「プロジェクト・ヘイル・メアリー」
思っていた以上に良かった。おそらく原作がいいのだと思うけれど、人類滅亡を救うと言う重いストーリーながら軽いタッチで描いていく息苦しさのなさが、終盤にかけてどんどん効果を発揮していって、ラストは、SF的なテーマ以上にヒューマンドラマとして収束する作りがとにかくいい。映像もエイリアンの造形も楽しくて、映画的にも楽しめた。なかなかのSF作品でした。監督はフィル・ロード、クリストファー・ミラー。
一人の男グレースが、宇宙船の中で昏睡状態から突然目覚めたところから映画は幕を開ける。思わず嘔吐し、周りを見ると、船長のヤオも技術担当イリュヒナも死んでいた。とにかく目の前の装置を手当たり次第に触り、なんとか落ち着く。そして、自分がここに居る理由を必死で探り始める。宇宙飛行士なのになんでこんなに狼狽えるのかはラストまで明らかにされない。
グレースは過去の記憶を必死で呼び起こし、それがスクリーンサイズを変更してフラッシュバックとして挿入されていく。グレースは中学教師で、この日、最近発見されたペトロヴァラインについて説明していた。あと三十年もすると地球の気温が10度以上下がり、生存が危うくなる。しかしグレースは誰かがアイデアを思いつき乗り切ってくれるだろうと楽観的に説明する。その帰り、グレースは政府機関のエヴァという女性に声をかけられ研究施設に連れて行かれる。
実はグレースは、生物化学の分野で研究をしていたが、自説が受け入れられず学会を追われて中学教師になっていた。グレースはエヴァに連れられていった研究施設でカールという研究員と知り合い、最近、ペトロヴァラインから採取されたアストロファージという物質の分析を依頼する。グレースは、さまざまな視点で物質を分析し生物であることを発見、さらに、増殖することも突き止める。
アストロファージは、莫大なエネルギーを蓄えていて、これを利用すれば恒星間飛行が可能だと説明する。実は、金星から太陽に向けて伸びるペトロヴァラインは、銀河のあちこちで侵食を繰り返しているが、一点、影響を受けていない惑星タウ・セチがあり、その調査をすれば解決策が見出せると政府は考えていた。そこは、地球から11光年以上かかる場所にあった。アストロファージを使うにしても増殖する時間が足りなくて片道分しか用意できないことがわかる。
グレースが乗っている宇宙船は目的の座標に近づいてエンジンは停止するが、そこに別の宇宙船が存在することが判明する。しかも、グレースが自身の宇宙船で離れようとしても近づいてきて、何か筒に入れたものを送りつけてくる。グレースは慣れない船外活動でそれを手に入れる。それはエイリアンの存在を示すものだった。さらに、エイリアンの宇宙船からドームが伸びてきてグレースの宇宙船と連結、グレースが恐る恐るそのドームを進んでいくと、その境界線にガラスのような壁がありその壁の向こうに岩の塊のようなエイリアンが現れる。
グレースはパソコンを使って、エイリアンの言葉と自身の言葉を記録して分析し、会話できるようにする。どうやらそのエイリアンもアストロファージを破壊して自身の星エリドを助けるために来たことがわかる。しかもそのエイリアンのクルーもみんな死んで彼一人だった。岩のような姿のエイリアンにロッキーと名をつけて、グレースは協力してアストロファージの対策を研究し始める。そしてタウ・セチ上空に、アストロファージを食べてしまう捕食者が存在することが判明、二人はその捕食者をタウメーバと名付けて回収してそれぞれの星に送ることにする。
グレースの宇宙船は片道の燃料しかなく、任務が終われば死が待っていたが、ロッキーは自分の燃料を分けるから地球へ帰るように提案する。やがて、タウ・セチ上空に差し掛かった二人は、釣り竿のような採取装置を投下し、それを船外に出たグレースが回収する作業を開始、危機一髪でグレースはそれを回収して船内に戻るが、宇宙船の脱出の過程でエンジンが破損、燃料タンクを切り離して惑星からの脱出を試みる。しかし、船内の混乱で、グレースは気を失ってしまう。カプセル内にいたロッキーは必死でカプセルを破壊してグレースを救命装置に移動させ、燃料タンクを切り離して宇宙船を脱出させるが、自らは瀕死の状態になってしまう。
生命維持装置で気がついたグレースは、ロッキーはカプセルの中で意識を失ったままだった。グレースは、ロッキーのことを諦めたが、間も無くしてロッキーは元気に蘇った。そして二人はそれぞれの宇宙船に戻り別れていく。グレースは地球へ向かったが、突然、エンジンが急停止してしまう。キセノンカプセルに保管していたタウメーバが外に出てアストロファージを侵食していた。同様のことがロッキーの宇宙船にも起こっていると判断したグレースは、タウメーバをカプセルで地球に送り、ロッキーの宇宙船を目指す。
過去、宇宙飛行士、技術者、科学者を乗せた宇宙船が準備されたが、突然、基地が大爆発し、科学者チームが全滅する。そこで目をつけられたのがアストロファージに詳しいグレースに目をつけ、強引に昏睡状態にして宇宙船に乗せた。
グレースはロッキーの宇宙船に遭遇、決死の覚悟でトンネルを抜けてロッキーの宇宙船の境界に辿り着く。必死で呼びかけるグレースに、ロッキーが現れる。地球では、グレースが送ったタウメーバをエヴァたちが増殖作業を進めていた。場面が変わると、地球の海岸のようなところで佇むグレース、実はロッキーの星でロッキーが作った仮想世界だった。いつでも地球に帰れるというロッキーに、グレースは、教師のように授業を始める。聞いているのはロッキーの星の子供達だった。こうして映画は終わる。
軽い音楽を挿入しながら、リズミカルに展開するストーリーがなかなか見せてくれるし、タウメーバを確保する場面の緊張感溢れる展開の一方、グレースとロッキーの心の交流を描き、最後の最後まで二転三転させるストーリー構成も面白い。原作はあくまでハードSFではあるけれど、映像化するにあたってのエンタメ色がうまくマッチング出来た一本だった。
「砂丘」
1970年という製作年度から、未来を模索する若者たちの姿を淡々と描くなかで、シュールな映像を組み合わせた演出が、さすがに面白い。ザブリスキー・ポイントでの抱き合う場面に次々とカップルが現れて、渓谷内に大勢が抱き合うシーン、ラストは妄想なのか現実なのかと思わせるカットで締め括ったりと、凝った絵作りもなかなかの作品だった。監督はミケランジェロ・アントニオーニ。
大学紛争真っ只中、学生たちが集まって議論する場面から映画は幕を開ける。虚しい議論に嫌気がさしたマイクは、ピストルを買い、学内で弾圧行動を行う警官隊の前に立つ。しかし、結局発砲することなく逃走して、飛行場でセスナ機を奪って飛び立つ。一方ロサンゼルスの不動産会社で秘書として働くダリアは会議に参加するために車で広大な砂漠を走っていた。
ダリアの車の前に、マイクのセスナ機が現れ、ちょっかいを出してくる。そしてとうとうダリアは車を降りてセスナ機に対峙する。セスナ機を近くに着陸させたマイクはダリアのところへ行き、二人で車で走り、ザブリスキー・ポイントという、かつて湖だったが隆起して枯れた状態の観光地にたどり着く。そこで二人はじゃれあっているうちに抱き合い、愛を求め合う。いつのまにか二人の周りに同様のカップルが抱き合い、カメラが大きく引くと渓谷内に無数のカップルが抱き合っていた。
マイクはセスナ機に派手な絵をペンキで描く。ダリアは、飛行機盗難事件をニュースで聞いていて、マイクに車で逃げようというが、マイクは、滑走路の外れに降りてそのままに逃げるつもりだと答え飛び立っていく。飛行場では盗難届を受けた警官たちがマイクのセスナ機を待っていた。マイクは滑走路に降りたが周りをパトカーで囲まれ、発砲されて死んでしまう。
ダリアは、そのニュースを聞きながら涙し、やがて目的の別荘地に辿り着く。その別荘地は、広大な砂漠の中にあるのにプールがあり、豪邸の装いをしていた。中では顧客たちが次の事業の計画を話していた。社長からはダリアが来たことを歓迎されたが。ダリアは邸宅を出て、車を降りて別荘を振り返ると、別荘が大爆発する。それが妄想なのか現実なのか不明なまま、夕陽の中へダリアの車が走り去って映画は終わる。
時代色が窺える作品ではあるけれど、映像で表現するという基本的な手腕が光る一本で、最近ではこういう演出ができる監督が減った気がするなと思ってしまう映画だった。

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