのだという。母は自分の姪だという設定で今の夫や息子に紹介する。

 

エルジは母の村に行く列車の中で1人の青年に会った。帰りの列車でもその青年に会い、エルジは誘われるままに青年についていって体を合わせる。橋を歩いていたエルジの前に十六歳の少年が現れ、エルジの冗談に合わせて橋から飛び降りたりする。そんな少年をエルジは叱る。

 

施設に戻ったエルジの前に、見知らぬ男性が現れて、話があるという。気乗りしないままにエルジは話をするが、彼は食事代もエルジに頼って来る。そしてエルジの父と自分は親友だったが、彼もその妻つまりエルジの母も死んだと告げる。エルジは話を合わせていたが、最後に、昨日母に会ってきたと答えて別れる。

 

ルームメイトにエルジは、あの男は多分父親だろうと話す。ダンスパーティで、ルームメイトとそのボーイフレンドが踊るが、そのボーイフレンドはエルジが気になり、ルームメイトを差し置いてエルジのところへ行き口づけをして映画は幕を閉じる。

 

巧みなカメラワークとカット割で見せていく作品で、たいそうなドラマがあるわけでもないが、親子の愛、男女の愛、などなど、愛の普遍さを独特の視点で描いていく作品だと思います。デビュー作らしい個性あふれる一本でした。

 

「月が沈むとき」

女から見た愛、結婚、男から見た愛そして結婚の姿を、辛辣な視点で描いていく一本。秀逸なカメラワークと映像演出で語っていく手腕はこの作品も見事で、時にクローズアップ、時に長回しで縫うように捉える会話シーン、壁と部屋を通り抜けていくような移動で、聞こえない心の動きを語らせる演出が素晴らしい作品だった。監督はメーサーロシュ・マールタ。

 

一機の飛行機が空港に着陸してきて、エディトが先日急死した夫の遺骨を受け取りにやってくる所から映画は幕を開ける。遺骨を集団墓地に納骨して、夫の知人達と葬儀を済ませて自宅に帰る。夫は大学の経済学の教授らしい。長男イシュトバーンとその許嫁カティがやって来る。エディトは、夫の年金や相続財産を受け取る気がなく、全て放棄するからと役所へ行く段取りをする。エディトは、保守的で独断的な夫に対し耐え忍んできたという過去を感じていた。

 

夫の知人たちを呼んで夫の蔵書をプレゼントしたり、自身の洋服、おそらく夫に買ってもらったものだろう、を友人に与えていく。そんな母の姿を見るイシュトバーンは、父の名誉が傷つけられるような気がして、母の放棄手続きを阻止しようとする。母を自宅から出さないようにし、別荘に10日間保養してもらおうと許嫁のカティを見張りにして軟禁してしまう。

 

別荘には次男のガスパールも遊びに来ていたが、地元の若者と遊ぶばかりだった。外に出られないエディトは、口実を見つけて、隣人に誘われるように食事に出ていくが、そんなエディトを連れ戻すように息子はカティに頼む。カティは酔っ払ったエディトを別荘まで無理矢理連れ帰るが、イシュトバーンのやり方に賛同できず別荘を出ていこうとする。そんなカティにイシュトバーンは命令口調で戻るように迫るので、カティはそのまま去っていく。ガスパールと友達が楽しそうにふざけながら走り去っていく場面で映画は終わる。

 

男女の結婚観の微妙なずれを、女性目線で辛辣に捉えた語り口が見事な一本で、セリフではなく映像で迫って来る迫力が素晴らしい。クオリティの高い作品でした。