「正義廻廊」
2013年香港で起こった両親殺害バラバラ事件の裁判を描いたいわゆる法廷劇で、終始法廷内のドラマが中心で迫真の展開は特に後半グイグイ引き込まれていきます。実話なので面白いという表現が正しいかはともかく、丁々発止のドラマを楽しんだ一本でしたが、サスペンスなのか、何かのメッセージなのかがどっちつかずという感じに映画だった。監督はホー・チョクティン。
2013年、ヘンリー・チョンは、両親を殺害しバラバラに切断して、首を冷蔵庫に隠した事で、殺人の容疑で逮捕される。しかし、それ以前に、ヘンリーは両親が失踪したとしてネットにアップしていた。しかし直後、殺害を同じくネットに自白して逮捕された。ヘンリーは友人のアンガス・トンと事件を起こしたということで二人は逮捕される。2012年、2011年と遡って、ヘンリーとアンガスの知り合った経緯を描いた後、逮捕後、法廷に出廷して本編へ傾れ込んでいく。
陪審制で裁判をするという最初の宣言で陪審員が選定されるが、どれも皆、陪審員に選ばれることは否定的で、嫌々ながら参加する。そして始まる裁判。ヘンリーは陳述を拒否し、アンガスが中心の法廷ドラマへと流れていく。ところが、共犯でヘンリーと共に殺害に加担したとされたアンガスは、一転して、殺害には加担せず死体遺棄のみに加わったと供述を翻す。そして、自白は警察の取り調べの際の強要であること、自分はIQが低くて、とても殺人を行うことは難しいなどと徹底的に、知能が低いことをアピール。姉の証言もその一点に集中し、弁護側も加わって、法廷は迷宮にはまりこんでいく。
陪審員も倫理観や感情に揺れ動き始め、ヘンリーの容疑には全員有罪を投票するがアンガスについては、無罪を投票するメンバーが現れ、判決の場で、アンガスには死体遺棄についてのみの求刑一年が行われ、裁判にニ年もかかったことで即時釈放となる。一方ヘンリーは、殺人と死体遺棄で無期懲役という求刑になる。しかし、この判決が正しかったかどうかの謎がそれとなく残り、アンガスは、施設のようなところで姉の傍で、被害者の如く振る舞う姿から、蜘蛛の巣の中でとらわれるアンガスのシュールな映像で映画は終わる。
実話を元にしているという点で考えると、何かを訴えんとしているかとも思えるが、一方で商業映画としてのサスペンスもそれなりに描いているので、その面白さを楽しむものかと考えてしまう。どういう方向を目指した作品か少し悩んでしまう一本だった。
「道行き」
古都奈良の街並みを物語る映像で淡々と語っていく美しい作品で、ドキュメンタリータッチの展開にドラマ性を盛り込んだ実験映画的な一本だった。監督は中尾広道。
山間を縫って行く列車の窓からの景色をカメラで撮影している映像で映画は幕を開ける。奈良の古民家を老人梅本から購入した青年駒井は、この街の時の流れを梅本から語られて行く。購入した古民家は梅本の祖父が時計職人であったり、四季の移ろいをとらえながら時間の流れを辿って行く物語はノスタルジックである。これというドラマはなく、駒井が古民家の改修を進めながら、街並みを歩いたり、梅本や、この街に住む老人たちに話を聞いたり、近所を走るローカル列車で取材をしたりというエピソードが淡々と語られて行く。そして、冬が来て、粉雪が舞い始めて庭を白く染めていって映画は終わる。
なんのことはない一本で、美しい古都奈良の景色を楽しみ、悠久に浸るひとときを体験する作品だった。
