「君のクイズ」
原作の面白さはちゃんと出ているので、決して退屈もしないのですが、映画の面白さが出ていなくて、淡々と物語が進むだけの仕上がりになっているのが非常に勿体無い。脇役のムロツヨシやユースケ・サンタマリアなどが全く生かされておらず、主人公二人のドラマを描いていくだけで、今一つ映像の面白さを感じられなかった。監督は吉野耕平。
学生時代の三島玲央が、体育館で行っているクイズ研究会らしき場面でクイズに目覚めるところから映画は幕を開ける。ここがまず非常に弱い。続いて、Q1グランプリというクイズ番組、すでにクイズプレーヤーとして人気になっている三島が、魔法を使うと言われる天才クイズプレーヤー本庄絆と最後の決勝戦で対峙している場面となる。二人の今の立ち位置のカリスマ性も一切描写なくここも薄い。
三島は優勢だったが本庄が追い上げて同点となり、最後の一問を正解した方が優勝という流れで、最後の問題が読まれようとしていたが、読まれる前に本庄が回答ボタンを押し、正解してしまう。当然、ヤラセではないかという疑問が湧き、三島は困惑、本庄はその日以来姿をくらましてしまう。
このクイズ番組をプロデュースしている坂田は、決勝戦の謎解きをする生番組を企画、三島や、名だたるクイズプレーヤーをよぶ。そこに、雑誌記者の片桐らもやってくる。三島他クイズプレーヤーらは、クイズを解くにあたってのキーワードや過程を説明しながら、いかにして早く回答を引き出す術を説明していくが、一言も問題が読まれない中で回答できた理由は一向に見当たらなかった。
番組が進む中、本庄の弟という人物が現れ、番組で、兄は決して八百長などする人間ではないと証言する。流れの中で、坂田の姿が映されるが今一つ迫力ある演出がなされない。弟が番組出演後、片桐は独自にインタビューする。さらに番組が進む中、本庄本人がオンラインで番組に登場し、三島に、番組終了までに謎解きをするように迫る。
視聴率が上がっていく中、三島は一旦は、帰ろうとするが坂田に説得され、再度番組に戻り、過去のQ1グランプリの問題や、本庄が出た様々なクイズ番組の情報を集め始める。そこへ、片桐が、本庄は山形に住んでいた事があり、学生時代にいじめに遭っていた過去がある事を暴露する。三島は、全て坂田の手の内で踊らされていたのではないかと推理、しかし、本庄がそれを見抜いたとしても、なぜ問題文を読む前に回答したのかはわからなかった。
多方面の情報を総合的に判断した三島は、ついに本庄がなぜ回答できたかを知る。過去に出たクイズ番組で、解答の後、三島や本庄がその回答で動揺し泣き崩れて、カットされた映像の時の問題であると見抜いた。しかし、生番組終了時、三島は、本庄は魔法で回答したのだと嘘を説明してステージを降りる。最後にオンラインに登場した本庄の姿から、スタジオ内にいると判断した三島は、番組終了後本庄と対峙する。
三島は、本庄がかつて出た番組で、山形のクリーニング店のことを回答した際、学生時代にいじめにあった辛い過去を思い出して泣き崩れたのを、再度決勝戦で再現しようと坂田が問題を選んだと判断して、問題を読む前に回答したのだろうと説明したが、実は本庄は泣き崩れたのではなく笑いが止まらなかったのだと告白する。三島もまた過去に、恋人と別れた際の辛い思い出で動揺した場面をカットされた経験があったためだった。ここの展開も実に弱くて、胸に迫る何者かがない。
本庄はクイズプレーヤーをやめるといい、三島にエールを送って去っていく。三島は帰り際、坂田に、新しいQ1グランプリを立ち上げるからレギュラーで出て欲しいとやってくるが断る。それぞれのゲームプレーヤーがそれぞれの生活をし、三島は別れた恋人のところに戻る。三島を見た恋人が何かを話そうとする唇のアップで映画は終わる。
三島の過去、本庄の過去、そして、番組を盛り上げようと画策する坂田のしたたかさ、さらに、片桐らの存在感、どれもこれも厚みがなく、さらりと流していくので、映画が全く盛り上がってこないし、登場人物の心の中の生きた姿が見えない。ただストーリーだけを上滑りに描いただけの仕上がりの映画だった。
