くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「人はなぜラブレターを書くのか」「FEVER ビーバー!」

「人はなぜラブレターを書くのか」

いい映画だった。様々な人たちが繋がり、未来に向かって行く様が、時に切なく、時に勇気づけられ、時に人生を振り返り、そして前に進んでいく。心の染み渡る深い感動を残してくれる秀作でした。画面もとても美しいし、色彩演出も見事、そして登場人物それぞれが生き生きと人生を生きている姿が素晴らしい。演技陣も静かながらも的を射た見事な演技で作品を厚みのあるものに仕上げている。全般的に非常にクオリティの高い仕上がりの一本でした。監督は石井裕也。

 

電車の中、一人の女子高生が、参考書を見つめる青年を見つめている場面から映画は幕を開ける。お互いに意識しているものの声をかけるわけでもなく暗転してタイトル。2024年、定食屋を営む寺田ナズナは、この日も忙しくしていた。塩むすびにこだわったメニューが人気で、店の合間に畑に行って野菜を収穫する日々だった。夫良一はそんな妻の体を労わりながら一人娘の舞との平穏な日々を暮らしていたが、舞は母が何かを隠している雰囲気を感じていた。

 

ナズナは、富久信介という人物に一通の手紙を書き、ポストに投函しようとするが躊躇ってバッグにしまってしまう。時が遡り、24年前、女子高生のナズナはいつも乗る電車で見かける青年に心を惹かれていた。しかし名前もわからず、もどかしい日々だった。電車内で痴漢にあったナズナは、その青年にさりげなく助けられ、その際、青年からハンカチを手渡される。ナズナはそのハンカチを返すことさえ勇気が出なかった。

 

ある時、友達とファミレスに入ったナズナは、背後に、友人らと座るあの青年と遭遇する。お互いに意識していたが、お互いに声をかける風もなかった、後日、ナズナは友人から、後ろに座っている青年はボクシングをしていて大橋ジムというところに通っていること、麻布高校のエリート高校生であることを知るが名前まではわからなかった。

 

青年の名は富久信介と言った。口数は少ないが、筋の通った性格で、ジムでチャンピオンを目指す川嶋と親しくなる。川嶋は、自分と同じような空気を持つ信介と、未来を見つめ、頂点に立つ夢をだくようになる。2024年、ナズナは出せなかった信介への手紙をカバンに入れて持ち歩いていたが、娘の舞は、たまたま自分が書いたラブレターをナズナに相談した際、父良一が帰ってきたのでナズナのカバンに隠し、それを取り出そうとした際にナズナの手紙を見つけて読んでしまう。

 

舞はその手紙をナズナが営む食堂の店員に相談するが、罪悪感から店に置いてあったナズナのカバンに戻す。しかしそのカバンは、ナズナが店員にプレゼントした自分と同じ柄のカバンだった。店員が帰りがけ、手紙が自分の鞄から落ちたのを見て、差出人がナズナになっていたことから、食堂の手紙と一緒に投函してしまう。

 

ある夜、信介の両親晴子と隆治のもとに大橋ジムの会長から電話が入る。一通の手紙が届いたという。そこで隆晴らが手紙を取りに行き、文面を読んで、高校時代の信介の知らない一面を知る。24年前、信介は、家を出遅れて駅に向かう。いつも乗る列車に乗るつもりだったが、乗り遅れて目の前で扉が閉まる。ところがそこにナズナがいた。

 

ナズナは意を決してラブレターを渡すべく準備し、ハンカチにパンチの刺繍をして持っていた。ナズナはパンチの刺繍を信介に見せるが列車は発車してしまう。信介は仕方なく次の列車に乗るが、その列車は脱線事故を起こし、信介は亡くなってしまう。それを知ったナズナは駅に向かう。やっと名前を知ったのに信介はいなかった。米屋のバイトをしていた川嶋もまた信介の死を知る。

 

2024年、ナズナは、ガンが再発していた。五年前に子宮摘出して、癌を克服したと思われたが、転移して、抗がん剤治療を行うことが決まっていた。しかし、舞に言い出せない日々が続いていた。そんなある日、信介の両親からナズナに手紙が来る。ナズナが信介宛に書いた手紙の返事だった。その文面には、無口で何をしているかわからない息子の信介に隆治らが、信介がちゃんと恋をしていたことを知り喜んだ旨のことが書かれていた。信介が亡くなってから毎年線香をあげに来る川嶋は、この日タイトルマッチだった。そして、信介との約束通り見事世界チャンピオンになる。

 

ナズナは決心して舞に癌の再発のことを告白する。舞は、将来医者になるという夢を語る。間も無くして、ナズナは亡くなってしまう。この日、舞の受験の日だった。良一は舞を駅に送っていき、自分のために受験頑張れと励まして、舞と別れるが、つい涙が溢れてくる。ここからは私の物語が始まるという舞のセリフで映画は幕を閉じる。

 

とにかく、映像が美しいし、次々と登場人物のドラマが変遷して行く作りが秀逸で、それぞれのドラマが鎖のようにつながって行く様にどんどん引き込まれて行く面白さがあります。それでいて、どの人物のドラマも丁寧に演出されていて、それぞれがそれぞれに見ている私たちに迫ってくる展開に胸がジワジワと熱くなっていきます。本当にいい映画でした。

 

 

「FEVER ビーバー!」

サイレント映画のドタバタ劇的な展開で、シュールかつコミカルな映像と、毒のある展開がとにかく面白い。アニメチックな絵作りとモノクロームの画面が独特の世界を生み出している、いわばモダンアートのようなファンタスティックな作品だった。監督はマイク・チェスリック。

 

りんご酒売りの仕事を失い、森のハンターとなった男は毛皮の取引所で一人の女性と出会い好きになってしまう。男は父親に交際を認めてもらおうとするが、父親は何百匹ものビーバーの毛皮を手にれるように要求してくる。男はハンターの知識を総動員し、張り巡らせた罠を改良しながら、ビーバーとの攻防戦を繰り広げて、ついに何百匹ものビーバーを手に入れるが、すんでのところでビーバーに騙されてビーバーに捕まり、ビーバーの砦で裁判を受ける。しかし、持ち前の知識を総動員して脱出、獲物のビーバーも手に入れてついに女性を手に入れ映画は終わる。

 

とにかく、手を変え品を変える男とビーバーとの攻防戦の丁々発止が面白い。コマ落としの映像と、繰り返す小ネタの数々、オリジナリティあふれる映像に飽きることなくラストまで突っ走ってしまいます。楽しい一本でした。