くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「スクラップ・ヘブン」

「スクラップ・ヘブン」

オダギリジョーのオーバーアクトが最後まで画面を覆い尽くし、ドタバタ劇のような展開で進んで行く前半から、次第に何かしらの監督の言わんとする事、やりたいことが見えて来て整理がついて来ると、徐々に面白くなって来る。そんな個性的な一本だった。監督は李相日。

 

事務仕事ばかりしている刑事のシンゴは、この日も上司から偉そうに言われながらも、精気のない対応をして仕事をこなしている。トイレ掃除を仕事にしているテツは、隣に駆け込んできた男にいたずら半分に絡んでいる。薬剤師のサキは、調剤機にマーブルチョコレートを入れている。そんな三人三様の姿から映画は幕を開ける。夜、その三人は一台のバスに乗り帰路についていたが、なぜか道が違うことにテツが気がつき、運転手に詰め寄ると、そこにバスジャックの男が拳銃を持って立っていた。男は代議士秘書らしく、責任を取らされて自暴自棄になっていた。男はロシアンルーレットを仕掛け、まず自分を撃つが弾が出ない。続いてテツたちにじゃんけんをさせ、テツが次の順番になるがテツが躊躇していると犯人は銃でテツを撃つと弾が出てテツは倒れる。サキは、右目が義眼であるのがばれてしまい涙を流す。続いて犯人は自分に再度銃口を向けると弾が出てしまう。その事件から三か月が経った。

 

例によって、余計なことにかかわらずに生きているシンゴは、地下道で男たちがしつこい勧誘をしているのを横目に見ていたが、そこにテツが通りかかり、その男たちを挑発して逃げる。ところが、大勢に取り囲まれて万事休すとなった瞬間、シンゴは警察バッジを見せてテツを助ける。後日、テツからシンゴに電話が入る。

 

テツは、シンゴを町外れの汚い公衆トイレに誘い、誰かに復讐したい人間の要望を聞く仕事をしようと誘う。最初にそのトイレにやって来たのは、医療ミスを隠蔽しようとした病院長を懲らしめて欲しいというものだった。シンゴとテツは、その院長に訳のわからない注射を打って復讐する。続いて、虐待されている小学生が母親に復讐して欲しいとやって来る。シンゴらは、その母親をあちこち駆けずり回らせ、子供の指や手を切り落とす写真を送りつけて懲らしめて、復讐を遂げる。

 

そんな頃、サキは、薬を精製してニトログリセリンを抽出していた。それをテツらに見せつけて、何もかもを終わらせてしまいたいと呟く。テツの父親は精神病院に入院していて、テツは何かにつけて顔を出していたが、ある日、その父親は突然窓から飛び降りて死んでしまう。シンゴは、職場で上司から、会計書類の隠蔽をやらされたことから、警察へ復讐したいと考え、テツとシンゴは、警官の銃を奪い警察を困らせることにする。そして派出所に忍び込んで二丁の銃を盗み、町外れのトイレに隠す。後日、警察署で、シンゴの所にベテラン刑事の薮田がやって来て、盗まれた銃の一丁がホームレスに使われて子供が被害にあったと知らせる。

 

慌てたシンゴが、銃を隠したところへ行くと、銃はなかった。そこに薮田が現れ、シンゴは薮田に殴られる。そんな頃、テツは警察署にやって来て、銃を発砲し、捕まってしまう。シンゴはテツの事情聴取をさせられるが、テツは途中でトイレに立ち、トイレに隠していた、サキにもらったニトログリセリンをとって戻って来る。テツの言い分に耐えられなくなったシンゴは、テツに殴りかかる。刑事に引き離されたシンゴが部屋の外へ行くと、爆発音が聞こえる。

 

サキは、ニトログリセリンをカバンに詰めて何処かへ去ってしまう。シンゴは、ニトリグリセリンを弄びながら海岸を歩いていたが、道路に投げつけようと空に投げ上げる。しかし落ちて来たニトログリセリンは通りかかった車の荷台に落ちて車は走り去ってしまう。それを見送るシンゴの姿で映画は幕を閉じる。

 

リアリティは無視して、行き場を失い、何者かへの怒りと孤独に苛まれた若者たちのがむしゃらな姿を描いた青春ムービーという作品で、細かいカットのオープニングから、やり過ぎ感満載の展開、そしてリアリティよりも語りたい何かをグイグイと見せてくる後編への構成が、バイタリティに溢れていて面白い。若き日の李相日監督の個性が光る一本だった。