くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「私のすべて」「ブゴニア」

「私のすべて」

フランスという国柄の違いというのもあるが、究極まで追い込まれている一人のシングルマザーの姿の描き方は、正直、なんとも言えない嫌悪感も伴うものだった。物語の描写力、演技の秀逸さはなかなかのものであるが、いくら障害があるとは言え、そしてそれに向き合ってきた苦悩があるとは言え、ああいう行動に走るというのは理解し難い。しかし、そこを見るのではなく、障害のある息子の未来を静かに見つめる母の姿というテーマで見れば、良質のいい作品だったと思う。監督はアンヌ=ソフィ・バイイ。

 

プール、一人の女性モナが飛び込む。そこへ息子ジョエルも飛び込んでくるが、ジョエルはそれなりの歳の男性だが、どこか幼いというか奇妙な子供っぽさを感じる。どうやら、発達障害か何かの障害のある子どもらしい。そんな息子をエステサロンで働きながらモナは一人で育ててきたが、ストレスはマックスに近かった。

 

ジョエルは福祉施設で働いていたが、そこで知り合ったオセアンと恋に落ちて彼女を妊娠させてしまう。オセアンもまた障害のある女性だった。当然、オセアンの両親が激怒し、ジョエルを訴えるとまで言い出す。しかし、モナは冷静に対処する。しかし、ストレスには耐えきれず、バーで知り合った男性フランクと自宅で体を合わせてしまう。ジョエルがそれに気がつき錯乱状態になったがモナがなんとか落ち着かせる。

 

オセアンは、子供を産みたいと言い、ジョエルも二人で育てたいというが、オセアンの母は中絶を望む。しかし、ジョエルたちの気持ちを重視することにする。モナはジョエルと北海へ遊びにいくが、洋服店でモナはジョエルと逸れてしまう。折しも地元はカーニバルのお祭りだった。モナは警察に行方不明届を出し、重圧に耐えられなくなってフランクに連絡をして体を合わせる。しかし、子供の行方不明届を見たフランクはモナと喧嘩して去ってしまう。

 

間も無くしてジョエルは見つかり、モナの別れた夫の家に保護される。モナはジョエルを迎えに行くが、ジョエルはこれからは一人で生きるからと、オセアンの元へ向かう。時が流れ、この日、オセアンの出産日だった。病院に集まるモナやジョエル、オセアンの母たちの姿から、無事産まれた赤ん坊をジョエルらが抱きしめて映画は幕を閉じる。

 

こういう描き方は、ある意味脚本の書き方、キャラクターの描写方法として正しいのかもしれないが、モナの行動は正直言って、嫌悪感を感じてしまった。しかし、映画として描かれる時間より、障がい者のジョエルを育ててきた前後の時間を想像すれば、非常に良くできたストーリー構成だったとも思える。映画作品としては、なかなかの一本だったかもしれない。

 

「ブゴニア」

極彩色のブラックコメディの傑作。サスペンスフルに展開する終盤までの馬鹿馬鹿しいサイコホラー色が、どんどんエスカレートして、あっけなく終わるかと思わせて大どんでん返しして、終末思想を笑い飛ばしてエンディング。例によってのエマ・ストーンの怪演も爆笑だが、終始、クソ真面目な表情にラストは笑ってしまう。サイコキラーを演じるジェシー・プレモンスも曲者男を好演し、とにかく映画を盛り上げてくれる。少々毒々しいグロい映像もちらほら見せるものの、それもこれもラストシーンのフェイクになるからいい。映像も美しく美的センスに彩られ、すっかり魅了される映画だった。監督はヨルゴス・ランティモス。

 

美しい映像でミツバチが花々を飛び回り蜜を集める映像、そしてそんなミツバチがCCDという何やら農薬めいたものの悪影響で減りつつあるというナレーションで映画は幕を開ける。養蜂家のテディと従弟ののドンがせっせと養蜂箱を手入れしている。テディとドンはある計画を進めていた。地球侵略してきた宇宙人と交渉し、人類を守るという崇高な使命である。

 

一方、製薬会社のカリスマ経営者で、様々なメディアにも取り上げられているCEOミシェルは、この日も出社し、定時に退社するようにとわざとらしいほどに周囲をアピールしている。大邸宅の自宅では護身のための格闘技の訓練をしている。この日、いつものように会社を退社して自身の車を運転して帰宅したが、そこに待ち伏せしていたテディとドンに襲われる。ミシェルは、護身術を駆使して反撃したが、麻酔薬のようなものを注射されて気を失ってしまう。

 

気を失ったミシェルを車に乗せたテディはドンに、ミシェルの髪の毛を全て刈らせる。髪の毛は宇宙人との交信の使われるから、阻止するためだという。地下室に拉致されて目を覚ましたミシェルに、テディは、おまえはアンドロイド星人のエイリアンで、地球に紛れ込んで人類を絶滅させようとしているから、自分をアンドロイド星人の皇帝に謁見させて、計画を思い直すように説得したいと申し出る。しかし、なんのことかわからないミシェルは、テディが狂ったサイコパスだと判断し、持ち前の知識で応戦を始める。

 

テディは、ミシェルにいうことを聞かせようと、高電圧の電気ショックを与えるが、その電気ショックに耐えられる姿を見たテディはミシェルがアンドロイド星人の皇族だと判断し、態度を改める。それでも、ミシェルの拘束は解かなかった。テディには、新薬の治験で昏睡状態の母サンディがいた。その治験を行なっているのがミシェルの製薬会社で、サンディは、ミシェルの会社の病院にいた。それに気がついたミシェルはその方面からテディを追い詰めていく。しかし、脱出成功かと思われたすんでのところでドンに襲われて気を失ってしまう。

 

折しも、テディの幼い頃世話をして今は保安官になっているケイシーが、ミシェルの行方不明事件を捜査していてテディの家にやってくる。ケイシーは、怪しいところがないかテディの家で雑談を繰り返し、ついでに養蜂箱を見せて欲しいとテディと共に養蜂箱に行く。その頃、地下で目を覚ましたミシェルはドンを説得していた。テディのやり方に疑問を持ち始めていたドンは、ミシェルの説得に応じ、自分がアンドロイド星人の宇宙船に行くというが、持っていた猟銃で頭を撃って死んでしまう。

 

銃声を聞いたケイシーがテディを逮捕しようとしたが、テディが蜂を解放したので、ケイシーは蜂に刺され死んでしまう。戻ってきたテディにミシェルは、自分はアンドロイド星人の皇族だと告白し、サンディを助けるには、車のトランクに、不凍液の容器に入れた薬品を飲ませば意識を取り戻すと説明、テディはそれを信じて、不凍液を持って母の施設を訪れ、点滴に繋ぐが、母は亡くなってしまう。

 

その頃、ミシェルは、ドンの遺体から手錠の鍵を取り出して脱出、テディの地下室で、テディが集めたアンドロイド星人のスクラップや、過去の殺害の写真を貼ったアルバム、切り取られた肉体の標本などを発見する。戻ってきたテディにミシェルは、自分の計画を遂行するために、一緒に宇宙船に向かうことにする。

 

ミシェルの車で会社にやってきたミシェルはテディと共に自分のオフィスに入り、クローゼットが宇宙船への転送装置だからと、電卓に暗証番号を打ち込む。そして、テディが先にクローゼットに入り、ミシェルがエンターを押すと、テディが身体中に巻いていた爆弾がクローゼットの中で爆発し、吹っ飛んだ首がミシェルを直撃し、気を失ったミシェルは救急車に乗せられる。折しも、テディが言っていた、アンドロイド星人が地球を旅立つ月食の夜だった。

 

ミシェルは慌てて救急車を降り、自分のオフィスに行き、電卓を操作してクローゼットに入る。そして何やら、液体の中からアンドロイド星人の宇宙船に転送された。彼女こそ皇帝だった。しかも、髪の毛を切られたので母船と交信できなかったのだ。ミシェルは、地球の姿を見て、人類はこのまま助けるに値しないと判断して、地球の模型に針を刺す。地球上では全人類が死んでいる景色が延々と映され、映画は終わる。

 

つまり、テディが正しかったのだ。中盤からなんとなく先は読めてきたのだが、エマ・ストーンやジェシー・プレモンスの好演と、見事な映像演出に、先が読めない疑心暗鬼のままラストまで引っ張られた。本当に面白かった。