「サムライ」
一流の監督が作る一流の映画というのはこういうのをいう。アンリ・ドカエのカメラが恐ろしく美しいし、淡々と流れるストーリーに不思議なほどに芸術的な空気が漂っている。にもかかわらず、物語は一人の孤独な殺し屋の姿を描いたフォルムノワールである。プロフェッショナルな出で立ちの主人公が、警察の盗聴を見事に見破り、大勢の警察官に尾行されているのを地下鉄で見事に巻いてしまう。そして男の美学を体現するラストに何ともいえない哀愁が漂う。これが名作。良いものを見たという感想だけが残る傑作だった。監督はジャン・ピエール・メルヴィル。
ベッドと鳥籠くらいしかない殺風景な部屋、ベッドの傍から上がるタバコの煙、そんな場面から映画は幕を開ける。タイトルが終わると、主人公ジェフがおもむろに起き上がる。彼は一匹狼の殺し屋で、これから仕事に向かう。アパートを出たところで車を盗み、いつも行くところでナンバープレートを交換し、アリバイのために愛人のジャーヌのところへ行き、続いてカードをしている賭場に行って、自分が何時からここにいるかを手短に説明する。慣れた姿である。
ターゲットはクラブに居た。ジェフはクラブにさりげなく入り、ターゲットのクラブの経営者の部屋へ行き、銃を放つ。そして部屋を出ようとして一人の女ヴァレリーと出くわして顔を見られてしまう。彼女はこのクラブのピアニストだった。犯行後、ジェフは警察に拘留され、クラブの従業員やピアニストの女から面通しをされたが、ヴァレリーは、ジェフではないと断言され、さらにジャーヌのアリバイ証言も受け入れられて釈放される。しかし、本部長はジェフが有力な容疑者であると尾行をつける。
ジェフは雇い人との仲介人、金髪の男との約束の場所へ行き金を受け取ろうとしたが仲介人に銃で撃たれて負傷してしまう。警察はジェフの部屋に盗聴器を仕掛けるが、ジェフは鳥籠の鳥の様子から、部屋に誰かが侵入した事を知り盗聴器を発見する。ジェフは、ヴァレリーが何故嘘の証言をしてくれたか探るためにヴァレリーに近づき、彼女の家に行く。ヴァレリーは結局、何も話してくれず、二時間後に電話をして欲しいとジェフに言うが、ジェフが電話をしても出なかった。やむなく自宅に戻ったジェフだが金髪の男がいて、新たな仕事を依頼してくる。ジェフは金髪の男に襲いかかり拳銃で脅して依頼主の名を聞き出す。本部長はジャーヌが嘘の証言をしていると判断し、偽証罪をちらつかせて脅すがジャーヌは受け入れなかった。
本部長は、大勢の署員を動員してジェフを尾行させる。ジェフは、地下鉄を巧みに乗り継いで尾行を巻き、車を調達して、ナンバープレートを変えてジャーヌの家を訪れる。さらに、雇い人のオリビエという男のもとへ行き、オリビエを撃ち殺す。そこはヴァレリーのアパートの傍でもあった。オリビエは、ヴァレリーを通じて自分のことがバレるのを恐れ、ジェフにヴァレリーを殺害するように依頼していた。
ジェフは新たに依頼された仕事のためにクラブへ行く。新たな仕事とは、ヴァレリーを殺すことだった。ピアノの前に座るヴァレリーのところへジェフがきて銃を向けるが、突然周囲から銃弾を浴びてジェフはその場に崩れる。本部長らがクラブに張り込んでいたのだ。本部長がジェフのピストルを調べると弾は入っていなかった。こうして映画は終わる。
孤独な殺し屋の美学を流麗なカメラワークと美しい映像、淡々と流れる静かなリズムで描き切った傑作。こういう一級品を見せられると、いまの映画がいかにレベルが低いかと思う。素晴らしい作品だった。
「オリビアと雲」
独創的なアートアニメという感じの作品。これというわかりやすいドラマはなくて、多彩なアニメテクニックを駆使して描く心象世界のような一本。面白いというより、様々な映像の展開を楽しむという映画なのですが、技術的には稚拙なので、正直、退屈なところもあった。映像は面白くてもリズムがないので、それが原因かもしれない。監督はトマス・ピチャルド=エスパイヤ。
オリビアとラモン、マウリシオとバルバラの物語のようだが、最初は植物だったのが、何故か成長して人間になったり、今時の仕事をしているかと思えば、どこかシュールであったり、過去の恋に思いを馳せたり空想世界に現実逃避したりする様をアニメ表現で描いて行くらしいが、ほとんど把握できなかった。
非常に評価が高いので、どれほどのものかと思ったが、ほとんど、制作スタッフのイメージをアニメにしただけで、観客に語らんとする物はほとんど感じられなかった。
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