「旅の終わりのたからもの」
思いの外いい映画だった。いわゆるナチスものの亜流映画ですが、アウシュビッツに送られて生還した父と娘の複雑な思いと、過去を知りたいと突き進む娘の葛藤が、終盤、不思議なくらいに心が通って、それぞれが素直に接するようになるエンディングが胸を打ちます。決して大傑作というものではないが、淡々とコミカルに進む展開が心地よくラストまで見せてくれる良質の一本でした。監督はユリア・フォン・ハインツ。
1981年ワルシャワ、空港で父を待つニューヨークから来たルーシーの姿から映画は幕を開ける。ポーランドで過ごし、強制収容所へ送られた過去を持つ父エデクの足跡と自身も収容所から生還したという過去を真正面からを知りたいとやってきたのだ。一人で行くというルーシーに無理やりついてきたエデクだが、何かにつけ的外れに陽気に振る舞って、ルーシーを翻弄していく。ルーシーが列車で行くといえばエデクは勝手にタクシーを雇い、ステファンという運転手と仲良くなって、ツアーの間中借り切ってしまう。
エデクの故郷ウッチにまず向かいたいルーシーを無視して、エデクは、観光地を回ろうとするが、ルーシーは強引にウッチの地にやってくる。そこには、かつてのエデクの工場があったが、今は寂れて、他人が勝手に使っていた。住んでいた家にやってきたルーシーとエデクだが、そこも別に人物が住んでいた。その家族はエデクが連行された年にここに住み始めたと答える。
住み始めた際に、家に何も残っていなかったという住人だが、エデクはかつて使っていたソファ、さらに母が大切にしていた銀の皿、ティーセットなどを目撃してしまう。その場は早々に引き上げたが、納得できないルーシーは、ホテルのボーイに通訳を頼んで再度訪れ、銀の皿やティーセットを買い戻す。さらに、祖父が使ったらしいコートも手に入れる。
しかし、相変わらずエデクはそんなことに興味はなく、ルーシーの元夫カーズと連絡を取ったり、現地で知り合ったゾフィアという女性と親しく酒を飲んで回っていた。最終の目的地アウシュビッツ収容所を訪れたエデクとルーシーだが、エデクは、かつてここで、連行されて連れてこられた実際の場所を踏み締めて感慨に耽ってしまう。列車に乗ることを拒否したのは、かつて列車でここに連行された日を思い出したくなかったからだとルーシーは知る。
そして、帰国の日、エデクは、ルーシーが買い戻した父のコートを身につけて、空港へ行く前に寄るところがあると、かつての家に行く。その玄関の下を掘ってみると、ここがエデクの所有だと証明する権利証を埋めた缶があった。ステファンのタクシーの中で、缶の中を見ると、一緒に収容所に連行されて死んでいったルーシーの兄妹の写真なども入っていた。こうして映画は幕を閉じる。
ルーシーは、時々、収容所に入れられた時に刺青された囚人番号を必死で消そうとしている場面や、あまりに広大なアウシュビッツを捉えるカメラなど、はっとする演出も散りばめられていて、陽気に振る舞うエデクの忘れたくても忘れられない記憶の残酷さが切々と伝わる一方、記者としての探究心と、過去の悲しい思い出へ向き合おうとする思いが交錯するルーシーの行動も胸に迫るものがあり、いまだに消えない物語に胸が熱くなってしまいました。
「サムシング・エクストラ!やさしい泥棒のゆかいな逃避行」
ほのぼの展開するハートフルコメディという一本。元来この手の障害者ものは苦手なのですが、キレのいい笑いのネタの連発と軽快なリズムが素直に楽しめました。監督はアルテュス。
障害者施設の前、この日、この施設の個性的な人達が、バカンスに出かけるべくバスに乗ろうとしている。施設の前の障害者専用駐車場に一般車が停まっていて、強制的に排除するためにレッカー車を呼んでいる。こうして映画は幕を開ける。その頃、近所の宝石店に、ラ・フレーズとパウロ親子が強盗に入り、宝石を奪って逃げる。途中で服を着替えたが、パウロが準備していたのは派手な旅行客風に服だった。父のラ・フレーズはそんな息子に呆れるが、とりあえずその場を逃げる。
しかし、停めていた車がレッカー移動させられ逃げられなくなる。仕方なく徒歩でこの場を逃れようとしていたが、新しい入居者シルヴァンを待っていた障害者施設の職員アリスは、パウロをシルヴァンと勘違いしてバスに乗せようとする。そこでラ・フレーズも、シルヴァンの介助者だからとバスに同乗する事にする。様々な個性で二人に絡んでくる障害者たちに翻弄されながら、パウロはシルヴァンとして、ラ・フレーズは思いつきでオルピという名でバカンス旅行に参加する。
やがて、郊外のコテージに着いた二人は、障害者たちと関わるうちに、少しづつ心がほぐれていく。サッカー好きなバティストと仲良くなったオルピは、規則通りに塗り絵などで指導していこうとするアリスたちに反抗して、自由にやりたいことをさせるべきだと行動する。近所のスーパーに買い出しに行き、障害者達の中での恋を成就させてやったりする中、シルヴァンはアリスに恋心を抱いていく。
川遊びをし、缶詰ばかりの食事を拒否して料理をし、障害者達に自由にさせていく中で、シルヴァンもオルピも、これまでの荒んだ日々を振り返るようになる。ところが、スーパーで、シルヴァンは強盗をした時に顔を見られた女性と遭遇してしまい、間も無くして警察がやってくる。オルピは逃げるというが、シルヴァンは、このまま自首すると逮捕されていく。
そして四ヶ月後、刑期を終えたパウロ=シルヴァンは、この日施設のメンバーとクリスマスパーティーをしていた。そこへ自首して逮捕されたラ・フレーズがやって来る。そしてバティストに、ロナウドの本物のユニフォームをプレゼントしてやり、施設職員に一通の封筒を渡す。ラ・フレーズが帰った後封筒を開けると、コテージの権利証だった。ラ・フレーズは、コテージを施設にプレゼントしたのだ。パウロとアリスの恋も成就し映画は幕を閉じる。
本当にハートフルなコメディで、小さな小ネタを散りばめながら微笑ましく展開する様が楽しい。実際の障害者を使ったというよくある設定はあざといとはいえ、小品として楽しめる作品でした。

