「ゼイ・ウィル・キル・ユー」
変わり種ホラーという感じで、結構面白かった。巨大なマンションは「シャイニング」を思わせるし、狭い床下のバトルも面白い。悪魔崇拝があまりに極端な設定になっていてよく分からないが、主人公がとにかく不死身で好戦して行く様も痛快。少々ラストに向かってマンネリ化して来て、もうちょっといろんな工夫も欲しかったが、まあこの手のホラーはこの程度の出来なら十分という一本だった。監督はキリル・ソコロフ。
一人の少女エイジアが妹マリアを連れてドラッグストアに逃げ込んでくるところから映画は幕を開ける。どうやら暴力を振るう父親から逃げて来たらしく、隠れていたが、父親が現れ、エイジアはマリアを連れて脱出しようとする。しかしマリアが万引きしていたので、出口で警報が鳴り見つかってしまう。エイジアは追って来た父親をピストルで撃つが、父親はマリアの足首を掴んだまま離さなかった。仕方なくエイジアは一人逃げる。そして十年が経つ。
この日、エイジアはバージルという巨大マンションにやって来た。メイド募集に応募して来たのだが、実はイザベルという女性になり代わって来たのだ。エイジアは、このマンションでメイドとして雇われたマリアが行方不明になっていると聞いて助けに来たのである。出迎えたのはリリーという女性だった。中に入ると、玄関は厳重な鍵でロックされる。不審に思うエイジアだったが、部屋に通されたエイジアだが、部屋に入る際、リリーの夫だというレイと遭遇する。
エイジアがシャワーを浴びていると、鏡に湯気がかかり、「ゼイ・ウィル・キル・ユー」の文字が浮かび上がるがエイジアは気が付かなかった。深夜、寝ているエイジアに豚鼻の仮面をつけた何者かが迫り、エイジアは目を覚ます。すると部屋のあちこちから仮面の化け物が襲いかかり、エイジアは持っていたナタで反撃し、首を切り落とし、足首を切る。そこへ現れたのはリリー達だった。
実はこのマンションは悪魔崇拝者達のアジトで、階上に悪魔を祀り、新しいメイドを生贄にして生きていた。悪魔の神殿に名を書かれた人たちは家族となり、永遠の命を保証されていたが、生贄が必要だった。さっきエイジアが殺した人物達も生き返ってエイジアに襲いかかってくる。そして、とうとうマリアを発見、一緒に逃げようとするが、マリアもまたここの家族になっていた。そんな二人に助力したのがレイだった。レイは、エイジアの洗面所に、警告を書いたのだがエイジアは気が付かなかったのだ。
三人はリリー達から必死で逃げ、軒下の空間を縦横無尽に逃げて、エレベーターホールから階上の悪魔の神殿に辿り着く。そこには豚の頭があり、その頭に悪魔が乗り移って来た。頭には家族になり永遠の命を手にする人物の名が書かれていた。そこで、リリーは生き残るために悪魔の指示通りレイを殺す。マリアにも悪魔は、エイジアを殺すように指示するが、マリアは、豚の頭にエイジアの名を書いて自ら命を断つ。不死身になったエイジアは、自分の名が書かれた豚の皮を切り取り、それを持ったまま、リリー達と大バトルを始める。
そして、最後に豚の頭に火をつけて、名前を消去し、リリー達が二度と生き返らないようにして倒してしまう。エイジアはマリアの遺体を抱いてマンションを出ると、タクシーの男が待っていた。そこに乗り、エイジアが握っていた豚の皮膚を開くとそこにマリアの名があった。エイジアは切り取った後、自分の名をマリアに書き換えたのだ。しばらくしてマリアは息を吹き返し、三人は何処かへ去って映画は終わる。
とにかく、いきなりのクライマックスから、殺戮シーンの連続と、狭い空間を多用した追跡劇が面白く、死んだリリー達の仲間の頭が再生してきたり、手足が生えて来たりとある意味コミカルな展開も楽しい。小難しいホラー演出はないものの、こういう作りのホラーもありだなと思える作品でした。
「ひつじ探偵団」
原作がしっかりしているのだろう。前半のコミカルな展開と巧みな人物?羊描写にほのぼの楽しんでいると後半から終盤にかけて一気に本格的な推理ドラマに変化していく。しかも、しっかり伏線が張られているという凝りように拍手、そしてラストのさりげなく胸が熱くなるエンディングも良かった。CG全盛の今だからこそできる一本だったかもしれません。監督はカイル・バルダ。
のどかな田舎町で、愛する羊達に名前をつけてトレーラーハウスで暮らすジョージの姿から映画は幕を開ける。羊達それぞれの個性を描写した後、ジョージがいつも羊達の前で読み聞かせる推理小説に羊たちが集まってくる日々が描かれる。近くで羊を飼っているケイレブや、肉屋の男、さらにホテルを経営しているが密かにジョージに気がある女性などをさりげなく登場。この街で文化イベントが行われるということで一人の青年エリオットが取材にやってくる。
実は羊達は人間の言葉がわかり、ジョージの語る小説が好きで、いつも犯人当てをしながら楽しんでいた。そんなある日、ジョージが亡くなってしまう。手に青と緑の染みがついていたが、いつもジョージが扱う薬と草の色だろうと推測された。街の巡査はテリー一人しか居ず、しかも全く頼りないままに、ジョージは心臓麻痺だろうと勝手に結論してしまうが、推理好きの羊達は殺人事件だと思い始める。
この街に、ジョージの娘レベッカと弁護士が、ジョージの遺言の開帳のためにやってくる。ジョージの遺産は3000万ドルと高額なこともあり、さらにイチイの毒で死んだらしいというのがわかり、誰も彼もが怪しくなって、頭がいい羊のリリーと抜群の記憶力のモップルは、犯人探しを始める。そこに、冬生まれで、他の羊達から阻害されている子羊や、一匹狼のセバスチャンなども絡んで、お話はファンタジックに、コミカルに、そしてミステリアスに展開していく様がいい。
羊達はストレスに弱いために、都合の悪いことは三秒で忘れる習慣を身につけていた。この習慣もお話にスパイスになって面白い。牧場から出ないと推理もできないと、セバスチャンがリードするが、道路を渡るのも躊躇してしまうリリーとモップルの姿が微笑ましい。遺言書開帳の場にやって来たリリー達は窓からその様子を覗く。セバスチャンはサーカスで犬と戦わされていた経験のある羊で、人間の汚れた部分も知っていたが、優しいジョージしか知らないリリー達は人間の汚れた部分は全く無知だった。
冬生まれの羊は、ジョージが死んだ夜にジョージの幻を見たと言い、窓から覗いていたモップルは、つい虹色に染まった枕カバーをかぶって暴走してしまったりするが。これら全てが伏線だと終盤で明らかになる。リリーは、ジョージに読み聞かせられた推理小説をテリーに届けて、推理の糸口を見つけてもらおうとするが、結局レベッカが逮捕されて留置所に入れられてしまう。リリー達は、ジョージの手がなぜ染まっていたのかを推理し、ついにその謎を発見、犯人が見えて来たので、冬生まれの子羊にレベッカの留置所に侵入させ、床に青い薬品の落書きと犯人を示す絵を描く。
翌朝はレベッカが検察庁へ送られる日だった。留置所の床の落書きに気づいたテリー巡査は、ついに犯人に辿り着く。それはエリオットだった。彼はジョージの息子だった。彼は父の遺産目当てで殺そうとしたが、自分が犯人になったら相続できないので、娘のレベッカを犯人にし、結果、自然と自分に遺産が入るように計画したのだった。真相がバレてエリオットは逃亡を図るも捕まり、逮捕されてしまう。
リリーという名は、実はジョージの亡き妻の名前だった。リリーは、冬生まれの子羊にジョージと名付けてやる。レベッカは、遺産を相続し、食肉として羊を飼っているケイレブの羊を全て買取り、ジョージの牧場で平和に暮らせるようにして映画は終わる。
少々謎解き部分は雑な気がしないでもないけれど、羊が推理をするくだりのほのぼのした空気感と、映像ならではの絵作りがとにかく楽しい。もうちょっとミステリー部分を鮮やかに演出できていたらもっといい映画になった気がするけれど、これはこれで十分楽しめる映画でした。

