「北の螢」
極寒の北海道を舞台に、赤と黒を基調にした色彩演出と構図で描き切った男と女の濃艶なドラマ。その重厚感はさすがではあるけれど、全体に非常に平坦な作りで、胸に迫る何物かが今一つ物足りない。決して出来の悪い映画ではないけれど、五社英雄監督作品の中では中レベルという一本だった。
明治、北海道の開拓に力を注ぐ明治維新政府だったが、極寒の地の開拓に難渋し、北海道に囚人を送り込んでその開拓に当たらせることにする。樺戸集治監を統治する監守いわゆる典獄は、月潟剛史という男だった。真っ赤なマフラーを巻いた月潟が、この日馬に乗って流鏑馬の如く藁人形を斬る姿から映画は幕を開ける。鬼の典獄と呼ばれる月潟は、容赦なく反抗する囚人を独房に入れ、開拓のための道路建設に極寒の地に囚人を送り出していた。
ある時、脱走した囚人を捕らえて戻った看守が、行き倒れのゆうという女を連れ帰る。ゆうは京都出身で、この獄舎に収監されている男鹿を助けるためにやってきたのだった。月潟は、自分の情婦つまが女将をしている女郎屋にゆうを預ける。内務省の開拓長官石倉がやってきたので、知事の座を狙う月潟は、賄賂とゆうをあてがってやる。しかし、ゆうはその見返りに男鹿の赦免を請うてくる。
謁見した男鹿は、ゆうに月潟を殺すように命ずる。そんなある夜、月潟は刺客に襲われ目を負傷してほとんど見えなくなる。更に、政府から典獄の職が湯原という男にかわる話が出てくる。その代わり北海道に設置する予定の知事職をちらつかせる。しかし、月潟は、目標としている道路建設が完成するまでは典獄としての地位を望む。遅々として進まない道路建設に業をにやした月潟は、現場へ叱咤に行くと言い出すが、それを副典獄木藤が自分が行くと言い出す。そして行く前に情婦のところへ行くが、情婦に刺殺されてしまう。
月潟は自ら道路建設現場へ向かうが、その頃、現場では男鹿の指示で氾濫が起こり、囚人たちが看守たちを殺していた。そこへやってきた月潟とゆうも捉えられ、男鹿らと脱走に同行することになる。しかし極寒の北海道は、月潟らに容赦なく襲いかかり、更に途中休んだ屯田兵の宿舎で休んでいるとヒグマに襲われ、月潟や男鹿らだけが逃げられた。そして雪の下に石狩川を見つけた月潟だったが、海の方向を示したものの、男鹿たちは逆方向だと強引に自分たちが目指す方へ進む。ところが目の前に樺戸集治監が見えてくる。結局、彷徨った挙句元の場所に戻ったのだ。
月潟はゆうを抱いて集治監に行くと、新典獄湯原が赴任していた。月潟はゆうと一緒に監房に入り、二人は暗闇の中で踊りながら映画は終わっていく。
ストーリー展開がちょっと平坦すぎて、男と女の情念の物語か、北海道開拓に熱意を持つ月潟の話か、はたまた権力を求める月潟の話かがややそれぞれぼやけてしまい、もう少し緩急があったらもっと劇的に迫ってきた気がします。絵作りはさすがだと思いますが、クオリティは普通だったように思いました。
「ハウス・オブ・ザ・デビル」
悪魔崇拝者に捕まった主人公が体験した事実に基づく作品らしいが、怖がらせは実にうまく構成されている。淡々と主人公の疑念が募っていく様をひたすら描いて、一気にラストで恐怖を浴びせかけてくる。そして、不気味なエピローグで締めくくるのはなかなかの仕上がりのホラー映画でした。監督はタイ・ウェスト。
女子大生のサイモンが、一軒のアパートの下見に来ている場面から映画は幕を開ける。大学寮のルームメイトがいい加減で、潔癖症にサイモンは寮を出ようと考えていた。気に入ったので契約をし、家賃一ヶ月分を月曜日に支払うことになる。大学寮に戻ったサイモンは、ルームメイトがボーイフレンドとSEXしているらしく、とりあえず時間を潰しに外に出る。
大学の求人掲示板でベビーシッター募集を見つけたので公衆電話から電話をかけるとすぐに折り返してきて今日会うことになる。ところが、約束の場所に現れず、友人のメーガンとピザを食べながら愚痴を言い、仕方なく寮に帰るが、そこに電話がかかっていた。折り返して電話をして、今夜、早速その家に行くことになる。友人のメーガンの車で行ったがメーガンは乗り気ではなかった。メーガンも一緒に屋敷に入り出迎えたウルマンという男性と話をしてみたら、ウルマン夫婦には子供がいなくて実は義母の面倒を見て欲しいという。一旦断ったサイモンだが、400ドルというは価格の報酬に、仕事を受けてしまう。メーガンはサイモンの融通不断さに怒って、深夜迎えにくると言って帰ってしまう。
ウルマン夫妻はサイモンを残して出かけてしまう。出がけにピザ店の電話番号を置いておくので電話するようにと勧める。おりしも皆既月食の夜だった。気分を害したメーガンが車を走らせ、休憩に車を止めてタバコを吸おうとしていたら突然男がライターを差し出してきた。驚いたものの、メーガンはとりあえず火を借りると男は、ベビーシッターかと尋ねてきた瞬間ピストルでメーガンを撃ち殺してしまう。
サイモンは、メーガンに謝ろうと家に電話をするも連絡がつかず、とりあえず、テレビを見たりして時間を潰して行くが、することもなくあちこちの部屋を回り始める。二階にいるという義母の気配も分からず、とりあえずピザを頼んで、配達してきたピザ屋に金を渡して受け取り、食べながらテレビを見るもピザが異様に不味くて捨ててしまう。ピザを配達してきたのはメーガンを撃ち殺した男だった。
サイモンは、何度メーガンにかけても連絡がつかず、警察に電話をするがすぐに切ると折り返し警察から電話が来た。間違いだったと答えたものの不安が募り、包丁を手にしてあちこち部屋を回っていると、排水口から何やら音がするので浴室に行ってみると、髪の毛が大量に落ちていた。おかしいと思ったサイモンは、二階へ行ってみるが、なぜか気分が悪くなり廊下で気を失って倒れてしまう。どうやらピザに何か入っていたらしい。
サイモンが目覚めると、仰向けに大の字に貼り付けられ拘束されていた。周囲に、ウルマン夫妻とピザ配達の男、そして不気味な姿の女がいた。不気味な女がサイモンの腹の上に何やら血で五芒星を描き、口から血を飲ませ始める。サイモンは暴れ回ると、拘束していた紐が解け、サイモンは必死で逃げる。そして襲いかかってくる男やウルマン夫人を刺し殺し、警察に電話をするも話す暇もなく外へ飛び出す。不気味な女の幻覚がサイモンを襲い、何かに憑かれたように逃げる。そこへウルマンが追いついてくる。落ち着くようにというウルマンの言葉に逆らってサイモンはピザ配達の男から奪った銃で自分の頭を撃つ。
サイモンは病院に担ぎ込まれていたが意識はなかった。看護婦がやってきて、必ず助かるからと言葉をかけて、二人ともと言ってサイモンのお腹をさすって映画は終わる。
まあ、よくあるホラーストーリーという作品ですが、ストーリー構成が実に上手く、無駄なく一気に怖がらせる演出は、なかなかのものです。楽しめる一本でした。
